第6話 桶狭間の戦い!天海は勝利のために祈る!
そして、運命の1560年。
今川義元が尾張に侵攻してくることを知っていたのは、この時、天海1人だけだったが、あえて教えないことにしていた。
いや、そんなことを、予言だとかいって、言ったところで、信じてなどもらえるわけがない、と思っていたからだ。
「はっはっは!何言ってんだ。そんなことあるわけないよ。」
と言われるのが、オチだった。
だが、その時はやってきた。
今川義元率いる、約4万人の大軍が、尾張に侵攻してきたのだ。
今川義元軍 約4万人
対する織田軍 約2千人
約20倍の戦力の差。どう考えても、織田軍が今川軍に勝てるはずはないと、この時の、おおかたの見解だった。
天海はこの時、24歳になっていた。
そしてなぜか、前田犬千代と、木下藤吉郎と、天海と、3人だけで、1つの部屋にいた。
佐久間信盛、柴田勝家といった重臣たちは、連日対策会議を繰り返し、
そして信長は、城中にてどんちゃん騒ぎをしているとの、前田犬千代からの、報告があった。
「何を言う、それは今川方をあざむき、油断させるための作戦じゃ。」
木下藤吉郎が言った。
「して、そなたは、御屋形様より、何を頼まれたのじゃ?」
前田犬千代が天海に尋ねた。
「えーと、私めは、信長様より、必勝祈願をするようにと、頼まれもうした。」
「必勝祈願じゃと!?」
天海のその言葉を聞き、前田犬千代も、そして木下藤吉郎も、驚きをかくせない。
しかし、それは無理もなかった。なにしろ天海は坊さんなのだから。
武器を持って戦えば、それこそ僧兵と同じになるのだが、それはできない。坊さんの世界の、本来の決まりごとなのだからと、天海は言う。
坊さんなら、坊さんらしく、ここは仏に祈りを捧げるほかない。
「とにもかくにも、今さら他にどんな手だてがある!?
なあ、犬千代、他にどんな手だてがあるというのじゃ!?
お主なら、その手だてを、思い付くというのか?」
「それは…。この犬千代にもわからぬ。」
「それならば、我らは信長様の勝利を信じ、共に祈りを捧げるのみ!」
天海は大勢の僧たちとともに、織田家がこの戦いに勝利するよう、祈祷を行うことになった。
連日のように怪しげなお経のような、呪文のような、僧たちの祈祷の声が、響き渡る。
そして、今川義元の軍勢は、田楽狭間、つまり、桶狭間というところで、休養をとっているという情報を入手した。
桶狭間は、またの名を、田楽狭間とも、いったのだ。
その田楽狭間、桶狭間で、今川義元率いる、手勢の者たちは、酒盛りをして、くつろいでいたという。