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親子


「う・・・ご・・・が・・・」


宏助は、いや、宏助の魂は悶え苦しんでいた。


既に宏助の魂は肉体から分離され、清明の持つあの魂の中に飲み込まれてしまった。


だが、宏助の魂には量は少ないが、聖気が備蓄されている。


その聖気を魂の外側に纏い、何とか侵食を防いでいる状態だ。


だが、所詮はもらい物。必ず聖気には底がある。


そして、清明の魂は聖気をも相殺する。そして、量は圧倒的。


呑まれた時点で、既に時間の問題、という奴だった。


正直、絶望的だ。宏助は、聖気で自分の身を護るのもバカバカしくなってくる。


どうせ、死ぬんだったら。


そんな言葉が宏助の頭を再びよぎる。


100%このまま生きながらえて死ぬのならば、0.01%生き延びるかもしれない方に賭けよう。


宏助はそう思うと同時に、自分の魂を分解し始めた。


聖気は自分の魂を操れば浄化出来る。


宏助の魂は、聖気が付属しているからあっさりと浄化はされないが、放って置けば直に浄化される。


だから明がいつも傍にいて、宏助の魂を元に戻してくれるのだ。


しかし、聖気を使えば宏助の魂をバラバラにすること位は出来る。


そして、聖気を使ってバラバラにした宏助の魂は聖気を纏う。


聖気を纏った宏助の魂は直に、自分の聖気で浄化されてしまう。


が、浄化されるまでの時間の間に明が見つけてくれれば、宏助の魂一欠けらでもあれば、元に戻る。


だからこのまま聖気を纏い、宏助の魂をバラバラにして飛ばせば万に一つも助かる可能性はある。


バラバラにすれば、スピードは速いし、聖気も纏っているから清明の魂から脱出出来るだろう。


清明にダメージも与えられるかもしれない。


しかし、宏助の魂をバラバラにすれば、その魂は宏助の管轄下を離れ、ランダムにどこかへ飛んで行ってしまう。


自我を持たないバラバラの魂は、放って置けば朽ち果てる。


だから宏助の魂は自我を持たず、宏助の意思では動かせない。


つまり明が助けてくれなければ、宏助は自分の最後の瞬間に、何を思うこともなく朽ち果てるだろう。


(それでも・・・・約束したからな・・・)


どうせこのままここにいたら死ぬんだ。


だったら自我がなくなろうとも、生きる可能性が限りなく少なくても、生きる可能性が少しでもあるなら、それに賭ける。


だから宏助は思ったことをあっさりと行動に移した。










「んぐわああっ!!」


清明は宏助を倒した優越感に浸りながら計画の最終段階に踏み切ろうとしていたとき。


突如、体内から体外へ、何かが出て行くような、猛烈な吐き気のような胸焼けのようなものが清明を襲った。


そして、次の瞬間、


ビュン!


音をたてて清明の体内から光り輝く何かがとてつもないスピードで飛び出て行った。


(あれは・・・伊島宏助の・・・・)


ビュンビュン!


「んぐわああッ!!!」


思考が猛烈な不快感によって止められる。


幾つも先ほどと同じようなものが清明の体内から出て行く。


連続して、連なって、単発で、少し間を置いて、間が長くなり、短くなり。


どんどんどんどんどんどん光を放ちながらそれは清明から出て行く。


「くっ・・・・止め・・・ねば」


動悸が治まった頃には清明の体内に宏助の魂が現存している気配はなかった。


「なるほど、ハァ、あれは伊島宏助の魂が分解されて私の体内から出て行ったようだな。


なかなかのうつけものと見える。そんな些細な抵抗をしても何の意味もないと言うのに」


どうせ清明が始末せずとも、自らの聖気で滅びるだろう。


清明そのものもさしてダメージは受けてない。


吐くときと同じで吐いてしまえばそれまでだ。


そもそも幾つにも散らばった宏助の魂をいちいち処分して回るなど手間がかかり過ぎる。


「さて、どうしたものか」


清明はとりあえず、今現在の神条家本邸の状況を見てみることにした。










「ええと・・・確かこんな感じだったような・・・・」


「ちょ、麗さん。勘でこんなことやらんで下さいよ」


残った数少ない仲間の一人が麗の呟きに少し慌てた様子になる。


「なりふり構ってられないのよ。時間もないしね、いくわよッ!」


そういって、麗は自分の顔の前にあの零の鎌を掲げる。


「ほら、あんたたちも」


他に死神の武器二つを手渡した仲間にも声をかける。


仲間も渋々といった感じで武器を掲げた。


「「「うらあああああああああ」」」


そしてそのまま三名は、武器に力をこめるように叫ぶ。


すると、武器が光を放ち始め・・・・


「な、なんだアレは・・・!?」


「構うな、いけぇ!」


多少ビビリながらもこちらに向かって駆けてくる敵に向かって、氷と、風と炎が放たれた。


それぞれの持つ武器から死神たちが得意にしていたエネルギーが出てくる。


風は突風となって敵を地面に押し倒し、


炎は敵の人外の身体をも焼き、


氷は相手の動きを完全に封じる。


「こ、これは・・・・・」


麗は驚いていた。


この武器の強さに、ではない。


自分たちがこうも簡単に扱えたことだ。


てっきり死神だけが扱えるものかと思っていた。


などと、思っていると、


麗以外の武器を持っていた二名がよろめいて、そのまま地面に倒れ伏してしまった。


「ど、どうしたの!?」


想定外の事実に麗も駆け寄ろうとするが、何やら足がふらふらする。


「やっぱり人間に扱うにしては少し難儀ね」


麗は明の側近だったから霊能力は多少なりとも上がっているが。


それでも一発でこれだ。もう何回かこの武器を使えば麗も厳しいかもしれない。


「い、いけます」


「私もです!」


「・・・・!?」


見ると男女のSPのペアが倒れ付した仲間から武器を渡されている。


麗が渋い顔をして二人を見ているのに気付いたのか、こちらを見上げ二人ともニッコリと笑った。


「今ので大分片付いたでしょう?」


「これを使う以外に私達に道はないんですよね」


確かにそれはそうだ。もう銃弾では相手にさしてダメージは与えられない。


「大丈夫なの?」


「「いけます」」


二人の揃った声に、麗は頷くしかない。


そして、再び目の前の敵と対峙する。


神条家本邸SP勢残り、50名


神条家別邸SP勢残り、5名










精神を集中させる。目の前にある魂の渦に意識を傾ける。


魂の渦には、真の聖気が大量に入っている。


これは、先ほど真の聖気を浴びた死神たちがこの中に入ったからだ。


と、いうことはこれから生まれる膨大な量の聖気は、元・真の聖気という訳だ。


勿論、自分の聖気は身体から離れても操れる。


しかし、量があまりにも絶望的過ぎる。


これだけの聖気、いくら自分のものだったとしても操りきれない。


だから、この魂の渦そのものに意識を沿わせ、聖気をコントロールしようとする。


魂の渦は近づけば自分の魂が持ってかれかねないが、自分周辺の聖気位は真が操った為、吸い込まれはしない。


問題は、この魂の渦全体の聖気全てを制御するのは正直、厳しい。


それでも、諦める訳にはいかない。


だから、真は全神経と意識をこの聖気にそぞきこむ為、瞑想を続ける。










やはり明の方も劣勢だった。


明の霊能力のお陰でパワーアップした佐多兄弟も、目の前の総帥から放たれる攻撃を防ぐので精一杯だ。


明は二人のパワーアップに集中しているので必死。


倒すなどとは到底不可能な話だった。


「明様、少しキビシイです!」


「同じ意見!」


「しかし解決策は今のところ何もありません!


ひたすら耐えてください!」


総帥から放たれる黒々しい魂を跳ね除けながら、必死に反撃のチャンスを伺うが、なかなかに厳しい。


そこで、


びゅおッ!


「明様!」


「え、おいッ!」


突如として自分の父親から放たれる魂が増加し、明を襲った。


突然の増量に、佐多兄弟も反応出来ず明はノーガードだ。


しかし、明に当たる寸前、ギリギリでその魂はそれ、明の背後に轟音をもたらす。


ー『中』に来い。二人で待ってるー


すると、魂が明の近くを通るのと同時、謎の声がする。


いや、謎じゃない。この声は、


(父の声・・・・)


何度も聞いたことのある父の声。


しかし、今は虚ろな目をしている父を見ても、何も変わっていない。


死んだようにそこに佇む父がそこにはいるだけ。


でも確かに今、父の声を聞いた。


『中』と言っていたが、それはこの魂の中ということだろうか。


それなら罠の可能性もある。この中に入ったらひとたまりもない。


「佐多兄弟さん!少し目を瞑っててもらえますか!?」


「「へ?何で!?」」


「いいですから!!!」


「「はいッ!!!」」


それでも明はゆく。何故かあの声に恐怖感は感じなかったからだ。


佐多兄弟に目を瞑っててもらったのは二つ理由がある。


一つは、明が幽体離脱を行ったら裸同然の姿になってしまうから。


もう一つは、幽体離脱して父の魂にわざと呑まれるなど、二人に見られたら止められるに違いないからだ。


「ごめんなさいね」


そう言って、目を必死で瞑っている二人を見る。


そして、それをチャンスといわんばかりに襲ってきた清明の魂に、幽体離脱してわざと呑み込まれた。


明の魂は完全に身体から抜け出し、魂が抜け出た肉体はその場に倒れる。


佐多兄弟がその音で思わず目を開けてしまったときには、明の魂はもうその場にはいなかった。










(呑まれちゃいそう・・・・・)


明は魂で清明の魂の中に入ったはいいが、一瞬で清明の魂に喰われそうになる。


慌てて魂を遣って防御するものの、やはりなかなか無理がある。


やはり罠だったのか、このまま私は死ぬのか、と思っていると、


「・・・・ッ!!!」


明の腕を半ば強引に誰かが引っ張った。


引っ張られる感覚、移動している感覚。驚いて目を瞑ってしまっていた。


そして、引っ張られる感覚がなくなったところで、おそるおそる目を開けてみると、


「やあ、明。久しぶり」


「大きくなったわね」


両親が目の前にいた。


「わあああああ」


驚いて数歩下がる。


周りを見渡すと、さっきの黒々しい魂の場所とは違う、明るくて暖かなドーム状の場所だった。


明の母と父はニッコリと微笑んで明を見ている。


母は死んだ当事のままの姿で、父も今より数歳若く見える。


二人とも魂の状態なのか裸だった。


とりあえずあまり直視しないようにして(特に父の方)、尋ねる。


「私をここに呼んだのはお母さんとお父さん?」


「そうよ。一瞬だけお父さんの身体を操ってメッセージを伝えたの」


「よかったよ。がんばったかいがあった」


「なんでここにいるのよ!?」


「まぁ、これは私の肉体だ。多少なりとも侵食されていない場所位は残っているんだよ」


「ちなみに私は、死ぬ直前に、この人の身体に魂の一部を飛ばして憑依させたの」


明の疑問に流れるように答える二人。


そうか、まだ父親には侵食されていない部分があったのか。


「二人とも大丈夫なの!?こんなところにいて」


「正直大丈夫とは言いがたい。もう直お前をここに呼んだここでここも侵食される」


「でも、どうしてもアナタに伝えたいことがあるの」


二人とも以外と余裕そうだが、その表情は真剣だ。


「私達はアナタに何にもしてやれなかったでしょう」


「だからせめて、最後に何かしようと思って」


そこで、明の限界が来た。


明は泣きながら両親に抱きつく。


「また会えて良かった!!!!」


両親はそう言うと困ったようなうれしいような顔をした。


「そのまま両親は自分を抱きしめ返す。


しばらく親子の抱擁が続いた。

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