決着
「もう勝ち目はないから降参しろ、
降参して かのんとせーじの二人に謝れ。
そうしたら全部終わりにしてやる。」
ゾットがれいなに話しかけた。
「ちょっと ゾット様 勝手な約束しないでよ
あたしは仲間をこんなにした彼女を絶対に許さないんだから!!」
シルビアは不満そうだ。
彼女はしっぽを不機嫌そうに左右に振っていた。
気が付けばウッドもエドもこちらに戻ってきている。
熱湯風呂に落ちた手下どもはどうやら既に逃げ出しているようだ。
ゾットは続けた。
「たしかにお前は強いよ、
だがな、お前は大きな間違いを犯した。
いくらお前が強くても、最後の最後で支えてくれる物が無いんだよ
オレ達と違ってな 」
「……」
れいなは何かぽつり呟くと、静かに剣を鞘に納め、うつむいた。
「判ってくれたようだな、二人に謝ったら
そこに倒れているお前の相棒を連れてここから失せろ 今回はこれで見逃してやる」
ゾットは倒れている ゆうじに目を向けた。
「まてよ 俺も反対だ、こいつは絶対に反省しないぜ
この女を痛い目合わせて判らせないと」
エドがれいなを見て話した。
「待って、私は平気だから、この人に酷いことをしないで」
意識を取り戻した かのんはエドに話しかけた。
「誰かが傷つけられるのを見るのは悲しいから」
「何処まで甘いんだよ」
エドはため息をついた。
「そうだな やられたらやり返すってのは人間の流儀だろ?
この女をなぶり物にして、腕の一本でも切り取れば二人の怪我は治るのか?
治らないだろ? そんな事をしても、かのんが悲しむだけだ。
おれ達までその流儀に付き合う義理は無い」
ゾットは答えた。
「ふぅ~ん 魔王まで愛や友情とかって言うの?
それが何? ゆうじが相棒? 冗談じゃないわよ
あんたにまで同情されるってマジで屈辱なんですけどぉ」
れいなは殺気の籠った視線でかのんを睨みつけた。
「でも魔王にまで、そんな事言わるとは思ってもみたかったなぁ」
れいなの体が怒りで小刻みに震えている。
「じゃあ その愛とか友情の強さ見せてよね!」
れいなの体中が青白く淡く光りだし、髪がふわりと広がった。
「れ れいなやめろ!! 俺まで巻き込む気か?」
ゆうじがうめきながら叫び声を上げた。
「自分で何とかしたらぁ? あたしはもう あんたには興味ないしぃ」
れいなはゆうじを汚いものを見るような目つきで見ている。
その表情に彼は青ざめる。
「じゃあねぇ 」
れいなを包み込んでいる淡い光がす~っと、流れるように手の先に集中して行った。
――そして、周りのオーラが収斂し、火の玉を太陽のような灼熱の光球に変化してゆく。
その状態を見たゾットの表情が真顔に変わる。
「ヤバい!
コイツは爆炎系の魔法だ、みんな伏せろ!!」
ゾットがそう言う間もなく、れいなはたき火の傍にあるタルを蹴り倒し 何かを詠唱した。
タルの中の水がこぼれたき火にあたった瞬間水煙が上がり、
辺り一面が煙幕に包まれると同時に爆風が辺りを走り抜けた。
煙が抜けていき、辺りの様子がうかがえるようになると
その時にはれいなの姿は消えていた。
たき火の後にはぽっかりとした空洞が口をあけている。