旦那さまに
一歩踏む
あのときついたちいさな傷
一歩踏む
あのときこぼした涙の跡
一歩踏む
あのとき噛んだ下唇
踏んで固めて大きなしこり
怒り悲しみ憤り
つもり積もって雪のよう
しこりをさらに大きくしていく
時々喜びがしこりを溶かすけど
すぐに冷えて固まって
しこりは重く固くなっていく
今ではもう溶けもしない
しこりは弛まない
許さない
きっとあのときあなたが謝罪をしていれば
こんな固く頑なにならなかったのに
今しこりに気がついても
もう遅い
しこりはあなたを潰すだろう
受け止めて私のしこり
悲しい記憶
怒りの記憶
憤りの記憶
あなたがつけた
しこりを残し
私は去る
記憶を踏んで