嵐の夜に
ばしゃばしゃ
れいなが、後ろ手に縛られているかのんを肩に担ぎ鍾乳洞を駆け抜けて行っている。
かのんは先ほどの爆風で意識を失ったようで、人形のようにぐったりしている。
「ここまでコケにされて屈辱的な事を言われたのは
生まれて初めてよ、絶対に許さない・・・」
れいなが呟いた。
洞窟をぬけたれいなは、近くのおんぼろ馬車の荷台にかのんを乱暴に投げ込むと
そのまま馬車に乗り込み全速で馬車を走らせ始めた。
馬車は石畳の石に車輪が当たる度に「ぎしぎし みしみし」と今にも壊れそうな音を立て、
その度にかのんの体が荷台から少し浮き上がり
荷台に叩きつけられる度にかのんの小さな悲鳴が聞こえている。
いつの間にか、雲が広がり満月を隠し始めていた。
なお暗闇の中を馬車は村の道を海の方面へ爆走してる。
しかし、ぼろ馬車についにもその限界が訪れた。
「ぎしぎし みりみり 」と嫌な音を立てて馬車の車輪が外れ
がりがりがり~~と馬車の荷台が地面をこすり 馬車は停止した。
「ぼろ馬車!」
れいなが吐き捨て、馬車から飛び降りると
ぐったりしている かのんを荷台から
道のわきにある草むらに乱暴に引きずり下した。
「何をするつもりなの?」
かのんが弱弱しく答えた。
れいなは、かのんの胸の辺りの服を乱暴に引き裂くと
先ほどの十字に傷をあらわにさせた。
「愛だの友情とか言ってるあいつらに、
一番自分の無力さを判らせるつもりよ?
何か文句ある? 」
「どういう事なの?」
かのんが恐怖に震えながら尋ねている。
れいなは かのんの胸の傷を爪で悪戯っぽく撫でた。
その瞬間かのんの体が ピクっと跳ね上がり小さな悲鳴が上がる。
「こういう事よ」
れいなは表情を変えずに答えた。