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5.お茶会と夜会。噂

 別宅に移ってから一ヶ月後、漸く旦那様のお渡りがありました。

 閨での旦那様はとても酷く、私は痛くて堪りませんでした。

 旦那様が、相手に暴力を揮って快感を得るような特殊な趣味の方だったとは、憂鬱です。

 ですが、後継ぎを産むまでは、我慢しなければなりません。

 旦那様の趣味がああいうものだと言う事は、ミアも、暴力を振るわれて快感を得る特殊な趣味なのでしょう。


 と言う様な事を、ラッセル伯爵家邸での二度目のお茶会でお話ししました。

 皆様の様な淑女でも、殿方の耳目(じもく)が無い所では、あられもない話をなさる事もあるのだとか。色々聞かせて頂きました。

「まあ。クリスプ伯爵にそのような趣味が……」

「ご存じ? そのような趣味の方の交わりには、子が出来ないものがあるそうですのよ」

「まあ。では、ミアに子が無いのは、その所為なのでしょうか?」

「そうかも知れませんわね」

 一体、どのような交わりなのでしょう? それを止めても、もう子は出来ないのでしょうか?


 その後のお話で、前回のお茶会で聞いたミアの噂は更に拡大し、市井にも広まっていると知りました。

 それだけではなく、旦那様も気が触れていると言う事になっていると。

 市井には、以前、ミアが複数の男性と付き合っていると言う噂も流れていたらしく、今回の噂と合わせて、『彼等が離れて行ったのは、ミアの気が触れたからだ』と言う事になったとか。

 市井にまで、ミアが複数名と付き合っていると言う噂が流れていたのでしたら、旦那様の耳にも入っていたかもしれませんわね。

 それでも別れなかったのですから、ミアは浮気していなかったのでしょう。


「そう言えば、そろそろ陛下主催の夜会がありますわね。ソフィア様はどのようなドレスを?」

「用意しておりませんわ。旦那様はミアを連れて行くでしょうから」

「……幾らなんでも、そんな事をしたら陛下のご不興を買ってしまいますわ。そこまで愚かでは無いでしょう」

「そうでしょうか?」

 私は首を傾げます。

「この度の夜会は、下級貴族は連れて入れませんわ」

「存じております。ですが、お二人は、『下級貴族は、貴族と結婚出来ないだけで対等』と思っている様な気がするのです」

「……確かに、その様に見えますわね」

「ですが、念の為に用意しておいた方が宜しいと思いますわ。あらゆる場面で非常識とは限りませんもの」

「それもそうですわね。決め付けるのは良くないのでしたわ。お父様にお願いしましょう」

 私の言葉に、エマ様達が顔を見合わせました。

「何故、ご実家に? 妻のドレスやアクセサリーを購入するのは、夫の甲斐性ですわ」

「恥ずかしながら、旦那様は吝嗇家であるらしく、私の為にはお金を使ってくださいませんの」

「まあ」

「それは、もしかして……。クリスプ伯爵家は、家令を手放したと聞いておりますわ」

「ええ。ミアを正妻扱いしないなら出て行けと」

 皆様、何やら、頷き合っております。

 以前懸念したように、家令を手放したから落ち目だと思われたのでしょうか?

 旦那様は私にはお金を使ってくれませんが、ミアの為には散財しているそうです。

 贅沢させられるほどお金があるのならば、落ち目では無いのでしょう。否定するべきでしょうか?

 ですが、私は、クリスプ伯爵家の財産の管理をしている訳ではないので、本当に落ち目では無いのかどうか存じませんし……。

 結局、悩んでいる間に話題が変わってしまって、否定する機会を逃したのでした。




 さて、夜会当日。

 私は旦那様に連れられて、王城を訪れました。

 当初は、私を病で臥せっているとして、ミアを代理として連れて来るつもりだったそうです。

 ラッセル伯爵に釘を刺されたので、渋々止めたのだとか。

 道中、延々と愚痴を聞かされました。

 旦那様は、饒舌な方だったのですね。


 会場に入りますと、旦那様はさっさと私から離れ、恐らくご友人でしょう方の所へ行きました。

 流石に、王家の皆様がご入場されます頃には戻って参りましたが。


「久し振りですね。ソフィア」

「はい。王妃様。この度は……」

「ああ。良いのよ」

 夜会の最中、王妃様に呼ばれた私は御側に参りました。

 そして、借り物の件を謝ろうとした私の事を王妃様が止めました。

 『サムシングフォー』の「何か借りたもの(サムシングボロード)」は、王妃様のイヤリングだったのです。

 何故、王妃様が貸してくださったのかと言いますと、今は亡き母の義理の姉妹だからです。私からみれば、血の繋がりのない伯母でしょうか?

 本来は、この場でお返しする予定だったのですが……。

「謝罪は、時期を見てクリスプ伯爵から頂くわ」

「ですが……」

「それより、此方からも謝らないといけないわ。あのような男との結婚を許可してしまって……」

「そんな。恐縮ですわ」

 この国では、貴族の結婚には陛下の許可が要るのです。

「私は、王妃様のイヤリングの件以外、旦那様やミアの事を気にしておりませんので……」

 実は、閨の事も気にしているのですけれど、流石にこの場では口に出せませんものね。

「そうは言うけれどね。貴女が気付いていないだけで気にしているって事も、あるかもしれないじゃない?」

 そうなのでしょうか? 私は、心の奥底であの二人の言動に傷付き、怒りや憎しみを抱いているのでしょうか?


 夜会の最中、お父様は大勢の方とお話しされていました。

 ですが、旦那様の周りは閑散としておりました。

 数人話していらしたのは、ご友人ばかりでした。彼等が旦那様のご友人である事は、ラッセル伯爵夫妻が教えてくださいました。

 皆様、旦那様の私の扱いの噂・落ち目の噂・気が触れているとの噂で、敬遠なさっているのだそうです。

 つまり、それ等の噂があってもお付き合いをしたいほどには、メリットが無いのですね。

 私にはどうしようもありませんので、旦那様が頑張るしかありません。

 ですが、旦那様が、皆様に話しかけに行く事はありませんでした。

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