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今日から魔王始めました  作者: くろねこ
2章 秘薬エリクシール
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広場での再会 

かのんが暗い坂道を登り切りると、突然視界が拓けた。

其処には大きな広場が広がっている。


その広場は周りに綺麗な街並みが取り囲み、そこそこの広さがあった。

 夜も早いせいか、人もそこそこ行きかって居り、行きかう人々も、スラム街と違う感じのこぎれいな金髪の人が増えた感じがする。

 


「やっと台地の所まで付いたのかな?

月明かりに照らされた綺麗な街だけど、お店は何処かな?」

 かのんは呟いた。


 かのんが辺りを見渡すと、月明かりに照らされた広場の真ん中には木製の台の様な物がみえた。

処刑台のようであるが、かのんにはそれが何か解らないようだ。

その奥には、巨大な石柱が立っている。

傍には月明かりに照らされている女神像も見えた。

しかし、肝心の西風は見当たらないようだ。



街の様子に興味津々で街を観察している かのん。

後ろから追い付いて来たシルビア達が、彼女に声を掛けた。


「かのん、単独行動はダメよ、此処は危ない場所だから」

「シルビアさん、ごめんにゃん♪」

「にゃんじゃ無いだろ、かのん」


 かのんは、ネコ口で何時ものようにおどけて見せた。

しかし、シルビアは何時ものように笑顔を見せようとしない。

何時もとは違う真剣な表情を見せている。

 

 かのんも何かを感じたようだ。


 「かのん、あちらを見なさい」


 シルビアが山の方を指さした。

 広場から続く道の先には、月明かりに照らされた建物が見える。

 白亜の城と城の麓に有る大きな二つの宮殿だ。

 片側の宮殿には塔と小汚い建物が見えた。


「あの建物は、王宮と守護騎士様たちの本拠地。

そして、塔と小汚い建物が有る宮殿がスタンウエイ家のお屋敷よ」

「じゃあ、あそこにローズが居るのかな?」

「たぶんね…… 」


 シルビアは重い口を開いた。

彼女の話を聞いたかのんとセージは、今からスタンウエイの屋敷に乗り込む気は満々のようだ。


「今から押しかけるか?」

「それ良いかもね、

 ロイとかも、いきなり押しかけるとは夢にも思わないからね」


 バジルは静かに二人の背中を叩いた。

「ねえねえ、シルビアさんが話の続き有るみたいだよ」



 何時に無く真剣な表情のシルビアは、かのんとセージを傍に呼び寄せた。


「かのん、セージ此方に来なさい」

「どうしたんですか?」

「何だよ」

シルビアはかのんとセージを呼び寄せると、二人の頬を叩いた。


「ぱ~ん」×2

乾いた音が響いた。

唖然とするかのんとセージ。


「二人ともいい加減にしなさい、

 あの場所はただのお屋敷じゃないのよ!」


 「じゃあ、何なの?」

 かのんはシルビアに尋ねると、

 彼女は山の上にある屋敷や塔を指差しながらかのんやセージに説明した。

 

 「あんな感じの作りになっている難攻不落の牢獄なのよ、あんた達が正面から行っても捕まるだけよ」

 「牢獄……」

 「それに隣にある大きな宮殿はスタンウエイ家の屋敷、あのルークが居るのよ」


 シルビアの言葉を聞いた かのんとセージは顔を見合わせて震え上がった。

「あの親父が居るってマジかよ……」

「行かなくて良かったね……」


 「この町に住んでる人ならみんな知ってる事よ。

  あそこに行けば嫌でもルークと戦う事になるわね、

 かのんはルークと戦いたいの?」

 

 かのんは首を激しく横に振った。

 

 「しかもロイを逃がしちゃったからあたし達を警戒されているだろうしね」

 「ごめんさい、シルビアさん」


 かのんは申し訳なさそうにしている。



「もし、シルビアさんとルークが戦ったらどうなるの?」

 かのんは、恐る恐る聞いてみた。


 「確実にあたしが負けるわよ」

 「シルビアさんでも勝てないのかよ?」

 「シルビアさん相当強いんでしょ?」

 

 彼女はルークに勝てないとは平然と答えたのを聞いて、

 かのんもセージは驚きを隠せて居ない。

 シルビアはさらに続けた。


 「ルークとあたしじゃウエイトが全然違うのよ。

 速さだけなら勝てるかも知れないけど、筋力、オーラ後は全部で負けてるからね」

 「そうなんだ……」

 「負けたら捕まって、形だけの裁判受けて、其処にある処刑台で処刑かな?」

 シルビアは目の前にある処刑台を指差した。


 青ざめるかのん達。

 かのん達の怯えた表情を察したシルビアは厳しい表情のまま口を開いた。


 「安心しなさい、あんた達はあたしが護るから」

 「ありがとうシルビアさん」

 「オレは捕まるヘマはしないからな」


 かのんは遠くに見える塔を見ながら考えている。

 その塔の窓には人影のようなようなものが見えていた。

 (たぶん、あそこにローズが居るんだろうな……。

 直ぐに助け出すから待っててね、ローズ)




「胸は小さいけど、可愛い子ちゃん発見~~~」

 突然、下品な声がかのんの後ろから聞こえ、

同時にかのんの胸を揉む手が背後から現れて、彼女の胸を乱暴に揉みだした。

 「ぐにぐにぐに……」

 

 いきなり胸を強く揉まれたかのんは、胸に激しい痛みが走った。

「痛っ!」

 彼女は、小さな悲鳴を上げてしゃがみこんだ。


「いきなり何をするのよ ゆきなさん!?」

かのんが小声で呟いて振り返ると、其処には身なりの良い少年が居た。

「あなたは一体だれなの?」



 「オレはエアフォルク。

 君は可愛い顔してるけど、胸が小さいね、残念!

この前美人のオカマを引いて、それ以来貧乳は眼中にないんだよねぇ。

ばいばい」

 

 そう言うと少年は、次はシルビアの胸を背後からいきなり掴み、お尻を撫でまわした。


 「バジル、昼間から寝ぼけないでよ!」

 

 シルビアはバジルの方を見た。

 其処にはバジルがいた。

「僕じゃないよ」

 「じゃあ 後ろに居るのは?」


 振り向いたシルビアは、阿修羅と般若と足したような表情を浮かべている。

「ん???

 あんたは何時かの……」


 エアフォルクは気にする事無くシルビアの胸とお尻を揉み続けている。

 「サイズE+形も申し分なしで合格! お尻は……。

 筋肉質で尻尾あり!?」



 「お前は、かのんやシルビアさんに一体何やってるんだ?」

 セージはエアフォルクを睨み付けた。

 彼の顔は怒りに震えている。

 しかし、エアフォルクは平然としている。


 「俺を殴っても良いと思っているのか?」

 「あんたが何者かは知らないけど、

 かのんの胸の分だ、歯を食いしばれぇ!」

 セージはエフォルクを怒鳴りつけ、彼の顔を殴りつけた。


 「ぼぐっ!」

 鈍い音がしてエアフォルクは地面に仰向けに転がった。

 

 「お 俺はここの国王なんだぞ?」


 「それがどうしたのかなぁ?

 あんたは、この前も胸揉んでくれたよね……」

 

 シルビアはエアフォルクの近くに歩み寄ると、

 「バギッ!」 

 シルビアの鋭い蹴りがエアフォルクの脇腹に食いこみ、更に追撃の蹴りを入れると、

 彼はうめき声をあげた。


 「僕もママの分、叩かせてもらうね」

 バジルは、そう言うと隠し持ったお玉でエアフォルクの股間を叩いている。

 

 「ロイ! 護衛のロイは居ないか!!!

 こいつ等捕まえたら望みの褒美出すぞ、女でも金でも出世でも好きなだけやる!!!」


 かのんは、気を取りなおすとエアフォルクの傍に近寄った。

 

 「いきなり人の胸やお尻触るなんて、あなた最低よ!

 それに、ロイさんは来ないわよ」

 「どう言う事だ?」

 

 エアフォルクは事態を理解できていないようだ。

 苦悶の表情を浮かべながら、シルビアやセージやバジルに、タコ殴りにされている。

 

 「あたしが、さっきあの子を倒したからね」

 「マジかよ! あの役立たずのクズが!!!」

 

 事態をエアフォルクは理解したようだ。

 しかし、彼は不敵な表情を浮かべている。

 まだ何か隠し玉を持っているようだ。


 「エアフォルクさん、私たちも鬼じゃ無いから謝ればシルビアさんも辞めてくれると……」

 「はぁ? 

 俺が謝るって? 

 そんな訳無いだろ? アンヌちゃん出番ですよ!!!」



 エアフォルクはアンヌに助けを求めているようだ。

 それを聞いたシルビアは表情が変わった。

 騒ぎを聞きつけた町の人達が、かのん達の周りに大勢集まり始めている。

 

 「かのん、セージ、バジル、面倒なのが来そうだね……。

 あたしに付いて来て、一旦この場を離れるわよ」

 


 かのん達はシルビアに連れられて、

 集まり始めた人垣をすり抜けて広場の一歩裏手に早足で歩いて行った。



 広場ではエアフォルクが地面に転がって喚き散らしている。

 「あいつ等を捕まえろ! 女は生け捕り、男はその場でぶち殺せ!!!」


 月は騒ぎを余所に静かに照らし続け、夜風が何処からともなく美味しそうな匂いを運んでいる。

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