第5話 尾張統一!小坊主天海は立派な青年の天海へと成長する
信長の軍勢は清洲城を包囲。すでに城内に攻め込んでいた。
「かかれー!」
信友の軍勢は少なく、また、すぐれた兵もいなかった。
「いけーっ!なんとしてでも、おとすのだー!」
信長はあっという間に、信友を追い詰めた。そして自ら、信友を討ち取るべく、城内へ。
「信友おじ。もはやこれまでのようだな。」
「くっ…!」
ところがそこに、天海が入り込んでしまう。
「天海!お主、何をしておるのだ!」
そして、これ見よがしに、信友は天海を、人質にとり、そして天海の首筋に刀を突きつける。
「ぬはははは!これは格好の人質じゃ!」
信長もうかつには近づけない様子。
「天海…、お主はなんたることを…。」
「動くな!近づくな!この小坊主の命が惜しければ、刀を捨てろ!」
信長は信友に言われるまま、刀を床に置く。
なんてことだ…。こんなところで、人質にとられるとは…。
うかつだった…。
自分はこの先、108歳まで生きて、東照大権現を奉る(たてまつる)、
日光東照宮を建立するなど、徳川幕府の黎明期の、基礎を築き上げるようなことを、やらねばならないのに…。
もしここで死んでしまったら、天海大僧正の名は、永遠に歴史の表舞台には、出てこなくなってしまう…。
それとも、金地院崇伝が、かわりにやってくれるのか…?
いや、ある意味、天海大僧正のかわりなど、他の誰にも、つとまらなかった、同じようには、できなかった、誰にも…。
そんなことを考えているうちに、1つのひらめきが生まれた。
「なんちゃらー、かんちゃらー!」
「ん?何だ?その変な呪文は…、うおっ!」
それは、目くらましの呪文だった。
信友が目がくらんで、ひるんでいるそのすきに、
天海はまんまと逃げ出してしまうのだった。
「やった!これで108歳まで生きられる!」
その次の瞬間、信長の手勢の、弓隊が、弓矢をひく。
ヒュッ!ヒュッ!
ズドッ!ズドッ!
「うわあーっ!」
弓矢を受け、信友はそのまま、討ち死にする。
今回のところは助かったが、あとで信長様に怒られる…。
と思ったら、信長様に、怒られることもなかったばかりか、褒美に茶のナツメというものを、1個もらった。
「褒美じゃ。受けとれ。」
信長は天海の前に、その褒美の茶のナツメを放り投げるが、天海はそれを見事にナイスキャッチした。
こうして信長は、清洲城を手に入れた。本家である信友を滅ぼし、
1557年には、弟の信行を殺害。弟の信行もまた、兄信長を殺害し、織田家の家督をわがものにしようと、画策していた。
1559年までには、信安や、信賢などの一族にことごとく打ち勝ち、信長は尾張を統一した。
一方で、信長には新たな部下も仕えるようになった。
それが、木下藤吉郎、幼少期は、日吉と名乗っていた。
「信長様。それがしは、木下藤吉郎にございます。」
日吉から、木下藤吉郎となり、さらにその後には、羽柴秀吉、そして豊臣秀吉と名乗ることになる、
この頃の時期は、木下藤吉郎と、名乗っていた。
さらには、前田犬千代。後の加賀百万石の祖となる、前田利家だ。
さらに、山内一豊なども、この頃から仕えていたという。
父信秀の代からの部下だけでなく、新たな部下も加わり、いよいよ、迫る桶狭間の戦いに向けて、臨戦体勢。
しかし、ここから108歳まで、生き抜くのは大変だ…。
なにしろ、討ち死になどできないばかりか、病気にも、なれないのだから。
現代のように医療も発達していなかっただろうから、病気になるということは、まさに生き死にに関わるということなのだ…。




