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お嬢様は執事と買い物に、メイドはその監視に行きました~後編~

さて、長さを考えて、最後は少しハイスピードです・・・。

次回に繋がるようなところもありますよ~。

そんな感じの後編。

まず最初に辿りついたのはスーパーの前にある屋外のフードコートだ。

さまざまな屋台やファーストフードなどのチェーンが所狭しと並んでいる。当然、多くのカップルや家族が訪れており、宏助達は全く目立たない。

現在時刻は十時。麗の『早寝早起き』の鉄則に従って七時には朝食を取っている。少し小腹が空いてきたと言えなくも無い。

そんな訳で宏助は明に「どこかで何か食べませんか?」と提案しようとすると・・・・・、

「どこかで何か食べませんか?」

なんと明が宏助に提案してきた。驚いて明を見ると明は平然とした顔だ。微妙に顔が赤くなっているとも思えなくもないが・・・・・、とりあえず彼女も小腹が空いているらしい。近くにあったファーストフード店に入ることにした。

レジに行って、宏助はハンバーガーとコーラ。明はソフトクリームとアイスティーを注文する。宏助と明の注文する品のジャンルがことごとく違うのはこの際気にしない。

窓際の席を確保し、二人で向かい合わせになって座る。会話する間もなく品が届き、金額を払ってそれらを受け取る。

そのままお互い食事に入る。巻かれているソフトクリームを興味深そうに眺めながら恐る恐る舐めている明を見るとなんだか自然と頬が緩む。

自分もハンバーガーにかぶりつき、コーラで流し込む。程なくして完食し、手持ち無沙汰になった宏助は視線を自然と明に向けてしまう。

ソフトクリームも冬なのでなかなか溶けず、明の口によってだけでまだ半分も削られていない。しかも、コーンの下には更なるソフトクリームが広がっているのだが・・・・・、もしかしてコーンの上にのっかっているものだけだと思っているのかもしれない。

そんなことをぼんやりと考えつつ明を見ていると、

「宏助さん、もう食べ終わっちゃったんですか?良かったらこれ食べます?」

一度ソフトクリームを片手に持ちアイスティーを啜っていた明が声をかけてきた。

ソフトクリームも食べたいな、と思っていなかった訳ではないが、さすがに女の子が舐めたものを俺が頂くのもどうかな、と思ったので丁重にお断りする。

「す、すみませんが、それはちょっと・・・・・・・。」

しかし、明がここで予想外なことを。顔を俯けながら心底寂しそうに。

「・・・・・そうですか・・・・。私の口にしたものですしね・・・。仕方ないですよね・・・・。」

予想外の落ち込みぶりだ。これは困った。いや、確かに貴方が口にしたものだから・・・っていう理由は間違ってないんだけど決して汚いとかそういう意味ではなくてですね・・・・。などと頭の中で言い訳するが、やはり彼女をそんな表情にさせてしまったことで多量の罪悪感が生まれ、

「や、やっぱりいいですよ。俺実はソフトクリームも食べたいなーと思っていましたし。」

と言ってしまう。

案の定彼女はパァと顔を輝かせる。しまった、と思ったときにはもう遅かった。マズイ・・・・この状況だったら確実に彼女はあの恥ずかしい伝統的で典型的なラブコメのあのお決まりのシーンを再現してしまう・・・・。

「はい、じゃ、あーん・・・・でしたっけ?」

そう言って彼女はやはりとても恥ずかしいアレをやらせようとソフトクリームを俺の口に近づける。しかも言葉に疑問符がついた時点でこの行為が何を意味するのか彼女は理解していない・・・・・。

彼女を見ると今はニコニコとした満面の笑み。またあの笑顔を暗くしたくないし、もう食べると言ってしまったし、

(ええい。別に恥ずかしいけど悪いことじゃないし!こうなりゃ開き直ってやる!)

そして思い切り口を開ける。中に柔らかいものが入ってきて・・・・、いや待てこれは・・・・、

口を開けすぎたせいで彼女の指まで口の中に入れてしまった。入った面積は少しだったが。その柔らかくて暖かい指を・・・・宏助は舐めてしまった。


そのころ・・・、そのファーストフード店の少し離れたところ。たこ焼きの屋台の備え付けの椅子で、たこ焼きを監視と称して頬張っていた麗は、自分の目に移ったものを認識して持っていた爪楊枝で発泡スチロールの容器を貫通させる。

(あーん、て何やってんですかお嬢様!宏助さんもあの腑抜けた表情・・・。ドサクサに紛れて指も舐めたし・・・。)

心の中で悪態をつきつつ物凄い速さで爪楊枝を容器に乱れ打ちする。その怒りの表情と共に発泡スチロールを穴だらけにする行為は爪楊枝が折れるまで続いた。

しかし、ここで出て行くわけにもいかず、店を離れた二人の尾行を再び開始。そうしながら麗は考える。

(さすがにもうあんなことを起こさせるわけにはいかない。こうなったら前もってああいったイベントを阻止せねば・・・・。)

そして、スーパーやこの街道にある店舗やルートなどをタブレットで調べ始めた。


 (さっきからなんか見られてるっつうか・・・、なんか嫌な視線や気配を感じるんだよな・・・・・。)

宏助はスーパーで麗に言われた買い物リストの物品を様々な店舗を回りながら明と買ってゆく。

もともと大して多くの物を頼まれたわけでもないので、そろそろリスト達成だな・・・・とか思っていると。

「宏助さん!」

急に明に呼ばれる。何だ何だまた死神でも現れたか・・・・、と臨戦態勢になって明の方を向くと、

「・・・・・・このお店、寄ってもいいですか!」

「・・・・・・・・。」

明が足を止めたのは一軒の洋服店。宏助も入ったことのある大手メーカーだ。値段がお手軽で、まぁまぁいい服が買える、というのがウリだ。

やはり明も女性。こういうのにも興味があるのか・・・・、しかし明のことだからもっと一流のブランド物とか買ってもおかしくないが・・・・。まぁ、今日は渡された金額も多いと言えどもそんな一流ブランドの服を買うほどの金額ではない。だから寄ったのだろう。

「ま、別にいいですけど・・・。」

「そ、そうですか。良かったです・・・。」

明は喜んで早速入店。明後日の方向を見て、「宏助さんが来る前は服なんか意識したことなかったから麗の買うままの服を着てて同じような服しか持っていないし。今日のこれだって一昨日急いで取り寄せたものだし、やっぱり高級さじゃなくて親しみやすい服が売ってるこういうところで買わなきゃ。たくさん服も欲しいし、麗に貰った金額ならたくさん買えるわ・・・・。」などとブツブツ呟いている。

今日は休日だがまだ十時で開店したばかりなのかそんなに客数は多くない。気軽に足を踏み入れる。

当然、いつ何時襲われるか分からない明から離れるわけもいかず、明についてレディースの方へと向う。流石に男がこんなところにいるのは気恥ずかしいものがある。・・・・特に下着なんかがあるところでは。

目をあらぬ方向に漂わせつつ明が足を止めて服を吟味している間に先程から見られているような感じがする違和感に集中してみるが、やはり集中できるはずもなくやることがなくなる。

しばらく手持ち無沙汰に明の後ろについて店内をウロウロ回る。

明といえば、楽しそうに服を眺めながら、これいいな、あれいいな、と手に取ったり籠に入れたりして、いること小一時間。

そろそろ暇だな~、とか思っていると明が、

「少し試着してもいいですか?」

と聞いてくる。勿論依存は無くどうぞ、といって奥にある試着スペースに向かう。幸い、五つある試着スペースの内、一番手前の一つが空いていたので、その狭いスペースに明だけ入る。

ちょっと待っていてくださ~い。という言葉に彼女の姿が暗幕の裏に消える。いよいよ本格的に暇だ。

流石にここを離れるわけにも行かないし、かと言って、前を見ているとなんか布のこすれる音とか聞こえてしまうし、暗幕が揺れるのが気恥ずかしいしで、とりあえずあらぬ方向に視線を向けて、側にある壁に背を預ける。


 宏助は困っていた。明を待つこと数分。何故か店員に、若い女性をストーカーしていたそうだね。と話しかけられ、ちょっとこっちに来なさいと引っ張られる始末。ここを離れる訳にはいかないし、彼女は俺の知り合いだ・・・と説明するが取り合ってもらえない。その店員が女性だというのも厄介だ。おそらくこういった変態に対する嫌悪感は生半可なものではないだろう。しかし、宏助もここを離れれば、いつ誰が彼女を襲うとも限らない。

ここは・・・・・・

「すいません・・!」

謝りながら女性店員にタックル。少しよろけた間に服の陳列コーナーの陰に紛れ込むが、女性店員が他の店員を呼ぶ。客はそんなにいないが、いくら人外でも複数の店員を傷つけず逃げ回るのは難しい。ここはどうしよう・・・・と思っていると、

ひらめく。そうだ奥の試着コーナーは人があまりいない。しかも、誰か試着室から出ていれば、そこに入れる。流石に店員も試着室にはは入れまい。

そこに入って事がおさまるまで適当にしてればいい。よし・・・。

そう決めると隠れながら試着室に行くと、残念ながらまだ全員入っている。仕方ない、その試着室の奥のスペースに入るか・・・とそこへ入ろうとすると・・・・、

「見つけた!試着室のところよ!」

「・・・・げっ!」

随分遠いところから先程の女性店員がそんな声。すぐにドタバタという足音が聞こえる。

こうなったら・・・・・と一番手前にある試着室に入る。つべこべ言っていられない。まぁまぁ時間も経っていたし、明ももう着替えているかも・・・・と中に入るが・・・・・

「えっ・・・!?」

・・・・なんと明は下着姿だった。

声を出そうとする明の口を塞ぐ。すぐさま、店員たちがやってきたためだ。そのまま店員達は試着室の人に声で返事してもらうよう求めるが、明に返事してもらい、なんとかこの場を切り抜け・・・・・られない。

店員がまだ外にいるため、ここから出られない。しかし前には顔を朱に染めた明。俺が口を塞いでいるため肘やなにかにとても柔らかくて大きい膨らみが当たり、俺の目の前に広がる肌色の地帯。こんな明の姿に間近にいるのは初めてで、なにかいい匂いがする。なんだかおかしい気分になってきた・・・・・・。明は相変わらず顔を真っ赤にして宏助に何かを講義する目で見てきた。


 帰りの道を事情説明に使い、なんとか納得してもらう。「別に宏助さんならいいんですけど・・・・・」などのようなことを呟いていたが聞かなかったことにした。彼女も混乱しているのだろう。明にはなんとか納得してもらったが・・・・

何故か帰ると麗が凄いジト目で俺を見てきて、そのまま説教がはじまった。どうやら今日監視していたらしいが、明がそれを怒れないほど、麗の怒りっぷりは酷く、宏助はこっぴどくしかられた。

そんな中・・・今日のあの視線は麗さんのかぁ・・・・と妙に納得した宏助だった。

が、なんで俺、店員にあんなこと言われたんだろ・・・・?


 そのころ・・・、今日、宏助が感じた視線の『本当の発信者』は、その結果を報告していた。

「あのような方法で神条の娘を誘拐できるかと思っていたのは浅はかでした。」

それにある男が答える。

「別にいい。どうせ今日のはほんの試験観察だ。あの計画のためのね・・・・・。」

そういうと男はニヤリと笑う。

それはとても冷たい笑いだった。

どうでしょうか?

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