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ぷち暴走
かのんの背後の草むらの向こうからぎしぎしと音を立てて近寄って来るものがあった。
ふと、かのんが振り返ると馬車を引いている老夫婦が怪訝な顔でかのんを見つめている。
「あの、ここは何処ですか?」
かのんが尋ねると荷台には干し草が山のように積まれた馬車が、かのんの前で立ち止まった。
お爺さんは気の毒そうに答えた。
「ここはミッドエッジの村のはずれだよ。
お嬢さんそんな奇天烈な服を着て一人でこんな人気のない草むらに居るなんて旅芸人の一座からはぐれたのかい?」
その老人が言うのも無理は無い、老人の服を見るとどうやら中世の世界に近いようだ。
かのんの服装はその世界からは相当浮いているのは間違いないようだ。
老人はさらに続けた。
「お困りなら町まで送ってあげようか?」
このままではこの草むらで野垂れ死にである。
かのんは「お願いします」と頭を下げ、荷車の上の干し草に飛び乗った。
お爺さんの顔がわずかにひきつっているように見えた。