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「キサマら、ワシのオヤジ殺したじゃろ?」
隷属の首輪のショックで、頭が真っ白なわたくしの耳元で、黒いドレスの美少女はそうささやくのでした。
ふぁーーー?これはめっちゃ怒ってる?
可憐なお声は、怒気をはらんでいるようには聞こえませんが、ふつう、自分のお父上を殺されたら、尋常な心持ちで入られませんよね。
主人公!!!!!!!お前が!!!!!!!!!お前が!!!!!!!
お前が犯人!!!!!!!!!
この事件は、全部、お前が!!!!犯人だから!!!!!!!!
(わたくしじゃないのにいいいいい!!!!)
「おかげでなー、ワシ暗黒竜の襲名が二百年くらい早まってしまったうえに、この暗黒竜の巣も、まともな引き継ぎもなくてなー、困っておるのじゃ」
しかも困ってる!!!!主人公のせいで!!!ラスボスが困ってる!!!!
(いや、こうなるとゲームのラスボスとは違うから、ラスボスじゃないのかしら?)
「あー、そう怯えるな。竜は親子の情などない。弱いやつが死ぬのは世の常じゃ」
おおおおお、セーフ、セーーーーーーフ。お父上が殺されたことは、暗黒竜的には問題ない!良かった!!!!
「まぁ、でもオヤジを殺された者としてはこれくらいはしても許されるじゃ……ろ!!!!!」
と相変わらず耳元でささやく少女の声は最後は甘ったるいような口調にまで溶けていきましたが、最後はいきおいがありました。
「ろ!!!!!」と同時に少女の手がわたくしの頭を上から押さえつけ床に叩きつけて、床(ぎりぎり絨毯でセーフ)を使ってグリグリしてきたのです。
「あー、悲しいなぁ。オヤジがキサマラに殺されてかなしいな〜かなしいな〜♡」
(痛い!!!これちょっと痛すぎます!!!!頭蓋がぎりぎり鳴ってますわよ!!!!この暗黒竜パワーありすぎ!!!!ラスボス!!!ラスボスの地面ぐりぐり攻撃ですわ!これ!!!!)
わたくしも転生者ですから、そりゃ当たり前に小さなときからチートレベルに鍛えておりました。死亡フラグを回避するために万全の準備をしてきたのですもの。
それなのにこの暗黒竜からの地面ぐりぐり攻撃は痛いなんてもんじゃないです。
「と、まぁ、隷属の首輪の効果で、これくらいならワシが戯れても、キサマ死なんじゃろ?装備してない人間なら死んでおる。よいじゃろ?隷属の首輪」
いやいやいやいやいや、なんだこのドS少女。こっちがチートレベルで鍛えて物理防御障壁をパッシブで発動してなかったら、絶対頭潰れてますよ。これ。まじで。
「お、お戯れを……」
わたくし激痛の中、令嬢の矜持を守るために、なんとかおやめくださるようお願いしましたわ。
「ウム、まぁ、とくに意味はない。ワシのちょっとした茶目っ気じゃ」
なんとか地面ぐりぐりをやめてくれた暗黒竜。
ほんとやめてください、そんな茶目っ気。
あ、痛くて涙出てる。
オートヒールをパッシブでかけてますけど、ぐりぐり中はまったく回復しませんでしたわ。そして半分くらいHP持ってかれましたわ。
(この馬鹿力ドラゴンなんてことしてくれますの!!!死にますよ!いくら転生者でチートステータスまで上げたと言っても死にますよ!!!!戯れで死亡フラグ立てるのやめて!!!)
「さて、本題に入るぞ」
頭を鷲掴みしたまま、わたくしを地面から自分の目の前まで持ち上げて、この暗黒竜はそう言ったのでした。
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