ホワイトムーン
「この珍妙な生き物は何だ?」
ルークは首をひねった。
彼はシルビアの事をしげしげと見ている。
どうやら、彼女が意識を失ったのでライブメタル制のレオタードが形を留めれなくなったようだ。
シルビアは裸体のまま床に横たわって居た。
シルビアは顔は掛け値なしで整った美人の顔だ。
しかし、ネコのようなしっぽが体から直接生えて体は紛れもなく女性の体、しかも耳にはネコ耳がついている。――そして胸にはデカメロンクラスの巨乳。
彼が珍妙な生物というのも無理はない。
「ルーク様、彼女は人猫感染者です」
シェリルはクールに返事を返す。
先程の表情が嘘のように。
「人猫?」
ルークは目を見開いた。
まるで伝説の生き物を見るような表情を浮かべて居る。
「そうです人猫。 ルーク様、見るのは初めてですか?」
「人猫と言うと、人を食うという人狼の類か?」
「大まかな分類では……」
シェリルはぽつり呟く。
「人狼と何か違うのか?」
「決定的な違いがあります、心です」
「心?」
ルークは深く考え込む。
「人狼の心は獣ですが、人猫は人です」
「そうか……」
「しかし、危険な敵には変わりません」
ルークはシェリルの説明に納得したのか踵を返す。
そして、自分のマントを後ろに投げた。
――マントはシルビアの体を覆い隠す。
「シェリル、この娘は手当てをした後処刑するまで牢にいれておけ」
「この子はどうしましょう?」
「お前に任せる」
シェリルの問いにもルークは振り返らずに歩き出した。
「ルーク様、かしこまりました」
…奴も見込み違いか……
白銀の月が照らす中、ルークは自分でも気がつかないうちに呟いていた。
”
「はぁはぁ……、やっと陸地に着いた……」
月明かりが照らす波打ち際。
波に揉まれるれいなは荒く息を切らせていた。
胸元には抱き抱えられ意識を失っているかのんがいる。
危機を転移魔法で脱出したれいな達。
しかし、落下中では精密な詠唱が出来ずコントロールを失った。
そして彼女達はミッドランド近海に墜落し、ギリギリで陸地まで泳ぎ着いていた。
「かのん、目を覚ましなさい」
れいなの呼びかけにもかのんは返事はない。
フランス人形のようにぐったりしている。
「その娘かのんって言うんだ。 私たち運が良いみたい」
「だれ?」
声にれいなは顔をあげる。
そこに居たのは青いレオタードの少女達。
その数2人。
ブルーローズの小隊だ。
彼女たちは笑顔で口を開いていた。
「海に落ちた物は、潮の流れの関係でここら辺に流れ着く事がおおいのよねぇ」
「二人を見つけれるなんて私たちツイてるわね」
「きっとコレはシェリル様から特別ボーナス物よね~」
顔を見合わせ言いたい放題の彼女たち。
れいなは彼女達をキッとにらみつける。
刺すような視線だ。
「あんた達はブルーローズ?」
「いきがっても無駄ですよ、魔力も残ってないんでしょ?」
「……まだ残してあるかもよ?」
不敵に微笑むれいな。
しかし少女たちは平然と答える。
「魔力が残って居るなら、この場で転移魔法で逃げ出すのに逃げ出さない……つまり魔力切れでしょ? 無駄な抵抗せずに大人しくしてください」
少女達は拘束用のロープを取り出した。
「あたしを甘くみないでね、魔力が残って居なくても……」
れいなは起き上がろうとした。
――しかし、体が動かない。
其れを見た少女たちの口角がゆるむ。
「波に揉まれて体力も限界のようですね」
「後少しで魔力が回復するのに!!」
れいなは地面を叩きつける。
「今はあきらめてください、例のブツももう品切れでしょうし」
少女達は歩を進める。
……焼キ付クセ…グラン…
――刹那
奇妙な詠唱とともに火玉がれいなの頭上を飛び去った。
「なにっ?!」
少女達もれいなとの間合いを離した。
炎に照らされ暗闇に巨体がちらり浮かび上がる。
まるで熊のような巨大な体躯。
巨大ウサギだ。
しかも1匹や2匹ではない匹数だ。
突然の襲来に空気が変わる。
「巨大兎?」
「運が悪いときは重なるものですね、私たちに捕まるか、兎さんに殺されるかどっちにします?」
「どちらもイヤよ!」
青ざめるれいなに少女達は気の毒そうな表情を浮かべる。
「オマエ達ガ消エレバ済ム」
兎は呟くとれいなとブルーローズの前に立ちふさがった
まるで邪魔をするように。
「何? どうして巨大兎が?」
兎は唖然とする少女に熊のような剛腕をふりおろす。
そしてブルーローズに戦いを挑み始める。
兎と少女達の乱闘が始まった。
――戦況は、兎の方が不利そうだ……。
少女たちは無傷の中、だんだん無傷の兎だけは減って居る。
「助かったわ兎さん、でもあんた達は大丈夫なの?」
兎はれいなの方をちらり振り返る。
そして目で合図を送った、これは逃げろと言う意味だろう。
「…人間ニ借リハ残サナイ」
「何か解らないけど、ありがとう」
「……金髪ノ娘、此処デ死ヌノハ困ル」
「……あんたもかのんが気に入ってるんだね、恩に着るよ」
深呼吸するれいな。
ルーンを切るとかのんと二人虚空に消えていった。
波打ち際では兎と少女たちの乱闘が続いてる。




