ぷち魔王軍初勝利
猪の群れが逃げ去り 残りは巨大な兎のみとなった。
しかし 二歩足で立ち上がり耳を振りながら 余裕の態度を兎は見せている。
「残りは猪の後ろに隠れて居る様な気の弱い兎だぜ
一気に倒そうぜ」セージが兎を見ながら話している。
「・・・」
何か変よ かのんは違和感を感じた。
ローズも何か違和感を感じているようだ。
オーラを体中から集めて魔法の発動の準備をしている。
兎の体中が光りだすと
「火精ヨ焼キ尽クセ グランファイヤー」
兎が魔法を詠唱し
耳の間に大きめの火の玉を出すと セージに向かって放った。
その瞬間かのんはセージを胸に抱きかかえると
横に転がり 火の玉を躱した。
セージが無事なのを確認して
ほっとした様子の かのん
良い匂い かのんってこんな匂いがしたんだ・・・
彼女の胸に顔をうずめているセージは顔を少し赤らめている。
「ありがとう かのん助かったぜ、
詐欺だろ! 動物なのにどうして魔法が使えるんだ?」
「ウッド先生も魔法つかえるじゃないの!
それに二人とも早く体勢立て直して 二回目が来るわよ」
ローズが兎を見ながら話している。
「あれは さぎじゃなくて ウサギだよ」
バジルは呟いた
「・・・グランファイヤー」
兎が二発目の魔法を放った。
かのんがセージを抱きしめて更に横に転がり魔法を躱す
「・・・グランファイヤー」
兎が追撃の三発目の魔法を放つが
火球に横からローズの水球が衝突し水蒸気と共に二つの魔力が消滅した。
かのん とセージが体勢を立て直し兎に剣を構える。
「・・・グランファイヤー」
兎が魔法を詠唱しようとしたが 何も起こらない。
・・・・・・
兎は青ざめ 脱兎のごとく逃げ出した。
「私たちの勝利よ!」かのんが叫んぶと
「やったな かのん」
セージは拳をかのんに突き出すと、かのんもその拳にそっと重ねた。
「危なかったけど 勝ちは勝ちね」
ローズは髪をいじりながらバジルを見て
「バジルも頑張ったよね」
バジルは無邪気にはしゃいでいる。
「やるじゃねえか お前たち」ゆうじが目を細めてかのん達を見ている。
セージはゆうじに近寄ると、その前に拳を突きだした。
「何の意味だ?」ゆうじが尋ねると
「ば~か ゆうじ は族の頭でもそんな事も知らないのかよ?
拳を重ねて 戦友の証だ」セージが毒づいた。
ゆうじも大きな拳をセージの拳に力強く押し当てた。
「よろしくな セージ」
その様子を一同はほほえましく見ている。
曇りがちなお日様が傾きかけて
さわやかな風が麦畑を吹き抜けて行って居る。




