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今日から魔王始めました  作者: くろねこ
2章 秘薬エリクシール
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オーバーエンチャット

れいなの説明は続いていた。

月明かりを背にして、漆黒の翼を纏った女神は静かに口を開く。


 「見なさいかのん。これはオーバーエンチャットと言う技術よ」

 「オーバー……?」


 何の事か判らないかのんはそこまで言うと首を傾げる。


 「――オーバーエンチャットよ……」

 

 何の事か皆目見当のつかないかのんの為に、ため息交じりにれいなは言葉を繰り返した。


 「オーバーエンチャット!? れいなさん、それって一体何なの……」

 「体のキャパシティを超えて魔力を蓄えるとどうなると思う?」

 「……わかんない……」


 俯いてしょんぼり返事を返すかのん。

 れいなは説明がてら漆黒の翼を更に広げた。

 窓の月明かりを背にして、翼を纏う姿はさながら堕天使のような姿になっている。


 「有り余るオーラが本人の潜在意識を模した形で体の外に保持されるようになるのよ」

 「潜在意識で!? ――じゃあその姿みんな違うの?」


 かのんはれいなの言葉に何か閃いたようだ、思わず目を見開きはっとする。

 漆黒の女神は「そうよ」と小さく頷くと更に続けた。


 「姿形だけじゃないわ、特性スキルもみんな違うのよ」

 「特性!?」

 「特性と言うのはオーバーエンチャットに備わった独自の能力。 私の場合はこの漆黒の翼が自分のオーバーエンチャットスタイル、そして特性は魔法記憶マジックメモリー

 

 「魔法記憶?」


 れいなの説明にかのんは興味津々で思わずベットから身を乗り出していた。


 「良く見て居なさいかのん。 魔法記憶と言うのは魔法を発動する寸前のまま保持できるの」

 

 れいなは意識をさらに集中させる。

 翼の羽が鈍色に輝き、一枚一枚に小さな魔方陣が浮かび上がる。


 「あたしは羽に術式を組み込んで戦っているわ、今の呪式は肉体強化。 飛び降りたときは転移魔法を組み込んでいたのよ」


 「う、――……うにゃん?」


 かのんはれいなの丁寧な説明にもイマイチぴんと来ないようだ。

 悪戯っぽく毛布にくるまると、猫口をしてただ首を傾げるだけだった。

 ――すっぱだかのまま。


 「……うにゃんじゃ無いの……」


 かのんの余りにも予想外の行動に、れいなは思わず自分の頭を押さえていた。


 「にゃあ?」


 こんどは猫のような鳴きまねをするかのん。

 猫のように顔を照れくさく洗いながら。


 「にゃあでも無い」

 「ごめんにゃん……」

 「説明しているあたしの頭の方が痛くなりそうだわ……」


 猫まねをするおとぼけな金髪の天使にれいなは頭を押さえ、この娘は大丈夫かと思いながらも更に説明を続ける。


 「これがオーバーエンチャットと言う技術。 特性の会得までは行かなくても膨大な魔力さえ身につければ勝ち目はあるのよ」

 「でも、シェリルさんの消呪域はどうするのよ? それにルークさんのあの力技には…」


  自信満々に話すれいなの傍でかのんはしょんぼりする。


 「其処は考えてあるわよ」


 意気消沈する金髪の天使にれいなは思わずニヤリと口角を上げる。

 

 「消呪域はあんたの膨大な魔力でをかき消すの」

 「できるの!?」


 かすかな光明にかのんは思わず大きく目を見開いていた。


 「できるわよ。 あんたの魔力が消呪域の容量を超えて居ればね。 ――そして有り余る力をコレを体に張って膂力に転化する、そうしたらオウガの騎士ルークとも互角に戦えるはずよ」


 れいなは呪印が描かれたスカーフをポケットから取り出した。

 布にはブルーローズの少女たちが身に付けていた様な模様が刻まれている。

  かのんはその紋章に覚えがあるようだ。それを見た彼女の表情がとたんに曇る。


 「……もしかしてブルーローズの娘達がやってる方法?」

 「そうよ、判っているなら話が早いわね。 これはアイツらがやっている肉体強化の呪印」

 「呪印!?」

 「そうよ、この刻印が使えれば魔力を直接膂力に変えれるのよ。 かのんの魔力がルークの筋力を超えていればあいつに勝てる筈……――理論的にはね」


 れいなはクールに憂いの表情を浮かべたかのんを見つめた。

 其処には毛布を羽織った金髪の天使が居た。


「……私には無理よ」


 かのんはぽつりと言葉を零して思わず顔を赤らめる、そして顔だけ出して深く毛布にくるまった。


 「何を心配しているの? これは難しい魔力のコントロールも何も要らない、ただ張れば良いだけだから」


 れいなはかのんを安心させようとする。

 しかしかのんは更に表情を曇らせた。


 「そんな事は知ってるわよ……」

 「じゃあ何も心配は要らないわ。 張ってみるわね」

 「……ダメ……張らないで! 張っちゃだめ!!」


 思わず俯き、顔だけでなく耳まで赤くなったきたかのん。


 「何心配してるのよ? 最初は何事も度胸よ、度胸」

 「だめ~~~っ!」

 「行くわよ!」


 れいなは強引に毛布を剥ぎ取ると、嫌がるかのんの体に呪印をはりつけた。


 し~~~~~ん……。

 何もおきない

 ただ沈黙が支配する。


 「ま、まさかあんた?!」

 「……だから無理なのよ!!」


 れいなに秘密を知られたかのん。

 彼女は顔から火を噴きそうになりながら毛布にくるまった。

 ――ロールキャベツならぬ、かのんの毛布包み状態である。


 一方のれいなも予想もしない事態にそれ以上言葉が出ないようだ。

 目を見開いてアホウのように固まっていた。

 ――マサカのかのんが処女では無いという事実に……。

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