魔王と言う立場
かのんは、ステラの家に有る自分のベットで意識を取り戻した。
隣ではセージやバジルにシルビアにウッドの何時もの面子が、心配そうにかのんを見ている。
いつの間にか戻ってきたゾットも居る。
でも、ローズだけは其処に居ない。
「かのん大丈夫?」バジルは心配そうにこちらを見ている。
「平気よ」
「良かった・・・」
「シルビアさん、ローズは?
それにセージにバジルは無事なの?」
「かのん 間に合わなくて、ごめん・・・。
ローズを助けられなくて連れて行かれた・・・」
其処には泣きじゃくるシルビアの姿が有った。
あの後何が起きたか、薄れゆく意識の中で、
かのんはぼんやり聞いて居た。
あの三人に連れて行かれたんだろうと。
「かのん、お前に話して置く事がある。」ゾットは真面目な表情でかのんに話した。
「ゾット、何?」
「かのん、お前はローズを魔王軍を使って、救出に行くつもりなのか?」
「当たり前でしょ?
仲間が連れて行かれてるんだから、うちら総力で救い出すに決まってるでしょ?」
「当たり前だろ!? ゾットも勿論そうだよな?」
セージも頷いている。
しかし、シルビアは何かに気が付いたように俯いた。
暫くの沈黙が流れた。
「俺は大魔王として、魔王軍を動員してローズを救出する事を認めない」
「何故?
ローズは仲間じゃ無いの?」
「かのん冷静になれ。今お前の立場は何だ?」
「魔王かのんよ」
「そうだ、ここの組織のリーダーという事だ。
お前にはここの皆を守る義務があるのを判って居るのか?」
ゾットは冷たく言い放った。
「・・・だからと言って、ローズを見捨てろと言うの?」
「もし、あそこの王国と全面的に戦えば、みんな死ぬぞ。
セージも、オレも、シルビアも、ステラも、リーザの中の新しい命までな。
お前にそれだけの命を背負う覚悟有るのなら、止めはしない。」
ゾットのいう事は正論よ。
でも・・・
「どうしろと言うのよ!!」かのんは半ば自棄に叫んだ。
「魔王として、自分の立場を考えて行動しろという事だ。」
「かのんさん、ゾットさんの言う方が正しいですよ。
貴方は、もう此処のリーダーなのですから」ウッドも静かに口を開いた。
「かのん、泣きたいならあたしの胸貸してあげるから思いっきり泣きなさい。」
そう言うと、シルビアはかのんを抱きしめた。
「シルビアさん・・・。
仲間一人助けれなくて、何が魔王よ・・・。」
かのんは大粒の涙を流してシルビアの胸ですすり泣いている。
窓の外には白銀の三日月が浮かび、冷たい夜風が窓から吹き抜けていった。




