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第2話 今川義元と小坊主天海

時は3代将軍、家光の時代になっていた。その3代将軍家光の代まで、徳川家に仕えていた怪僧こそが、天海大僧正だったのだ。

「なあ、天海よ。そのほうの思い出話でも、聞かせてくれないか。」

3代将軍家光は暇な時になると、天海大僧正の若き日の思い出話を聞かせてくれという。もちろん、家光が生まれるよりも、ずっとずっと前の時代、また、自らが尊敬する祖父である家康の若き日の話も、聞くことができるからだ。

「わかりもうした。それでは上様(うえさま)にお聞かせいたしましょう。

まずは、それがしが、今川義元様に、初めて会った日のことを…。」


今川義元といえば、家光の祖父、家康が、幼少の頃、まだ竹千代と名乗っていた頃に、人質として過ごしていたという経緯があった。

その後、松平元康と名乗り、今川義元の家来となっていたという、その今川義元に、天海が初めて会った日のこと…。


それは、1542年、その年は、ちょうど家康が岡崎城にて生まれた年とされている。

これに関しては、諸説ありなのだが、その年に、天海大僧正、いやその当時は、小坊主天海(こぼうずてんかい)という名だった。


小坊主天海(こぼうずてんかい)は、寺の僧たちとともに、今川義元に謁見することに。


駿河(するが)遠江(とおとうみ)を治める、東海一の弓取りと称されるお方だぞ。

くれぐれも、そそうのないようにな。」


他の僧たちが、小坊主天海にクギをさす。

しかし、当時この小坊主天海は、まるで幼少期の一休宗純(いっきゅう・そうじゅん)彷彿(ほうふつ)とさせるほどの、とんち坊主として、ちょっとした有名人になっていたのだった。

そこに、今川義元が現れる。

「くるしゅうない。おもてをあげよ。」

一同おもてをあげる。すると、今川義元はすぐさま、小坊主天海の方に、目線をやった。

「その坊主、名はなんと申すのじゃ?」

「ははっ!小坊主天海と申します。」

そこで義元は、小坊主天海に、とんちをやってみせよと命じた。

小坊主天海はその要求にこたえるかのように、思い付く限りのとんちを、やってのける。

するとそれが、大ウケしたのだった。

「はっはっは!実におもしろい!」

これが小坊主天海、のちの天海大僧正と、今川義元との、初めての対面だった。

しかし成人になってからは、会う機会もなくなり、今川義元は桶狭間の戦いで、織田信長の軍勢に討ち取られてしまうのである。

しかしその当時は、まさかあの尾張のうつけが、天下人(てんかびと)を目指すなど、誰一人として、考えてもいなかったという。

そして小坊主天海は、寺に戻るなり、

「なあ、なぜ、この国の大名たちは、領地をめぐって、争っておるのじゃ?」

と、聞いてみた。すると、返ってきた答えは、

「今、この国の都である、京の都には、室町幕府があり、足利将軍がいる。

しかしな、その昔起きた、応仁の乱という戦により、室町幕府も、足利将軍も、もはや力を失ってしまったのだ。」

「その、応仁の乱という戦が、きっかけなのか…?」

「それ以来、全国の戦国大名たちは、好き勝手に、領地の奪い合いのための戦をしておる。

その中でも、有力な大名は、全国を統一し、天下をとることを考えているという。

その中でも、駿河、遠江を治める今川義元や、美濃の斉藤道三、甲斐の武田、越後の上杉、越前の朝倉や近江の浅井、といったところが、天下をとることを狙っておる。」

「へえー。それじゃ、尾張の織田は?」

「尾張の織田?あのうつけめのところか。

あのうつけの信長が尾張の当主になったら、はてさて、どうなることやら。

お主も、本日お目にかかった、今川義元様を見たであろう。」

「……。あれが、今川義元様か…。あのお方が…。」

「さよう、あの今川義元様こそ、天下をとるお方の中でも、第一候補といっていい。

あのお方の腕前をもってすれば、尾張のうつけなど、ひとひねりじゃ。」

これが、当時の人々の、共通認識といってもいい答えだった。

もしかしたら、本当に、今川義元にひとひねりにされてしまっていたら、その後の歴史は、全く違ったものになっていたかもしれないと…。

そう思った次第。いや本当に、展開次第ではそういう歴史もあったかもよ、と、小坊主天海は、その当時、そう思っていた…。



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