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今日から魔王始めました  作者: くろねこ
2章 秘薬エリクシール
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聞かぬが花、試着室にて。

 ネメシスたちが去った東風。

 彼女が去ってお店は何時もの状態に戻ったようだ。


 静かになった店内でシルビアは壁を背にして俯き、先程から静かに考え込んで居る。

 ――彼女は麦わら帽子を深くかぶり、誰とも目を合わせようとしない。

 

 その様子を見て、かのんとセージは顔を見合わせひそひそ話し合っていた。


 「セージ、ネメシスさんの事だけど」


 かのんは不安そうにセージに話しかける。


 「何だよ、かのん?」

 「あの人はいったい何者なのかな? シルビアさんはスレインと言って居たけど……」

 「シルビアさんは、たしかそう言ってた。 でもあんまり深入りしない方が良いこともあるからな」

 「そうなの…?」


 かのんはしょんぼりして返事を返す。

 セージはまじめな表情でさらに続ける。

 

 「かのんは無邪気すぎるぜ。 シルビアさんの口振りから行くと、きっとあの人の過去がらみだと思う」

 「過去?」


 かのんは何の事か判らず、きょとんとしている。

 セージは彼女かのんに判るように説明した。


 「うん、ブルーローズ時代の誰にも話したくない過去じゃないか?」

 「……私たちは、あの人の過去を殆ど知らないのよね」

 「誰にだって、話したくない過去はあるだろ?」

 「そうよね……」


 セージは転生前のゆきなだった事を思い出しているようだ。

 ――遠い目をしながら口を開く。

 かのんは少し考えながらシルビアの方を見てみた。

 

 彼女は漆黒のレオタードを身に纏い、頭はネコ耳を隠すように麦わら帽子を深くかぶっている。

 そして風も無いのに、腰から伸びている漆黒のリボンが揺れる。

 何故か、何時もより殺気が強い気がした。

 ――しかし、トレードマークのネコのしっぽは何故か見あたらない。


 シルビアはかのんの視線に気が付いたようだ、顔を上げると小さく微笑んで口を開く。

 

 「どうしたの、かのん?」

 「さっきの件だけど……」

 

 不安そうにかのんが尋ねる。

 シルビアは作り笑いを見せながら、かのんとセージに近寄った。

 そして二人を抱きしめると、背中を撫でながら口を開く。


 「ん……。これはあんた達が心配する事じゃ無いから、気にする事は無いよ」

 

 シルビアの複雑な表情を見たかのんとセージ。

 二人にはそれ以上聞く事が出来なかった。

 

 話がひと段落したので、シルビアは話題を変える。

 

 「二人とも、ここでの買い物済ませちゃおうか」

 「そうね。 所でシルビアさん しっぽは?」


 かのんは彼女のしっぽが見当たらないのが気になっているようだ。

 シルビアは自分の腰に着いて居るリボンをぴくぴく動かして見せた。


 「あたしの正体がバレるとめんどいから、しっぽをライブメタルでカモフラージュしてるのよ」 

 「ライブメタル?」


 聞きなれない言葉に目をぱちぱちさせるかのん。

 シルビアは更につづける。


 「セージには話したけど、かのんには話してなかったね。 ライブメタルは今あたしが着ている服だよ」

 「シルビアさんの着ている服、普通の服じゃないの?」

 「見てなさいよかのん」

 

 シルビアはしっぽのカモフラージュを解いた。

 ――漆黒のリボンが手品の様に一瞬にしてネコの尻尾に変わる。

 

 「すごい……」

 「人形以外にも変形可能なんだな……」


 かのんもセージも予想外の光景に、目を丸くしながらアホウの様に口を開く。

 ふたりを優しい視線で見ながらシルビアは更に続けた。


 「二人とも何をおどろいてるの? あんた達も今から着るのよ」

 「わたしが?」「オレが?」


 かのんとセージはとんでもない事になったと思い、顔を見合わせた。

 

 「セージ……出来そう?」

 「オレは自信が無いぜ」


 不安がる かのんとセージ。

 二人の表情を見て、シルビアは二人を落ち着かせるように口を開く。


 「二人とも安心しなさい、水月が使える魔力が有れば服にはなるわよ。 それ以上の変形は技術がいるけどね」

 「本当?」

 「安心したぜ」


 かのんとセージは一安心する。


 「じゃ さっそく着て見ようか~」


 シルビアは明るい口調で喋った。


 「何処にあるの?」

 「これよ」


 シルビアはかのんに近くにある棚に置かれた数個の瓶を指さした。

 ――色とりどりの液体が古びた瓶に詰められている。

 そして、瓶にはルーン文字が刻まれた紙が貼りつけてあった。


 「これが元のライブメタル。 あたしが今着ている服よ。 かのん、セージ、其処に有る瓶を持ってみなさい」


 「は~い」

 「俺はこの黒いのがいいな」

 「わたしはこのピンクにするね」


 かのんとセージは棚にある瓶を取った。

 かのんは薄いピンクのライブメタルの入った瓶を選び、セージは黒のメタリックの物を選んでいる。


 そして、二人は中身を揺らした。

 

 ちゃぷちゃぷ……。

 ――瓶の中身は淡く輝きを放った。


 「これがライブメタルなのね……」

 「どう見ても、タダの液体だよな」

 

 かのんとセージは不安そうに瓶を覗き込んでいる。

 二人が瓶を選んだようなので、シルビアは店員を呼びとめた。


 「店員さん、この二人を試着室に案内して貰えないかな?」

 「かしこまりました。 お二人様、こちらにある試着室へどうぞ」


 シルビアが店員にお願いすると、店員はにこやかに返事を返し案内を始めた。

 その後をついて行くかのんとセージ。




 「客様、こちらになります」

 「ありがとう」


 金髪の店員がかのんとセージをうやうやしく試着室に案内した。

 ――更衣室はカーテンで仕切られただけの作りだった。


 レオタード身に着け、巻きスカートを腰に巻き、更には胸にパットを入れているいるセージ。

 店員は彼が男の子だと気がついて居ないようだ。

 かのんとセージ、二人は隣同士カーテン一枚で仕切られた更衣室に案内されている。


 「かのん、この服どうやってきるの?」


 カーテン越しにセージの声が聞こえる。


 かのんはカーテンをずらしてセージの様子を伺った。

 彼が瓶を持って悪戦苦闘して居る姿が見える。

 ――セージは、かのんが覗いている事には気がついていないようだ。

 

 「たぶん中身をを体に振りかけるんじゃないのかな?」

 「サンキューかのん。 やってみるぜ」


 セージがレオタードの上からメタリックな液体を振りかけた。

 

 ――さーっ。


 ライブメタルは服に変わらず、床に流れていっく。

 そして、勝手に瓶にもどった。


 「おかしいなぁ……、服に変わんないぞ……」

 

 不思議がるセージ。

 店員はカーテン越しの状況が判るらしく、くすくす言いながら説明を始める。


 「お客さま、その服を身に着けるのは初めてですね、ライブメタルは素肌の上につけないと着れませんよ」

 「それを速くいえよ」


 セージは服を脱ぎはじめた。

 その様子を顔を赤らめて、手で顔を覆いながらも指の隙間から彼の姿をみている かのん。

 この期に及んでも、セージはかのんが覗いて居る事には気がついていないようだ。

 彼は黙々と服を脱いでいた。


 素っ裸のセージは再度挑戦する。

 しかし、服のかたちにならない。

 首をかしげるセージ。


 「おかしいな……服は脱いだのに。ライブメタルが変形しないぞ」

 「お客様、魔力が足りないか集中が足らないんですよ」

 「どうやるんだ?」

 「魔法を撃つ感じで、魔力を集中させてみて下さい」


 カーテン越しに店員はさらりとこたえる。


 「アドバイスサンキュー。じゃ やってみるぜ」


 セージは目を閉じると、魔法を使う要領で魔力を集中する。

 ――今度はライブメタルが彼の体にまとわりつき、黒のエナメルの様なレオタードに変形すした。

 まるでSMの女王様が着る様なエナメルスーツになっている。

 

 「さすがゆきな、女王様のようなカッコいい服に変わってるよ」

 「ゆきなと言うな……、セージと言えと言っただろ? でも、どうやって服の形が判ったんだ?」

 「何時もみたいに見てたから……」


 かのんはカーテンの隙間から顔をひょっこり出して恥ずかしそうに口を開いた。

 ようやく、かのんが覗いて居る事に気がついたセージ。


 「ぇぇ~~~~ か かのん!? 見てたのかよ!!」

 「うん……」


 集中が解けたセージは服が全部流れ落ちる。

 素っ裸になった彼は、思わず前を押さえ前かがみの体勢になっていた。

 そして、セージは照れながら、恥ずかしそうに口を開く。


 「み 見るなよな、おい」

 「…気になってたから…」


 流石の かのんも恥ずかしそうしていた。


 「かのん、何時まで見て置居るんだ、痴女め!」

 「ごめんにゃん♪」


 顔を赤らめて、照れ隠しをするネコのように顔を洗うかのん。


 その様子に、呆れ顔のセージはため息一つ。

 そして更に続ける。


 「かのん、お前もやってみろよ難しいんだからさ」

 「見ないでね」


 カーテンから首を引っ込めると服を脱ぎ出すかのん。

 ――レオタードを脱いで一糸まとわぬ姿になる。

 その様子を、カーテンの下からこっそりのぞき込むセージ。

 しかし、かのんは気がついていないようだ。

 

 「確か裸の状態で、ライブメタルを浴びるんだったよね……?」


 裸のかのんは、瓶を頭上に持ち上げる。

 そして、目を閉じて水浴びの様に中身を頭からかぶった。

 かのんのセミロングの金髪にピンクの液体が流れ、彼女の体を濡らしてゆく。

 まるで、滝行のような光景である。


 ――刹那、ライブメタルは変形する。

 まるでピンクのレオタードのような形になった。

 かのんの姿はピンクのレオタードを着た金髪の天使の見える。


 「すごいでしょセージ! 服みたいになった!」


 かのんは自慢そうに満面の笑みを浮かべ、カーテン越しでセージに話しかける。


 「金髪の天使みたいだぜ。 やっぱ、かのんは可愛いよなぁ……」

 

 かのんの足元からセージ返事がきこえてきた。

 彼女は、ようやくセージが足元から覗いていたことに気がついた。


 「せ、セージ見てたの?!」

 「お返しだ、服を脱ぐところから全部みてたぜ」


 かのんは頭が真っ白になった。


 ――ざ~~~。


 かのんが集中を解いた瞬間、服は床に全部流れ落ちた。

 生まれたままの姿になったかのん。


 「きゃぁ」


 かのんは小さな叫び声をあげると、腕で小さな胸を隠ししゃがみこんだ。

 その様子をニヤニヤしながら口を開くセージ。


 「今更隠すなよ、お前は昨日はもっとスゴいもの見せたじゃん」

 「昨日は暗かったから……」


 かのんは上擦りながら口を開く。

 セージは満足げにカーテンの下から首をひっこめながら喋りはじめる。


 「でも、覗いたのはこれでイーブンな」

 「ひどいにゃん!」


 かのんは真っ赤にしながら抗議していた。


 外からは店員がくすくす笑う声が聞こえて来る。

 どうやら、かのんとセージがお互い覗きあっていたのが判って居るようだ。

 ――二人の精神年齢は子供と一緒だと思われたようである。


 「お客様、もう少し大人になってからの方が宜しいかと思われますが……」

 

 店員は笑いを堪えるように口を開く。

 シルビアもカーテン越しに、呆れながら二人に声をかけた。


 「はぁ……、集中力とは意外な盲点だったわね……。」



 「どうするの?」


 かのんは着替えながらシルビアに尋ねた。


 「そうね、ふたりともれいなが装備してたように。 今のレオタードの上に胸当てに肩当てにしよっか」

 「オレは板金鎧がいいな」

 

 カーテン越しにセージの声が聞こえたが、シルビアは即答で返事を返した。


 「ブルーローズの制服はレオタードと決まってるからね。」

 「え~」

 

 不満そうな声を上げるセージ。

 かのんは彼の試着室に顔を覗かして口を開いた。

 ――ネコ口でニヤニヤしながら。


 「ゆ……、セージ諦めなさいよ、それに昔は良く着てたじゃん。 さっきの格好も今の格好も似合ってるよ」

 「かのん……」


 かのんの発言に、しょんぼりするレオタード姿のセージがいた。

 

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