屋根上の散歩者 幼き日の約束
どの位眠っただろう、かのんは頬を撫でる海風で目を覚ました。
窓を見ると、海まで続く街並みが夕日に照らされている。
どうやら、ほぼ半日は眠ってしまったようだ。
シルビアもセージもバジルも巨大なベットの上でまだ寝入っている。
「みんな起きてる?」
「zzz」
「みんなまだ寝てるのね・・・」
「かのんさぁ・・・、人が寝てるのを起こさないでよね?
あんたは。何時も自分勝手なんだから。」
セージが寝ぼけて返事をした。
「ごめん~ 起こしちゃった?」
「・・・」またセージは寝入ったようだ。
この口癖、ゆきなさんの口癖?
そんな訳は無い筈・・・。
でも、洞窟でゆきなさんが言って居た事と、
ウッドさんが話して事を合わせると、
もしかしたら、セージはゆきなさんなの?
「セージ・・・聞きたい事が有るんだ・・・」
「・・・」セージは完全に寝入ってるようだ。
昨日からの徹夜で歩いたのが効いたようで、セージ以外の二人はみんなよく寝ている。
仕方が無いよね、あれだけ歩いたんだから。
かのんが窓から外を見ると窓の外には隣の屋根がすぐ傍まであるので、
其処から屋根伝いに移動できそうだ。
かのんは隣の屋根に飛び移ると、屋根伝いに移動して見晴らしの良い所まで来た。
其処からは、海沿いから続いているスラムの景色が一望できる。
丁度、日没だったので海に沈む夕日が見れた。
「綺麗・・・」
かのんは、ふと呟いた。
ローズ救出じゃなくて、誰かとゆっくりできたらロマンチックなんだろうな・・・。
「かのん、お前こんな所に居たのかよ?
屋根を伝って移動するなんて、シルビアさんも真っ青だな」
いつの間にか、セージも屋根を伝って、かのんの近くまで来ていたようだ。
「そうだ、オレに聞きたい事って何だ?」
「変な事を聞いても構わない?」
「かのんは何時も変だから、いつも通りだろ?」
かのんとセージは屋根の上に腰を下して話し始めた。
「じゃあ、私から話すね、
私は転生して、この世界に流れ着いたの」
「だろうな」
「転生とか、驚かないの?」
「当たり前だろ、少し前なら驚いたかもだけどな」
「・・・」
「かのんが言いたい事は判ってる。
時期が来たら全部話すから、それまで待って」
「判ったわ、その時まで待ってるよセージ」
「じゃ、 かのん少し目を閉じててくれる?」
「良いけど、どうしたの?」
「内緒」
セージは、目を閉じたかのんにキスをした。
「セージ 何をするの!?」
「ふふふ、このローズ救出作戦が上手く終わって二人とも生きてたら、
考えてる事が有るんだ。
かのんから言い出した、昔の約束忘れた訳じゃ無いよね?」
「えっ?」
私が何か約束したこと、あったっけ?
でも、何か有った気がするな。
何だったんだろ・・・。
「えっ?
じゃないだろ、自分から言い出したんだからね」
「良いわよ、私が約束したんだしね」
「じゃあ、約束ね、
セージの口癖だと、約束だぞ。 かな?」
「やっぱり・・・」
「オレは、今は乱暴物のセージだからな」セージは照れながら話してる。
すっかり日も落ちて、心地よい海風がスラムの屋根の上を吹き抜けて行った。




