第14話 天海、京の都へ…!
天海は京都寺社奉行所の見回りと称して、京の都の散策へと向かう。
そしてよく見ると、あちらこちらで、建物の建築作業が行われている様子だった。
「ごらんください。信長様が京の都にいらしてから、町はみるみるうちに生き返っております。」
しかしまさか、いくら京都寺社奉行所の見回りとはいえ、寺社奉行である天海自ら、見回りに来ているなんて、誰も思っていないだろうな…。
と思っていたら、なんとその建築作業の現場に、信長の姿があった。
自ら陣頭指揮をとるとは…。
そう思った次の瞬間、衝撃の光景を目にするのだった。
建築現場で作業をしていた下男の1人が、近くにいた女に、乱暴狼藉をはたらこうとしていた。
「いやっ!やめてください!」
「へっへっへ、いいじゃねえか。」
下男は執拗に女に近寄る。すると、その様子を見ていた信長が、刀を抜き、勢いよくその下男と女のところへ走っていく。
そして、その次の瞬間!
「てええい!」
ザシュッ!!
信長は刀を振るい、その乱暴狼藉をはたらいていた下男の首を、一刀両断、斬り落としたのだった。
「キャアアアアアアーーッ!!」
女もその光景を目の当たりにし、悲鳴をあげた。
周囲の者たちも、そして天海も、この光景を見た瞬間から、恐怖を感じていた。
「ひいいっ…。」
信長は刀を鞘におさめ、そして言い放つ。
「今後、このような乱暴狼藉をはたらいた者は、この者と同じ目にあうと、さよう心せよ!」
それだけ言うと、信長は現場を立ち去っていった。
まさに、泣かぬなら殺してしまえ、ほととぎすという通りの、信長の性格を垣間見た(かいまみた)瞬間だった。
そしてその後には、信長によって先ほど首をはねられた下男の、首を斬り落とされた胴体が、転がっていた…。
「信長様…。恐ろしや…。」
「信長様に逆らえば命がいくつあっても足りぬ…。」
そして天海は、その時の光景が頭に焼きついて離れなくなってしまった。
そしてその夜は、悪夢にうなされた。
どこかの高い建物から飛び降りて地面に激突する夢、かと思えば、前方から乗り物のような、あれはトラックというらしい、そのトラックにはねられて自分が死んでしまう夢…。そこで目が覚める。
「はっ…!夢か…!」
もしかしてこれは、忘れ去ったはずの、前世の記憶なのか…。
いったんは目が覚めて起きてしまったが、さすがに眠い…。
そのままバタンキュウとなり、気がつけば早朝になっていた。
そして朝起きて、あいさつをすると、そのあいさつをした相手が、
「おはようございます。天海様。なにやら昨晩はひどくうなされていたご様子でしたが…。」
「ああ…。何でもないよ…。」
とりあえずその場はやりすごした。
そして、町の建設も順調に進む中、
「信長様のおかげで、町が生き返っていくみたいだ。」
「だけどな…。なんだか信長様が将軍様みたいな感じだな…。」
「いやいや、信長様は、将軍様どころか、この国の帝になられるお方だよ。」
「帝だって!?いくらなんでも、帝になんかなるか!?」
そんな中、将軍義昭は、あらためて時の正親町天皇に、信長に副将軍の役職を授けたいと、直々に頼みに行ったのだった。ところが…。