水月
かのんが露天風呂に行くと露天風呂は静まり返って 湯船の水面に月を映し出し、
ただ お湯が流れる音だけがしている。
かのんが服を脱ぐと、胸元に目をやった。
其処には小さな十字の傷痕が残っている。
「傷が残っちゃったな、女の子なのに」
かのんが呟いた。
「そんなに気にすることは無いですよ、
服を着てる時は そこは見えないから」
湯船から声がした。
ローズが静かに湯船に浸かっている。
「でもあの女酷いですよね、
自分の思うようにならないと
力で支配して、それでもダメなら殺してしまえ
なんですからね」
「でも れいなさん、
どうしてあそこまで友情とか愛とか嫌ってるのかな?
ローズ判る?」
かのんが湯船に浸かりながらたずねると
「たぶんだけどね、昔に何かあの女に遭って
友情とか愛とか信じられなくなって
力だけを信じているのだけど、
心の底ではとても飢えてるのだと思う。
だから かのんさんがセージを
体を張って護ったのが許せなかったのかな?
凄く不幸な人だとおもう」
ローズは続けた
「だからと言って
彼女の行為が許される訳じゃないですよ
一歩間違ったら かのんさんもセージも死んで居ましたから」
かのんは水面に浮かぶ月を見て考えた、
自分はゆきなとか今の仲間が居たから今の自分がいる事に
もし 仲間が居ないなら れいなさんの様になっていたのかも・・・。
「もし 私がれいなさんを許して仲間にしたいと言ったら
ローズはどうするの?」
「ここのトップは かのんだから、
私はそれに従いますけど・・・。
かのんさん まさか?」
ローズは驚きを隠しきれてない。
「うん・・・。
彼女はきっと友達居ないからね。
だから私は彼女と友達になりたいの
別の出会い方をしたら きっと親友になれた筈だから」
湯船に写る月を見ながら かのんは答えた。
「不思議な感じだけどね、洞窟の修行終えた後だから判るんだ。
私にも彼女のような酷い かのんが居るし、
きっとれいなさんの中にも、優しい れいなさんが居るはずよ。
だから今はきっと優しい れいなさんはお休みしているだけだと思うのよ」
「そうね・・・」
ローズは静かに月を見ている。
「それは凄く難しい選択よ、彼女を殺すよりも遥かにね」
「でも 私はやってみたいの、
ローズには甘いと言われそうだけどね」
「もし、かのんさんとあの女の二人の命を天秤に掛ける時が来たら、
私は迷わず かのんさんを選ぶと言って置きますね。」
何の事か判らないかのん
夜風が静かに吹き抜けて、水面を揺らし水月をかき消していった。
夜空には月は静かに輝いている。




