一かけらの勇気
遡ること数十分
城の外は月明かりが照らし塩気を含んだ風が吹き付けて草を揺らしている。
魔王の城からセージを追って走り出したかのんは、セージの後を追おうとしたが瞬く間に離されて
見失ってしまった。
「どこに行ったんだろ・・・」かのんは呟いた。
あたりを見渡すと遠くに明かりらしいものが見える、そこに向かってかのんは走り出した。
たき火の周りには先ほどの一行が数十人の手下を連れて酒を飲みつつ大騒ぎをしている。
「ゆうじ あの魔王の姿見ものだったよね~ あの情けない姿スマホで撮って
ツイッターに上げたかったよね、確実鬼フォロー来たよ
この村もこの村よね 魔王退治の一行と言うだけで家のタンスとかタルにある
お金とか酒とか食料とか取り放題なんだから魔王から村人まで
どれだけお人よしなのやら」
先ほどの女が酒臭い男に話してる。
「ば~か この世界にはガラケーすら無いだろ、どうやってアップするんだよ れいなちゃん
そもそも、あの魔王って俺が本気ならワンパンで倒せたぜ」
ゆうじと呼ばれた男が答えた。
手下の方は意味不明の会話に唖然としてる。
「冗談よ そんなもの無いの判ってるわよ、それにあの魔王って確実に雑魚でしょ
あそこまでやられても抵抗できないってゆうじに震えて抵抗できなかったじゃないの?」
彼女は答えた。
一同は大爆笑の渦につつまれた。
その瞬間
彼らの背後からセージが「ゾット様を馬鹿にするな!!」と叫びつつ飛び出し
れいなにとび蹴りを入れようとしたが彼女はさらりと躱し、ゆうじに命中した。
しかし 彼にはまったく効いてないようだ。
平然とした様子でセージを払い落とすと、彼の体を踏みつけにした。
「あの馬鹿魔王がどうしたって? 」
「ゆうじ可哀そうだからあんまり本気ださないでいいよ~
適当に痛めつけちゃって」れいなが微笑みを浮かべながらゆうじに話しかけた。
「馬鹿って言うな ゾットが本気を出したらお前たちなんて、」
セージが踏みつけられながらもがいてる。
さらに一言「おまえみたいな おばさんなんかオレでも負けないからな!」
「お おばさん?」れいなの顔色が変わった。
ぼぐっ! 鋭い音を立てて蹴りがセージの腹にめり込んだ。
ぐ・・ 苦しそうにセージはもがいている。
「私はまだ19よ おばさんって年じゃない 世間知らずにはおしおきが必要なようね!」
さらに彼女は鋭い蹴りを彼に食らわせ続けた。
セージはぐったりしてきている。
その光景を見ていたかのんは
「・・・なさい・・・」
小声でつぶやいた。
しかしだれも気が付いていないようだ。
今度は少し大きな声で
「やめなさい!」
その声にみんな一斉にかのんの方を振り向いた。