第12話 天海、ついに武器を手にとり、僧兵となる!
天海は本来、戦いを好まず、平和を願う僧侶。
大僧正というのは、その僧侶の最高位。
しかし、この戦乱の世、僧侶も武器を手に取らなければ、いつ殺されるかもわからない。
比叡山延暦寺の僧兵 たちも、石山本願寺の僧兵たちも、そうやって、武器を手に取り、戦乱の世を生き抜いてきた。
「昨今の僧たちは、僧でありながら、僧としての修行も行わず、酒を飲み、肉を食らい、女を抱き、そして武器を取り、殺生を行う。獣のごときふるまい。」
などと、戦国大名たちは、もっともらしく言うのだが、天海は同じ戦乱の世を生きる僧として、彼らの気持ちも、わからなくはないと、思っていた。
戦国大名たちが勝手気ままに戦に明け暮れている時に、自分たちだけ真面目に修行なんかやっていられるか。
酒を飲み、肉を食らい、女を抱き、自己防衛のために武器を持ち、僧兵として戦う。
だって、そうでもしなければ、まともな精神状態でいられるか。
こんな時代だ。そうでもしなきゃ、やってられるか。
これが、この戦乱の世を生き抜いていく、僧たちの術だった。
そして天海もついに、僧兵として武器を持ってみることにした。
坊主に刀は似合わない、ともいわれるが、いやいや、実際に持ってみると、意外とさまになっているものだ。
そして、僧兵のもう1つのポピュラーな武器は、なぎなただった。
「こっちが刀で、こっちが、なぎなたというのだな。」
天海はなぎなたを振るってみる。
「ふむ。これがなぎなたか。この天海には使いやすい武器かもしれない。」
天海は「坊さん」スキルの他に、新たに「刀」と「なぎなた」のスキルを身につけるべく、日々そちらの修行にも励むことにしたが、待てよ…。
「チート」を使えば、簡単にスキルを上げられるという話も、聞いたことがあるような…。
あとは、南蛮渡来の「魔法」のスキルだ。
ちょっと「忍術」のスキルでも、似たような技が出てくるような…。
ここはあえて、史実無視でいくのも、悪くはないかもしれない。
と、そのようなことを考えているうちに、信長軍は京の都への上洛の道を、どんどんと突き進み、
気がつけば信長軍の兵の数は、桶狭間の戦い、美濃攻め前の時点から比べると、何倍にもふくれ上がっていた。
京の都へ上洛し、天下布武を達成すると聞いたとたんに、その天下布武の野望達成に同調した者たちが、続々と各地から、志願兵として、集まってきたのだった。
その信長軍の気迫の前に、三好、松永の軍勢は、信長軍の追撃に恐れをなして、京の都から逃げ出してしまっていた。
さらには、三好、松永が、14代将軍としてまつり上げていた、義栄は、あっけなく急病死。
これで将軍の跡を継ぐのは、信長軍がまつり上げている、義昭をおいて他にいなくなったのだった。
そして、ついに信長軍は、京の都にたどり着いた。
信長軍に同行していた、天海たちも、ともに京の都にたどり着いた。
「やっほー!ついに京の都にたどり着いたぞ!」
この時の天海はさすがにまだ、大僧正などというだいそれた位ではなく、年の頃は30代そこそこの、ただの坊さんでしかなかったのだが、もうすでに、大物の片鱗を、感じさせていた。
そしてその腰には刀を、右手にはなぎなたを、装備していた。