お祭り
ミッドランドの祭りは、賑やかである。
広場に有る舞台を中心に海までの路地にかけて様々な屋台が所狭しと建ち並んでいる。
そして、町の住人もスラムの住人も着飾って外出していた。
食べ物の屋台は様々な種類があった。
――様々なフルーツを溶けた飴で巻いた物、小麦粉を水で溶いたものを薄く延ばして焼き、クリームとフルーツを巻いて食べるもの(日本で言うとクレープのようなもの)、ふわふわのわたあめなど等。
ガッツリ系では肉を棒に巻き付け炙り、焼けるつど削り取って食べる料理(日本で言う所のケバプ)や、焼き鳥や肉まんらしきものまで。
まるでフードコートも真っ青な品ぞろえである。
そして、楽しむ方では、風船つりや鐘叩き、ひもくじ(好きな紐を選び、引いたものがもらえるゲーム)
などが客を競いあっている。
そんな中、かのんとセージは人混みに紛れ込んでいた。
二人ともブルーローズの制服であるレオタードと言う格好で。
かのんはレオタードに胸鎧、肩当てをしてその上に漆黒のマントを羽織っており、
セージの方は、レオタードの上に胸鎧肩当て、そして腰には巻きスカートを巻いている。
服のせいで、二人もブルーローズの娘と思われているようだ。
だれも気にとめる様子はない。
「かのん、何見てるんだ?」
「セージ、この屋台何やってるのかな~っと」
「アイスクリーム屋っぽいけど、コーンカップしか置いてないよなぁ…」
「でしょ?」
かのんが目を輝かせ、興味津々で見ているのは屋台。
どうやらアイスクリーム屋らしく、コーンカップだけが金属性の屋台のテーブルに並んでいて、肝心の中身が無いようだ。
店員もいない。
「あそこに居るのがお店の人じゃないか?」
「あのおばさん?」
セージが指さした先に居たのは、年の頃50代の赤髪の恰幅の良い女性。
彼女は屋台の後ろにある金属の箱を前にして、うなり声をあげている。
――用途不明な箱はハンドルが横についていて、50センチ四方はあるだろう。
「どうしたんですか?」
かのん達が近寄り話しかけると、彼女は鬼の形相で返事を返した。
「どうもこうも無いよ! このままじゃ材料が全部だめになってしまうよ!」
「何かあったのかよ?」
セージが不振そうに尋ねると、おばさんは苦々しい表情で口を開く
「全部、あの赤髪バカ娘のせいだよ……。 自分が風系魔法使えるから冷やすのは任せておけと言って、結局すっぽかしやがったんだよ」
彼女の後ろには、卵や牛乳などのアイスクリーム屋の材料がつまれていた。
この気温では材料が腐るのは時間の問題だろう。
材料をじっと見て少し考えるかのん。
そして彼女はおそろるおそろる尋ねた。
「わたしでも、風系魔法つかえるけどダメかな?」
「ブルーローズのあんたが?」
おばさんは、いぶかしそうな表情をかのんに見せたが、背に腹は代えられないようだ。
最後には首を縦に振った。
「仕方がない、あたしが材料を作ったらこの金属の箱の中に目一杯風魔法をぶち込んでおくれ」
「は~い」
かのんは二つ返事で金属の箱の前に近寄った。
箱は二重になっており外側は、すこし水が張られた金属の箱、内側には直径四〇センチくらいの金属の球体が外にまで貫かれたハンドルにつながれている。
「おじょうさん少し待ってな、すぐに材料を作るからね」
おばさんが手早く牛乳と卵とクリームに砂糖等をボールに入れると、彼女は魔神の表情で中身をかき混ぜ始める。
「あのアンヌめ!!! 何が城外の任務だ。このこのこの!!」
殺気がこもった泡立て器捌きであっと言う間にアイスの材料が滑らかになっていく。
「かのん、このおばさん殺気こもってないかな?」
「殺気かんじるよね…」
顔を見合わせるかのんとせーじだった。
”
「さあ お願いするよ」
おばさんは球体の中に先程かき混ぜたアイスの材料を入れ、蓋を閉める。
後は冷やすだけである。
かのんは物珍しい光景に興味津々で見て居た。
「おばさん、全力で風魔法撃ってもよいのね?」
「手加減は要らないよ、箱の中に思いっきり魔法を打ち込んでおくれ」
「は~い」
かのんは目を閉じ、両手を高く上げ集中を始めた。
彼女の金髪がふわりと舞い上がり、体中が淡く光り始める。
「いくね、 風の精霊さん力を貸して!
トルネード!!」
かのんが魔法を放つと、小さな竜巻が箱の中に吸い込まれる。
ご~~~~~!!
すさまじい音とともに、箱の中が冷え始めたようだ。
箱の外か汗をかき、凍り付き始める。
――そとの辺りまで冷気がながれてきている。
その様子に大喜びするおばさん。
「ほ~、やるねぇ~。 これだけ入れれば数日間は冷えてくれそうだね。 これでアイスクリームはなんとかなりそうだよ」
「どういたしまして」
かのんはお辞儀をした。
「そうだ、少し待ってなよ。 すぐに出来るから好きなだけ二人で食べていけば良いさ、あんた達デートなんだろ? 可愛くトッピッングしてやるから楽しみにしてな、うちのアイスは絶品と評判で…」
おばさんは、箱の外に出ているハンドルをぐるぐる回しながら口を開いていた。
――ハンドルよりも口がよく回っているかもしれない。
アイスクリームが出来上がるまで、マシンガンの様におばさんは口から言葉を射出していた。
かのんたちは口を挟む隙すらなさそうだ。
”
「セージ、このアイスおいしいね~~」
「いけるな、かのん」
かのんとセージは思わず歓声をあげた。
「不思議な香りのアイスにラムレーズンのトッピングすごくあうねよね」
「このにおい、向月葵だよな」
二人ともアイスクリームの四段重ねをアイス屋で頂いた。
――ラムレーズンのトッピング付きで。
そして、雑踏から少し離れた眺めのよい高台で二人仲良くベンチに座り、アイスをペロペロなめている。
「かのん、このあとどうする?」
「夕方まで、時間結構あるよね」
「まだお昼にもなってないぜ」
セージが空を見上げると、太陽はまだ真上にも上ってない。
夕方までは時間がありそうだ。
「セージあれ何?」
「今度は何だよかのん?」
かのんの視線の先に合ったのは飴ざいく屋。
職人の男の手の中で、白い塊が魔法のように形を変えてゆく。
丸い塊があっと言う間に、ドラゴンの飴に変形した。
その様子を近くに駆け寄り、じっと見ているかのん。
「すごいですね~」
「おじょうさんこんなのは序の口、序の口! ちょっと見てな」
調子のよい店員は、今度は飴を風船のように膨らませると、ひょいひょいと、等身大の かのんそっくりな顔をつくりあげた。
――かのん飴である。
その出来映えに、かのんもセージも関心している。
「どうだ、すごいだろ? 伝説の飴細工職人にかかればこんなものお手のものだぜ」
伝説の職人は胸を張って威張って居た。
「たしかにすごいのはスゴいけど、だれが欲しがるんだ? こんな生首みたいなもの…」
セージはぽつりとつぶやいた。
頷く、かのんと職人さんだった。




