それぞれの道
診療所の隠し部屋。
精一杯の勇気を振り絞って口を開いた彼女は震えていた。
れいなの胸に縋り付きながら。
バジルは「手伝わせてと」と言った物の、何をしたらよいのか不安な気持ちで一杯だった。
――銀髪の天使は怯えた目をしている。
その様子を見たシェスは静かに話しかけた。
バジルが怯えないように。
「お前震えてるじゃ無いか」
「大丈夫だよ……」
バジルは大丈夫と言ってはいるが声が震えている。
誰が見ても無理そうに思えた。
その様子を見て、シェスと れいなは優しく声をかけた。
「無理しなくて良いぜ、俺たちで何とかするからな」
「シェスもそう言って居るんだから無理しないで」
二人の慰めにバジルは何かを決意したように喋りだした。
声は震えたまま。
けれど、強い意志が感じられる口調で。
「大丈夫、ぼくもローズを助け出すのに何か手伝いたいたいんだ」
「ローズ?」
シェスは首を傾げた。
「イサべラさんは魔王の村で一緒に居る時はローズと言う名前だったんだよ」
「そう言えば、魔王の村であんたと一緒に居た娘見たわね、あの子がイザベラなんだ」
「そうだよ」
「へぇ……お前はイザベラとずっと一緒に暮らしていたのかよ?」
「村に来る前から一緒に居たから」
シェスは何か考えるような仕草をした。
そして意地悪く微笑んだ。
「なるほどな、 お前の気持ち良く判るぜ」
「ぼくの気持ちが?」
バジルはきょとんとした表情を見せた。
彼女は全く何の事か見当もつかないようだ。
「お前はローズって娘が好きなんだろ?」
「え…? ローズはずっと暮らして来て姉弟見たいな物だよ……。 それに、ぼ ぼくは今女の子になってるし……」
バジルが慌てる様子を見たレンは微笑んで見せた。
「女の子同士でも愛があれば別に問題は無いわよ♪ ね、れいなお姉さま」
「え?」
レンの発言を聞いて、れいなに視線が集中する。
れいなは思った。
(いきなりそんな話をあたしに振らないでよ……。)
そして顔を赤くしながら口を開いた。
「そ、そうよね。 愛があれば女の子どうしなんて些細な事よ」
れいなの赤い顔をみてレンは微笑んでいる。
そして彼女は小悪魔の様に口を開いた。
「お姉さま、耳まで赤くなってる可愛い~♪」
「レン……。 こう言う話しは二人だけの時に言ってね……」
「判りました、れいなお姉様♪」
レンは小悪魔の様に微笑むとバジルの方を見つめた。
「でもそう言うことだから、あなたも女の子同士なんて心配しなくても良いわよ」
「ありがとう、レンさん」
「危険を冒してまで助けてくれるなんてローズもぜったいに見直すわよ」
「頑張ってみる……」
「後、あなたにさっきから言おうと思って居たんだけど……」
「レンさん何?」
レンの表情は厳しくなっていた。
顔が引きつっているようだ。
バジルは何の事か解らないようだ。
「何時までお姉様の胸にしがみ付いてるの? あたしのお姉様から離れなさい!」
「ごめんなさい!!」
レンは謝るバジルをれいなから引きはがした。
そして れいなの胸にレンが抱きついた。
「お姉様は私の物よ! 誰にも渡さないんだから。」
れいなは耳まで真っ赤にしながらレンの体を撫でて居た。
その姿を唖然とした表情でみつめる一同。
顔を真っ赤にした れいなを見ながらルーシアは考えていた。
その問題はソコなの? なんか違わない?
イザベラ救出を手伝ってくれるのは助けるけど。
「なあバジル、男なら好きな娘にカッコいいところ見せてやりたいんだよな」
「そ そんな事は……」
シェスに訪ねられたバジルは耳まで真っ赤にして次の言葉が出せなかった。
その様子を目を細めてシェスは見ている。
「やっぱりな……。ローズをお前の力で助け出してやれよ」
バジルは考えた。
(ローズを助け出せたら彼女も見直してくれるかな? そうしたら「バジルあなた素敵」って言ってもらえるかも……。 その前に、一人前と見て貰えるといいな。
そう考えると、バジルはすこし明るくなった。
「ぼく、がんばるよ」
「じゃあ、お願いするわね」
ルーシアはバジルに頼むと作戦の内容を説明を始めた。
バジルは真剣に彼女の話に耳を傾けだしている。
「私たちの作戦を今から言うから良く聞いて置いて」
「うん」
「あなたがメイドとしてあるお屋敷に潜入、そしてある男の注意を引いて置いて欲しいの」
「その男はいったいだれなの?」
バジルは不安混じりに訪ねると、れいなは胸にすがりついているレンを撫でながら口を開いた。
「そんな危険な任務なら、あたしがやるよ。 あたしなら…」
レンはそんな れいなを複雑な表情で見つめている。
彼女は考えていた。
(れいなお姉さまは、いつも自分を犠牲にしようとしている。 お姉様は過去の罪があるから自分の命を軽くみているの? 私とっては大切な人なのに……。)
しかし、れいなはレンの視線に気が付いて居ないようだ。
「れいな、ありがとう、でもあなたじゃダメなのよ」
「どうして?」
れいなが不審そうに訪ねるとルーシアは答えた。
「相手はロイ スタンウエイよ。 私たちだと顔が知られているから警戒されるの」
「後な、あいつは年上の女の人は苦手な筈だ」
シグルドがさらりと言い放った。
「だから無理なお願いとは思うけど、顔が知られて居ない、バジルにお願いしたいの」
「お前が注意を引いている内にオレが助けだすからな」
シェスは口を開いた。
バジルは考えていた。
(ちょっと待ってよ、あの人の注意を引いておくの? 無理だよそんなの……)
バジルが不安そうな表情を浮かべている。
彼女の表情を見越したようにシェスが口を開いた。
「心配しなくて良いぜ、お前はお茶を運ぶだけで良い」
「お茶だけ?」
「そうだよ、後はあたし達がうまくやるからさ、あの坊やにあの服を着て着てお茶を運ぶだけでいい」
アンヌはにやりと微笑んだ。
彼女には何か策があるようだ。
そのほほえみにバジルは不審そうに尋ねた。
「お茶だしだけ?」
「くどいよ。 あんたはお茶を出すだけで、後はあたし達で何とかする」
「そのためには、あの服を着ないとダメなんだよね?」
バジルはベットそばのメイド服に眼を落としている。
その服は黒でレースで飾られており、ヘッドドレスもついていた。
「そう言うことだよ」
「これじゃ無理だよ」
「頑張るんじゃ無かったのかい?」
アンヌはバジルをじっと睨み付けた。
バジルはメイド服のあるベットまで歩をすすめると、服を手に取った。
「やっぱり……」
「どうしたんだい?」
「この服はアンダーのブラとか下着が無いと着れないよ、あのままじゃ痛くて着れないんだよ」
バジルは恥ずかしそうに口を開いた。
アンヌは、はっとした表情で返事をかえした。
「ああ~そうだったよね、あたしが悪かったよ。 すぐにブラとか下着を準備するよ、初めてならフロントホックのほうがよいだろ?」
「バックでも大丈夫だよ、何回か付けた事有るから」
バジルは平然と口を開いた。
「ん?」
顔を見合わせる一同。
れいな はバジルにおそるおそる聞いてみた。
「もしかして、ブラとか付けたこと有るの?」
バジルは頬を赤く染めて小さくうなずき。返事をかえした。
「良くそんな服を着せられていたから、何度も付けたことあるよ。 パット入りでね」
「そ、そうなの?」
れいな は驚きを隠せない。
バジルは更に続けた。
「ぼくはローズにおもちゃ変わりにされてそんな服着せられたからね。 ローズよりも可愛くなるから生意気と言われていたよ」
その言葉を聞いて黙り込む一同。
めいめいがバジルの顔を見つめながら呟いて居る。
「イザベルってどんな娘なんだよ……」
「どSかもよ」
「もしかして、男の娘だったりしてな」
「……こいつに同情したくなって来た……」
言いたい放題である。
「で でもさ、有る意味好都合かもしれないだろ?」
「どうして?」
「服を着させる手間が省けたというかもな」
シェスはフォローを入れたがフォローになっていない。
「とりあえずこの子のカップ、どの位かな?」
「Cくらい?」
「体の割に胸は大きいわね」
「な 生意気ね……」
ルーシアとレンとアンヌと れいなはガールズトークを繰り広げだした。
恥ずかしそうに聞いて居る、シグルドとシェス。
バジルは顔を赤くしながら照れている。
「俺はどっか行っとくわ、ガールズトークには入れそうにない」
「オレも出とくよ、苦手だしな」
シグルドとシェスは部屋から出ていった。
「とりあえず、アンヌのを付けて見て」
「ありがとう」
バジルが付けると ブラのサイズはキュウキュウだ。
「小さすぎてはみ出ちゃうよ!?」
その様子にアンヌは顔をひきつらせた。
「おい、あたしの胸が小さいといいたいのかい?」
「ううん、付けたら苦しいだけ」
「それをあたしの胸が小さいと言って居るんだよ!」
「ごめんなさい!」
その様子を見たルーシアは自分のブラをタンスから出すとバジルに手渡した。
「これはどうかな?」
「何とかいけるかも」
「じゃあメイド服に着替えてみて」
””
「どうかな?」
メイド服に着替えたバジルにみんなは息を飲んだ。
黒いメイド服に身を包んだ姿はまるで銀髪の天使そのもの。
まるで、某アニメの動く人形。 水○灯のような姿である。
元が男だと知らないなら、男性はおろか女性すら冥府魔道に引き込まれそうな凄まじい美貌である。
「凄いわね……。元が可愛かったけど此処まで可愛くなるとは驚きよね」
れいなはつぶやいた。
レンは目が点になっている。
「れいなお姉さま……浮気しちゃ嫌ですよ」
ルーシアも息を飲んでいた。
アンヌは無言である、彼女の方がよほど女の子らしいく見えた。
「服を着るのはこれで良いとして、後は行儀作法のトレーニングね。 じゃあ とりあえず挨拶からやってみてね」
「これでどうかな?」
ルーシアが尋ねると、バジルは天使の笑みを振りまきながらお辞儀をした。
――何処かの深窓の令嬢の様な優雅な振る舞いをしながら。
「完璧よ……」
一同目を丸くしている。
「じゃあ 次は台所でお茶を入れてみて貰えるかな」
「はい」
台所に向かったバジルは手際よくお湯を沸かし作法通りお茶を入れ始めた。
どこかの貴族が入れるが如く優雅なしぐさでお茶を次ぎ分けている。
彼女は作法通り完璧にこなしていた。
「どうかな?」
「……淹れ方も申し分なしよ……」
その姿を見て、ルーシアは息を飲んでいる。
れいなも驚きのあまり声も出ない。
レンはバジルに不思議そうに尋ねた。
「どこかの作法みたいだけど、どこでその作法を身に付けたの?」
「ローズと一緒にお手伝いならやったこと有るから、その時に教えてもらったよ」
バジルは嬉しそうに答えた。
「あとお願いがあるんだ」
「何?」
「戻れるまで、ボクの名前をフィリアって呼んでね。 ボクの昔の名前だから」
「昔の名前?」
「うん、故郷では男の子が生まれると女の子として大きくなるまで育てられるんだ」
「変な風習ね」
バジルの言葉をルーシアは何かを考えながら聞いて居た。
そして彼女は考えて居た。 イーブルアイの風習ね……。どこ地方だったかな?
「その時の名前がフィリアだったから、今はその名前で呼んで欲しいんだ」
「フィリアって呼べば良いのね」
「それでお願いするね」
バジルは小さく微笑んで見せた。
「あと、シルビアさん達が心配したら行けないから、やって置きたい事があるんだ」
「何かな?」
バジルはルーシアの耳元で何かを囁いた。
「そうね……。 やっておいたほうが良いわね」
「ね♪」




