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今日から魔王始めました  作者: くろねこ
2章 秘薬エリクシール
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Pretend back pendulum エリクシールエピソード零 一話 創世記

 舞台は二千年前のミッドランドに遡る。


 

 広野だ。

 見渡す限り焼け焦げた木々と廃墟の残骸だけが見える、時折くすぶっている炎が赤く見えていた。

 人影はどこにも居ない。

 ただ、焦げ臭い臭いが立ちこめていた。

 地獄を地上に持ち込んだらこのような光景になるのだろうか。



地獄のような広野に不釣り合いな音が響いている。



 罵声。

 殴打音。

 二つの音が不思議なハーモニーで広野にこだました。

 


 「ゾットてめぇ、すまんで済むかボケェ!!」

 「イシュ、悪りぃ!」


 ソコには一組の男女と幼子二人が居た。

 若き日のゾットとイシュである。


 幼子の方は、一人はロングヘアーの可愛らしい少女。

 もう一人は、ショートヘアーの少年……。

 と見間違えるようなボーイッシュな少女であった。



 「はあ、はぁはぁ……。

 ゾット、今の事態の深刻さ判ってるの?

 このままだと、私達の時間が止まるか、限られた命になるのよ!?」


 イシュは息を切らし狼狽しながらゾットを睨みつけた。

その視線は鬼気せまるものがあった。

その形相は地獄の鬼さながらである。


 ゾットはイシュに申し訳無さそうに頭を掻いている。

 彼は足下にいる幼子達を見ながら口を開いた。

「仕方ないだろ、ヒャクハチ様が大暴走して人間がこの二人しか残らなかったんだから。

 起こった物は仕方ないぜ」


 その様子を見てイシュは顔に青筋を立てながら口を開いた。


 「てめぇの役目は何だったか、もう一度口に出して見ろ!」

 「俺の役目は、アダムとイブを確保しておくことだ」

 「そうだ、人類が絶滅しないようにな!

 で、お前に任せた結果がこれだ!!」


 イシュが見下ろしている視線の先には少女達がいた。

 可愛らしい少女はボーイッシュな少女に抱きつき震えている。

 

 「ちゃんとカップルを連れてきた筈なんだがなぁ」

 ゾットはあっけらかんと答えた、彼に反省の二文字は無いようだ。


 「これで、ど~やって増えると言うんだ?

 足りないてめぇの脳味噌でしっかり考えろ」

 

 ぼぐっ!

 鈍い音がして鋭いイシュの蹴りがゾットの頭を捕らえた。


 「そこは大丈夫だ、俺が男だから……」

 ゾットが次の言葉を吐こうとするのを遮るようにイシュが彼を殴りつけた。


 「可愛い実の奥様を前にして、堂々と浮気宣言して、しかもロリだとカミングアウトする奴が何処にいるかぁ!!!」


 彼女の拳の暴風雨が彼を襲っている。

 ダース単位、いや回数と言うべきでは無いだろう、濃度で表す方が正しい程の拳がゾットを襲っていた。


 拳だけでない、

 蹴りも相当数混じっている。

 返り血で彼女がそまっていく。


 鬼だ。

 阿修羅がそこに居た。

 血にまみれた鬼神がゾットを叩きのめしてる。

 

 泡をふきながら地面に青向けに横たわったゾット。


 「はぁはぁ…いい加減にしろよ! この浮気男!!!」 

 イシュは荒く息を切らしている。

 


 その様子をおそるおそる伺う少女二人。

 猛獣か魔物に声をかけるように恐る恐る声をかけた。


 「あなた達は一体何者なの?」


 「私は女神様よ。

 ソコに転がってる男が、役立たずの魔王」


 イシュは微笑みながら口を開いた。

 返り血に染まり見た目はどちらが魔王か判らないが。


 「さっきの話聞いて居たけど、私たちじゃダメだったの?

 こんなにも愛し合ってるのに」

 少女二人は悲しい顔をしている。


 「いいえ、そんな事は無いわよ。

 私が結ばれない愛し合う二人が結ばれるように、あなた達の願いを叶えて差し上げますわ。

 それが私の役目ですから」


 「本当?」

 「神は嘘をつきません」

 「私たちは結ばれる事が出来るの?」

 「もちろんよ、でも少しだけ待ってね。

 お前はこの期に及んで何してんだ??」


 「え? 動けないからさ、こうやって移動を……」

 青向けに横たわりながらも少女たちの下に潜り込み少女達のスカートをのぞき込もうとしているゾット。

 その顔を無慈悲に踏みつけにしてイシュは更に続けた。


 「私は愛の女神イシュ、今は無理だけど少しお待ちなさい。

 もう少し大きくなったあなた達に女神の祝福を差し上げるわ」

 「ありがとう女神様」


 彼女は少女の頭を撫でながら、小さく微笑んだ。

 

 

 そうして時は流れた。

 これらの事は創世記神話として語り継がれていき、大破壊の有った時を紀元とする暦も始まった。

 蒼竜歴と呼ばれるものである。


次は蒼竜歴1970年、エリクシール誕生にまつわる話です。

ブレイクウッド家と秘薬エリクシールがついに交わります、

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