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空然

作者: Rink



僕の眼が映し出す世界は

汚く不透明で果てしなく混沌としていた。


人が、物が、感情が、息が、渦となって消えて行く。




この世界しか見えないなら、汚染しか写らないなら、

絶望しか、ないのなら




こんな眼


いらない。




自分の本音に気付いて3日、僕の眼は見えなくなった。







見えなくなったといっても、左眼だけなんだけど。


ああ、もう。




「おはよー。」

僕はいつも通り、眠りから目覚め、朝食を摂り、着替えて中学へ向かう途中だった。そのときに声を掛けられるのはそんなに珍しくもないが、今の僕はあまり声を掛けたくないタイプに見えるだろう。

と思ってたのに。友達は意外とチャレンジャーだった。


「さっきから何やってた?すげー面白かったぞ」

「うん、ちょっとね。寝かけてた」

なんでだよ、と友達は笑っている。もちろん僕は寝かけていた訳じゃない。


片眼のせいで距離感がつかめず、景色もぼやけて見えて

さっきから至る所で頭を打ったりしていたのだ。


片眼だけでもみえないとこんなに不便だと思ってなかった。

ふらふらくらくらするし、慣れないせいで右眼が痛い。


それでも、

渦巻いてはっきりした輪郭を見せないこの世界をはんぶん見なくて良いなら。

こんな眼なんてどうでも良い、と、思う。


僕の眼が見えなくなった原因はわからない。


即刻医者に言うべきなのだろうが、医者に診てもらっても治らないだろう。

そんな気がする。

そして、多分それは当たってる。


ど素人が判断すべきではないと思う。でもどうせ僕の眼だし、判断するのは自分で、僕の眼は僕の自由なんだからもう、いいんだ。


必要のない物は斬り捨てろ。


救えない物は忘れろ。


僕の眼は僕にとって必要のないもの。



そんなことを考えているうちに学校に着いた。

「じゃーなー」

クラスの違う友達と別れ、自分のクラスに向かう。

クラス。

ここだって、汚れて行き場を無くした二酸化炭素で溢れている。

息苦しいな。生き苦しい。

何故群れる、何故集う、何故

ここに生きていられるんだ、よ。


相変わらずのふらふらくらくらした足つきで自分の席に着き、俯せになった。

何も考えたくない。



結局生かされているんじゃないか。

結局、生きていないのと同義じゃないか。


なんでここに生まれてきたんだろう。

なんでここを選んだ。


選んだんじゃあなくて、何も選ばなかったのか?それ以外を、何も。


ここ以外を―――これ以外の選択肢、知らなかった。

最初から、知らなかった。

全部。

何も。

誰も。

教えてくれなかった。

知ろうとしてなかった。


僕が悪いのか。

僕が悪いのか。

僕が悪いのだ。



半狂乱、心の中で泣きながら、僕は寝た。

数学の時間、先生の怒鳴り声が聞こえる。





ああ疲れた。

朝は色んな事を考えた気がするし、何も考えず寝ていた気もする。

そんなに時間は経ってないが、ひたすら眠い。

疲労感、それに伴い、何故か焦燥感。


何に焦っているのだろう、自分は。



半日授業が終わりまっすぐ帰宅しようと思っていたが、

なんの気まぐれか、僕は賑わう商店街へと足を踏み入れた。

予想通り、すごくうるさい。

古着屋から流れる音楽も人の波も、全て僕を追い出そうとしている様だ。


そこで僕は、ひとつの異変に気付く。

さっきまではっきり解っていたふらふら感がない。

勿論左眼は見えていない。

慣れたのだろうか。

そんな、2時間ほどで慣れてしまうのか?

解らない。怖くはない。


「え?」

え?

僕の目の前には、白い女の子。

長くてぴょんぴょん跳ねている白い髪に、白い服。

あれ。いつのまに。


「ねえ、ねえ、君、左眼が見えてないね?」

その子が僕の左眼を覗き込むようにしながら、言った。

「私が助けてあげようか」

白色はにっこりと笑い、僕に選択を迫る。

「どうする、の、かな?」

変な所で区切りながら、何も言わない僕に呆れてとうとうぼんやりした輪郭の、つかみ所のなさそうな女の子はその場に座り込んでしまった。


「僕は」

ごくり、と唾を飲む。

僕は、

僕は、何だ。

「僕は、この世界と、この世界に住む人間が、嫌いだ」

僕の世界が嫌いだ。

そんなことを言ってどうする?

少女に何ができる?


何もできない。

無力な少女。


ではなかった。

「はい、じゃあこれあげるよ」

どこから出したのか、少女の手には奇怪な機械。

時計が減算でセットされていて、映画でよくみる、危険物の、いわゆる――

時限爆弾。

「は、」

手渡された。

「これで」

少女の顔には無垢な笑みが。

僕の手には危険な違法物が。

「世界を壊しなよ。」




僕はあの少女と別れてから直帰し、鞄の中の爆弾を取り出し机に置いた。

自分の部屋にこんな物が存在する日が来るなんて、思わなかった。

当たり前だが。


不思議なことに、少女と別れてからはまたふらふらし始め、帰るのにも一苦労だった。何故かはわからない。

これをどうしようか。


爆弾を手に取る。残り時間は23:30:19。

あと23時間半で爆発する。


あの少女は、「世界を壊せ」と言った。

それはこの爆弾が、世界を破壊する威力を持っていると言うことなのか。それとも、「僕にとっての世界」を破壊しろ、と言うことなのか。

どちらにしろ、これをどう使おう。

爆弾の処分を決めることにした。




















あれ、



あれ、ちょっと待て、ちょっと待て。

今日はおかしくないか。

可笑しくないか。

おかしい、ぞ。


なんで今日に限ってこんな奇怪な事が次々起こるんだ?なんで僕だけがこの状況に飲み込まれてるんだ?なんで僕がこんな目にあってるんだ?なんで誰も、あのこに気付かなかったんだ?なんで僕はここにいるんだ?何で僕は商店街にいったんだ?なんで僕はこれを持ってるんだ?なんでこれは進んでるんだ?


なんで?

こんなにも、冷静なんだ?

世界が消えるんだぞ?

僕の世界が消えるんだぞ?

両親も、友達も、先生も、隣の兄ちゃんも、他人も、

みんな消えるんだ。

破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ、破壊だ。

破壊、されてしまう。


「そんな、」


何か見えてない物が、あるはずだ。


どうしたらいい?


「ど、っ・・・・・どこかへ、行かなくちゃ」




僕は

見付けなくちゃ。





「・・・・・・ここ」

ここは、学校。夕方の、まだクラブ活動が終わってない、僕の学校だ。

紛れもなく、僕の学校。


ここにたどりつくのは、それなりに大変だった。

ふらふらくらくら、転んだりぶつけたり、急いでいたから余計に。


「綺麗な色だな」

消え行く夕日のオレンジが校舎の白に重なって、綺麗だった。そんな事一度も思ったことはないし、まずよく見たこともなかったから、僕にとっての小さな発見。


僕が嫌いな世界の色は綺麗で。

やっぱりそれを好きになることはない。


「おーい?どーしたー」

上から声が聞こえる。見てみると、3階の窓から顔をだした友達が僕に向かって声を出す。

その行為によって二酸化炭素がはき出され、僕は溺れそうになる。

浮遊する毒ガスで死にたいと、ふと思った。

「なにもないよ。あ、ねえ」

僕も友達に向かって声を出す。


「世界ってさー、好き?」

僕の質問に、しばらく黙る友達。

そして答えた。

「普通!」

普通かよ。



結局そのあとすぐに家に帰って、爆弾とにらめっこしていた。

これどうしよう。どこで使おうか。


翌朝、母親に適当な言い訳(頭痛)をして学校を休み、家を出た。目指す場所は、商店街。


「あ、おはよー」

あの少女にもう一度会う為にここに来たのだが、多分会えないだろうなあ、と思っていた。

しかし世の中は僕が思っているよりずっとずっと狭かったのだ。


「あれの使い道、考えたの?」

その少女は明太子専門店でやたらと大量に試食をしていた。

使い道って、もしかして僕は「要らないもの」の処分を任されただけなのか。

なんてことだ。

「いや、まだ」

少女はふーん、と昆布明太子を口に入れたまま喋り出した。

「使わないなら引き取ってもいいよ。今持ってこれるならね。てゆーかもう8時半だよ?あと5時間しかないんじゃん」


受け取った時間が昨日の午後1時半で、そこから24時間に設定されていたからあと5時間。


「・・・5時間もあればどうとでも出来るよ」

「そう?なら私もどっかへ行こうかな」

試食の爪楊枝を捨てて、少女は言った。

「今度は外国にしよう。ばいばい、頑張れ少年」

「あ、名前、お互い言ってないな」

そこで少女はちょっと考え込むようにする。


「お互い秘密でいいじゃん。名前なんてどうせ忘れるんだしね」

それもそうだ。記憶なんて次々注ぎ込んで、溢れ出して、消えてしまうのだから。抗うことなど、不可能だ。

少年と少女の淡い思い出も、いつかは美化され、消滅する。

最初から覚えようとしなければいい。


「じゃあねー」

僕は何も言わず、手を振った。



それから1時間、僕は休んだはずの学校へ来ていた。

正確に言うと学校の屋上。


僕はこの爆弾をどうするのだろう。

どうとでもするだろう。

考えるべき事。

僕の世界。



昔、入学してからこの学校で何があったんだっけ。


文化祭も、体育大会も、球技大会も、音楽会も。

全て僕が経験したことだ。

僕の記憶だ。

あのときは何でも、楽しかった。生きていることに苦痛を感じていなかった。生きたいと思ってた。

思ってた?

思ってたんじゃない。

今でも。

学校だけじゃなくて、


全部全部全部全部全部全部!

何が嫌いなんだ、僕は。

全部?

生き辛い。生き難い。そうしていたのは僕だった。

笑ってくれたのに。触ってくれたのに。

鬱陶しくなって、いとも簡単に切り離して、突き飛ばして、壊した。

代価を払うのは僕の方で、痛みを伴うのはこれからの道。

当たり前で難しく、足を踏み出せずに居たのは自分なのに。

自分なのに、環境の所為して。

自分なのに、後悔する振りして。

自分なのに、自分の所為にして。

それだけをして、あとは面倒くさくなって放り出した。









僕はこの世界を、 *****













ばいばい、よろしく、ごめん



























僕は結局爆弾を海に捨てた。

ふらつく足で海まで歩き、残り時間が30分を切った所で投げ捨てたのだ。

これは要らない、必要ない。

必要のない物は斬り捨てろ。

まあそれでも爆弾は爆発しなかったんだけど。

そんな気はしていた。

やられたなあ。


うん。

よかった。








これからも僕はここに生き続けるだろうし世界は何も変わらない。

変わらないんだ。


僕はまだ世界が嫌いだし僕のことも周りの人間も大嫌いだ。


でも、ちょっとだけなら、愛してみよう。

それを伝えたかったんだろう、なあ、少女よ。


矛盾はしていない。

僕はしっかりした足つきで、学校に向かう。








話の展開早いしごっちゃごっちゃしてます。

気にしないでくだs(黙

小説書いたのなんて初めてで戸惑いました・・・・←

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