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遠ざかるもの

 うわーやっちまったな、多分俺が小さい頃壊した土偶はこの子の作った物だったんだろう、しかもさっきから口惜しそうにしてたしそりゃ怒るよな、俺が悪いんだから素直にぶん殴られるか。


 そう一瞬のうちに考えたが何か様子が違う、目の前の彼女が何か小さく口ずさんでいた、そして彼女の手が淡い火のようなものを纏っているように見えた。


 本能的に俺は思い切り仰け反った、そのせいで尻餅をついてしまった。


 !?


 傍から見れば平手打ちを避けようとして体勢を崩したようにも見えただろう、けど彼女の平手打ちはそんなに速いものではなかった、友達同士がやるような軽い感じだった、多分当たっても何の痛みも無いぐらいの威力だったろう、なのに俺は大げさに避けてしまったのだ。


 彼女は驚いているようだった、まさかこんな反応をされるとは思わなかったのだろう、そして内心思っているに違いない、今自分が"ただの"平手打ちをしたんじゃないことを、目の前の男子は少なからず感じ取っていたことに・・・・・・


「あ、危ないなー、そりゃ小さな頃とはいえ勝手に他人のモノ壊したのは悪いとは思うけど、いきなり暴力はないだろ?」


と少し捲くし立て気味に言ってみる。


「悪かったよ、その、なんなら今度きちんとお詫びするよ、本当にごめん、とりあえず今日は遅いからまた今度きちんと話そう、それじゃまたね」


 と言って俺は足早に部屋を後にした、あのまま居たら本当に何をされるか分からなかった、というかどうしてこんなことになった?

 急いで昇降口へ行くと、仁の奴も丁度帰るところだったようだ。


「あれ? 篤まだ学校いたのか? 結局部活見学してたん? この学校結構活気があって良さそうだったぞ」


 他愛も無い会話をしてくる親友、だが今はそんなことよりとっとと帰りたい!


「ああ、先生に頼まれごとされてさ、ちょっと時間かかっちゃったんだよ、今帰るとこか? じゃさっさと帰ろうぜ」


 急かすように俺は言った。


「おう帰ろうー、俺も一人じゃ出づらい雰囲気だったからなー、お前が来てくれて助かったよ」


 ん? どういうことだろう?

 良く分からないが二人して昇降口を出るとそこには、あのお嬢様の取り巻き二人が無言で待機していた、あのお嬢様を待ってたんだろうか、待ってたんだろうなあ。


「な? なんとなく出づらかったんだよ、穂波さんはまあ良いとして、奥呂さん? はなんかおっかないじゃん」


 そうだな、奥呂はSPっぽさをプンプン匂わせてるからな。

 まぁそんなことはいい、はよ帰ろ。


「朝霞君」


 げげぇ、なんだよいったい、奥呂が突然話しかけてきた。


「今朝はあんな態度をとって申し訳ありませんでした、これからはクラスメイトとして、どうか仲良くしてください」


 ふむ、良い心がけじゃ・・・・・・とでも言うと思ったか? そんなもんは明日にしてくれ!


「気にしないでくれ俺も悪かったんだ、明日からはまたよろしくな、それじゃ」


 ややぶっきら棒に言って逃げの体勢に入ったが遅かった・・・・・・


「あ、ひなちゃん!」


 穂波がそういうと、後ろから何やら不穏なオーラを漂わせてやってくる飯坂さん、怖い。


「待たせちゃったわね、二人は部活とか何か決まった?」


 オーラを纏っているように見えるのは俺だけのようだ、というか俺が単に恐怖して見せてる幻なのかもしれん、そうに違いない。


「わたしはぁ、理科研究部にしようと思ってます、おいしいもの食べたいし沢山作れる様になりたいですからねぇ」

「僕は弓道部にしようと思います、精神統一に和の心も学べますしね」


 他愛も無い会話をしているな、っと何立ち聞きしてんだ、帰らねば。


「朝霞君、愛好会の件考えておいてね?」


 ヒッ、なんか釘を刺されたぞ、愛好会の件ってなんだよ! 入会するともなんも言ってないぞ! あれか? 遠まわしにまた来いよってこと? 胃が痛い。

 とりあえずその三人と別れて仁と帰路についた。


「なんだよ、あのお嬢様と一緒に居たのか? しかも愛好会? に勧誘されてるとか、大変そうだなー」


 流石親友、あんなお嬢様に目をかけられるなんて羨ましい! とかいう発想は無くちゃんと分かってくれている、おー心の友よぉ。


「大変なんてもんじゃないよ、心労でぶっ倒れそうだ」

「ははっ、まぁ頑張れとしか言えないな、あの人らは学校でも注目されてるっぽいし、一緒に居たら平凡な日常は送れなさそうだよな」


 肩をポンとされた、泣きたい。

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