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今日から魔王始めました  作者: くろねこ
2章 秘薬エリクシール
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まさかのハンバーガー

 誓いの儀式も終わり、広場でデートを続けるかのんとセージ。

 二人で腕を組んで、お祭りの屋台を色々見て回って居る。

 

 太陽は高く上がり、そろそろお昼が近くなったようだ。 

 何処からか、お昼ご飯をつくる美味しそうな匂いがただよってきていた。

 その匂いに、かのんのお腹もぐ~と悲痛な音を鳴らし始める。


 「さっきの音聞いてた?」


 自分の腹の虫の悲鳴に顔を赤らめるかのん。

 セージは小さく笑いながら返事を返す。


 「あれだけ音がデカかければ聞こえるだろ? オレも腹が減って来たよなぁ」

 「そうね、何か良い匂いもして来たし、何か食べようよ?」


 匂いの元は広場で肉を焼いているようだ。

 香ばしい匂いがあたりに漂っている。

 そのにおいに釣られて、二人は発生源に向かって行く。



 匂いの発生源は、広場にあるオープンテラスカフェだった。

 10席程度の傷だらけのテーブルと椅子が並べてある。――8割近くの席はお客で埋まって居た。


 そして、カフェのキッチンでは店主がひき肉の固まりを炭火で焼いている。

 肉が焼きあがると丸いパンを半分に切り、野菜と一緒に焼けた肉を挟み込んでいた。

 その姿を少し離れた場所から見るかのんとセージ。


 「セージ」

 「なんだよかのん?」

 「もしかして、これはハンバーガー?」

 「もしかしなくても、どうみてもハンバーガーだろ?」

 

 大好物のハンバーガーに目を輝かせるかのん。

 異世界でこんな物に出会えると思えず驚きを隠せない。


 「ここでお昼にする?」

 「いいな~、飯にしようぜ飯に。 ハンバーガーなら其処まで高くないだろうしな」



 オープン席に座る二人。

 暫くすると赤髪をしたメイド姿のウエイトレスが注文を聞きに来た。


 「今日は特別メニューで『ハンバーガー』を……」

 

 かのんとウエイトレスの目が有った瞬間、娘は思わず口を押さえる。

 彼女かのんも思わず目を大きく見開いて固まった。

 そして、かのんはセージの腕を思わずつつく。


 「セージ、ここのお店……」

 「どうしたんだよ、かのん?」

 

 固まって居るかのん にセージもウエイトレスを思わず見る。

 そして彼も思わず固まった。


 ――ここは、昨日かのん達が滅茶苦茶にした西風ゼファーのお店だったのだ。

 それを知らずにかのんとセージは来ていた。

 思わず逃走を図ろうとする二人。


 二人を見てウレイトレスは、落ち着かせる様にかのんの耳元に囁いた。


 「安心して、逃げなくても大丈夫。 昨日エロフォロルクを広場で成敗した昨日の娘でしょ? 」

 「昨日はお店壊してごめんなさい!」


 思わず、かのんは頭をぺこりと下げる。

 その様子にウエイトレスは表情を緩め口を開いた。


 「あなたは何も心配しないで良いわよ」

 「ありがとうございます」

 

 思わず笑顔がこぼれるかのん。


 「店を壊したのはアンヌだし。 何より、女の敵のあいつを広場でボコボコにしたあなた達は英雄だから、感謝の気持ちで何か食べて行って」


 どうやら、かのん一行が娘の敵『エアフォルク』を成敗した事が街の娘達の間に知れ渡って居るようだ。

 かのんは娘達の間で英雄にされていた。


 「じゃ オレも成敗したから食わして貰えるよな?」

 「ん……?」


 ウエイトレスは、セージがレオタードの女装姿をしている事に気が付いたようだ。

 彼の姿を見た瞬間、彼女は顔を引き攣らせながら口を開く。


 「女装じゃ誤魔化されないわよ! あんたは昨日先輩を泣かせた極悪人でしょ?! あんたに出すものは無い! 残飯ですら勿体ない!!」

 「オレもエロフォルクを成敗したぞ?」

 

 猛烈に抗議するセージ。

 しかし娘は聞く耳を持たないようだ。

 一言で切り捨てる。


 「先輩を泣かした罪で帳消しよ!」



 いつの間にやら、三人娘の残り二人も駆けつけてきた。

 ――手には金属のお盆を手に持って。


 「「今日は何のトラブル?」」

 「昨日の先輩を泣かせた子が女装して来ているのよ」


 バイトの娘二人の冷たい視線と言葉がセージに突き刺さる。

 

 「「へぇ~、食い逃げのくせして、また店に顔だすとはよい根性してるわね。 店を再開するのにどれだけ大変だったか」」

 「アンヌの分まで、腐りきった根性叩きなおしてやる?」

 「いいわね!」


 セージは既に、昨日の主犯格に格上げされているようだ。

 三人娘は、セージを取り囲む。


 「まてよ、オレは店を壊してないぞ」

 「トラブルの発端はあんたでしょ?」


 三人娘は聞く耳は持たないようだ。

 お盆をたかだかと掲げセージにねらいを定める。

 彼女たちの目が邪悪に光り、口角が上がる。


 青ざめながら口を開くセージ。


 「まてよ! ここの店は店員が客を叩いても…」

 「まって!話せば…」


 くわぁ~ん×3


 かのんとセージがしゃべるのは中断した、三人娘のお盆がセージの頭をとらえたのだ。

 しかも横たたき。

 これは痛そうだ。


 「いってぇぇ~~!!」

 「セージ大丈夫?」


 あたまを抱え悶絶するセージ。

 その様子に目をまるくするかのん。


 バイト娘3人組みは腕を組みセージを見据えながら口を開く。


 「「「叩いても良いの! 金を払わない客は客ではありませんから!!」」」

 「鬼かおまえら?」


 頭を押さえるセージにバイトの娘はさらに続ける。


 「「「ここの掟は食い逃げの客は生かして返すな! 捕まえてこき使え!! 」」」

 「今決めたんだろ?」


 不審そうな表情のセージ。

 三人娘はあり得えない角度で胸を張り更に続けた。


 「「「その通りよ、ここは現場判断が最優先なんだから何か文句ある?」」」


 もう此れは、治外法権である。

 此処ではバイトの娘達が法律の様だ。


「つまり、働いて返せと言うこと?」


 かのんがおそるおそる尋ねると、娘達は表情を緩めて口を開く。


 「あなたは良いわ、赤髪の子の方は働いてもらうけどね」

 

 釈然としないセージは思わず反論する。


 「何故俺だけ!? これは差別だろ?」

 「「「あんたは、先輩を泣かした極悪人!!」」」

 「……オレは無実だ!」


 セージはニュルンベルグ裁判のように、彼が犯人ありきで判決が言い渡されているようだ。

 彼の弁解むなしく、娘達の現場判断でセージに極刑が言い渡される。


 「「「言い訳無用! お昼の営業でこき使うので勘弁してあげるわ!」」」

 「おぃ……オレ達には夕方には用事があるんだぜ」

 「「「安心しなさい、 祭りのメインのパレードまでには終わるから」」」


 これは逃げられないと、しょんぼりするセージ。


 「セージ 諦めない? わたしもメイド服着て手伝うから♪」


 かのんは目を輝かせて大喜びしている。

 メイド服が着れるのが嬉しくてたまらないようだ。


 「「「あなたは良いのに」」」


 かのんの頭をなでながら、セージをにらみつける三人娘。


 「「「男なら覚悟をきめなさい!」」」」

 「結局こうなるのかよ…」


 しょんぼりしながら、うなづくセージだった。



 「お人形さんみたいで、かわいい~!」

 「レンちゃんにも、ひけをとらないわね」

 「後は、好みの問題?」


 休業中の西風でメイド服に着替えたかのん。

 彼女の姿をみた三人娘から歓声があがった。


 「ありがとうございます、一度着てみたかったの♪」


  かのんは笑顔でくるっと一回転した。

  かのんのセミロングの金髪がさらりと流れる。

  その姿はまるでメイド服を来た天使の様である。



 「「「こっちに比べると、男の子の方は…」」」

 三人娘はセージの滑稽な姿に思わず口角が上がる。


 セージはメイド服を着て、頭にはヘッドドレス、更には胸に特大のパットまで。

 ――シルビアに勝るとも劣らない胸のサイズになっている。


  その姿に彼は思わず抗議する。


 「も、文句があるなら着させるなよな! スーツ姿でウエイターでも良かったんじゃねぇか?」

 「「「男性用の服はありません!」」」


 セージの意見を一刀両断するバイトの娘。

 彼はがっくり肩を落とした。


 「何が悲しくて、ブラやショーツまで付けないと行けないんだよ…、まさかもう一度つけるとは思ってもなかったぜ…」

 「あきらめなさいよ、ゆ…じゃないセージ」

 「かのん……」


 肩を落とし文句を言うセージに、かのんは笑顔で慰めていた。

 広場ではお客が増え始めて居る。


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