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今日から魔王始めました  作者: くろねこ
2章 秘薬エリクシール
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年季の差

 かのん達は宿の近くまで戻った。


 「げぇぇ~、あそこにシルビアさんが」

 「なんか凄く怒ってない?」


 そこには修羅が居た。

 地獄の鬼と貸したシルビアが部屋の窓の所で仁王立ちして居る。 


 「かのん、セージこんな時間に何処に行って居たの!?」

 「ごめんなさい、シルビアさん」

 「ごめん、シルビアさん」

 「あんた達、ここがどういう場所か判っているの?」

 


 必死で謝るかのんとセージ。

 かのんが鳴いて謝ってもダメそうな気配である。

  

 「ごめんにゃん」

 

 かのんはダメ元で可愛く鳴いて見せた。

 

 シルビアはあきれている。

 セージには効果は無いようだ。


 

 (シルビアさんが呆れたわ。

 よし、思うツボ♪)


 

 かのんの威厳が・・・。

 これ以上、下がらなかった。  


 「全く・・・。

 あんた達が無事だったから良いけどね」シルビアは笑顔を見せた。

 

 「本当にごめん、シルビアさん」

 「かのん、ここは敵の本拠地なんだから、慎重に行動しなさい」

 「気を付けるね、シルビアさん」


 「シルビアさん、さっき、あの女が居たぜ」

 セージが口を開いた。

 

 「あの女?」

 「れいなさんが店の裏でネコに餌をやってたわ」


 シルビアの表情が変わった。

 ドス黒い殺気と怒気の入り交じった気配を放っている。

 「へぇ・・・、生きていたんだ。

 その店は何処なの?」


 シルビアは双剣を体に付けながら話している。

 れいなを見つけたら、殺す気が満々のようだ。


 「シルビアさんは れいなさんをどうするつもりなの?」

 「そうだね、とりあえず かのんと同じ目に合わせようかな」

 

 「お願い、あの人を酷い目に会わせないで」

 かのんはシルビアに縋り付いて懇願した、

 彼女の目には涙が浮かんでいる。


 「ふぅ・・・判ったわよ、かのんには敵わないわね。

 かのんは何処までも甘いのよね、その優しさがかのんの良さなんだけどね」

 シルビアは呆れながら、殺気を収めた。


 「ありがとうシルビアさん」

 「勘違いしないでよ かのん」

 「?」

 「あの女を許した訳じゃ無いからね、少し時間を与えるだけよ」

 「判って居るわよ」

 

 かのんの顔に笑顔が戻った。


 シルビアさんがそういう時は、

 もう怒ってないのをかのんは知っている。

 セージはその様子を不満そうに見ている。


 「シルビアさんは、あの女を許すのかよ?」

 「ん~。彼女を見てからかな?」

 「やってられねーぜ」

 


 「あの・・・みんな良いかな?」バジルが口を開いた。

 「バジル、どうしたの?」


 「晩御飯は未だなの?

 ぼくは朝から何も食べてないのだけど・・・」



 そうよね、考えたら今日になって何も食べて無い訳だし。

 お腹がすくのもモットもよね。

 かのん達の腹の虫が、ムンクの絵画のような悲痛な叫びを上げている。


 「みんなとりあえず、何か食べに行かない?」

 「そうだな、町の上辺りで良い匂いしてたし、其処で美味しいものでも食おうぜ」

 「僕も賛成」

 「仕方が無いわねぇ、山の手にある 西風ゼフィロスでも行こうか?」

 

 「西風ゼフィロス?」

 「安くて美味しいと評判の、ここらじゃ有名なお店よ」

 「とっととその店に行こうぜ、腹ペコで死にそうだからな」

 「そうね、私もお腹ぺこぺこ」

 

 かのん達は西風へ向かって行った。


””””



 かのん達は路地の坂道を上った。

 上る途中で坂道を降りる人影に気が付いた。


 セージは、何時に無く真剣な表情で人影を注視している。

 先程のような、無邪気さは消えていた。

 

 その人影は、白銀の鎧を纏い腰にはどこかで見た剣を差している。

 くそまじめそうな表情を浮かべて。


 「おい、あいつ何処かで見た事無いか?」

 セージが口を開いたが声は震えている。

 彼は、腹の底から怒りが湧きあがるのを抑えきれないようだ。


 「この前居た子だよね、確かロイとか言うんだっけ?」

 シルビアは表情一つ変えていないが、冷たい殺気を放っている。



 彼の方が先に此方に気が付いた。

 「あの時の娘ですね、たしか名前はかのんさんでしたか」

 「そうよ」

 「其方から来て頂けるとは、犯罪者のあなたを捕まえに行く手間が省けました」

 


 ロイは冷たい視線でかのんを見ている。

 まるで、獲物を狙う蛇のように。

 しかし、かのんはその視線を気にしていない。

 

 「面白い事を言うじゃないの、かのんを捕まえてどうするのかなぁ?」

 シルビアはロイを睨み付けている。

 彼女の冷たい殺気があたりに立ち込める。

 

 「貴方方に教える義理はありませんね」

 「そう言われれば、そうだよねぇ」

 「力づくで行きますよ」

 「来なさい・・・」



 空気が冷たい。

 敵意と殺意のカクテルだった。

 

 先に動いたのはロイだった。

 剣を抜いた彼の体がふっと消えた。

 まるで「縮地」を使ったように。



 次の瞬間、彼の姿がシルビアの居た背後に現れた。

 しかし、其処には彼女の姿は無かった。

 「ど 何処に消えたのです?」

 

 「ここよ」

 「なに?」


 シルビアはロイの真下にうずくまっている。

 とっさの声にロイは全く反応出来ずに居る。

 彼は唖然として立ち尽くした。

 

 「その技は、水月と言って背後に回り込むあたしの技よ、

 知らなかった?

 自分の技だから、相手が何処に現れるかも全部お見通しなのよ」


 そう言うと、シルビアはスカートをまくり上げ、低い体勢からロイを空中に蹴り上げた。


挿絵(By みてみん)

 「うあぁぁ~」ロイの悲鳴が響く。

 

 「まだまだ!」

 シルビアは、落ちるロイにさらに追撃の回し蹴りを食らわせると、

 彼の体は路地の壁に叩きつけられた。


 「うっ・・・」

 低くぐもった彼の声が路地に響いた。

 

 「さようなら、おぼっちゃま。相手が悪すぎたわね」

 シルビアは彼にトドメの膝蹴りを鳩尾あたりに減り込ませた。


 「ぐほっ!」

 体を強く打ちつけたロイはぐったりしている。

 


 「あんた如きに、剣を抜くまでも無い」

 シルビアは冷たい目線をロイに向けた。


 一瞬の出来事に何も反応できないかのん達が居た。



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