魔王逃走
かのんは どれだけ走ったか判らないくらい走り
気が付いたら ステラの家の前に戻っていた。
ドアを開け、ステラが呼びかける間もなく
自分の部屋に戻った
「もう イヤ 元の世界に戻りたい・・・」
そう呟くと、この世界に来た時に来ていた服に着替え
ドアから飛び出して行った。
ステラが怒鳴る声が遠くで聞こえたたような気がした。
「暗い夜道を馬車で来た方向と逆に走れば あの草原に戻れる・・・
あの草原に戻れば きっと元の世界に戻れる・・・」
かのんは家から月夜の暗い夜道を
全力で大通りに向かって走り出した。
「あの草原に行くのか?
行くならセージの畑を抜けていけば近道だぜ」
かのんが振り向くと ゆうじが道端でタバコを吸っている。
「言っとくが あの草原に戻っても元の世界に戻れないぞ
何度も俺がやってみたが ダメだった。」
ゆうじが続けた。
「あなたには関係の無い話でしょ?」
かのんが心の内を見透かされたのを不機嫌そうに答えた。
「修行とか辛くて逃げ出したか?
自堕落なこっちの世界に来るのは止めないぜ
俺には止める資格が無いからな。
だがな、
今 ここで逃げ出したら、妥協だらけで
魂が折れて二度と起き上がれなるぜ、
俺みたいにな。」
「俺のような大人になりたくないだろ?」
いつの間にかゆうじが背中を向けて喋っている。
しばらく かのんは俯き
「行ってくるよ、もう逃げない。」
かのんは洞窟の方に向かって駆け出した。




