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しかと聞こえる


「う・・・う・・・・うわあああああッ!!!!」


ブワン!と、空気が大きなうなりを立てて、蘭が向こう側の部屋まで吹き飛んでいった。


そのまま鉄筋コンクリート造りの壁に激突し、倒れこむ。


しかし、その蘭はまだ意識があり、よろよろと起き上がった。


「何故・・・?」


「うん・・?」


相手に聞かれた内容のことを、知ってはいたがわざとはぐらかす。


「何故、『本当に殴らなかったか』と聞いているのよッ!!!」


殴らなかった。そう、俺は蘭を殴らなかった。殴れなかった。


思い切り腕を振りかぶり、全力で拳を前に突き出した。


が、拳は蘭に当たる直前で、『寸止め』していた。


拳はその勢いを制止されたことで拳は当たらなくともその勢い・・・・つまり風圧だけが蘭を捕らえた。


勿論、宏助の全力の拳なら、風圧だけでも常人なら全身粉砕骨折レベルだが・・・・・


蘭の場合はただ吹き飛ぶ位のもので済んだ。よろめいたのは吹き飛ばされたショックでだろう。


が、そんな御託を妹にベラベラしゃべるつもりもない。


宏助は大事なことをはっきりと蘭の目をまっすぐに見て告げる。


「大切だと・・・思っているからだ」


「・・・・・・」


蘭が少し困惑した様子になっている。


自分でも言っていて少し気恥ずかしいが。


「大切なんだよ、お前が。


世界でたった一人の俺の妹で、やっぱり始めてこの力を使ったのもお前の為で。


俺は明さんを護らなきゃいけないんだけど・・・・それでも、お前も護りたいんだ。


どんな理由があれ、お前を直接、この手で殴りたかない」


「何甘っちょろいこと言ってんのよ!


やっぱり覚悟なんか出来てないじゃない!


私はあなたとは違うんだか」


「なんで、泣いてるんだよ?」


「・・・・・ッ!」


蘭がハッとなり、自分の頬に手を当てる。


確かにその頬には一筋の涙が流れていた。


だから、宏助は言葉を紡ぐのを、やめたりしない。


「覚悟?出来てるよ。


お前も含めた俺の大切なもの全部を、護る、覚悟が」


蘭が何かを言いかけたとき、フッと蘭の全身から何かが抜けていく気配。


とても禍々しくて黒い・・・・・清明の魂。


宏助が拳を出したときに、何もしない訳がない。


既に蘭の全身に向けて、聖気を飛ばしていた。


聖気は、蘭の魂ではなく、現在蘭の魂の主導権を握る清明の魂を、本体として認識し、浄化したのだ。


明に先ほど教えてもらったことだが、すぐに実践できた。明さんグッジョブ。


そんなことを考えつつ今にも倒れそうな蘭から出て行く清明の魂を見つめる。


清明の魂は白い光となって空へと昇っていく。


そして、清明の魂が完全に蘭から出て行ったとき。


「・・・・・・ん?」


蘭の口が大きく動く。何かを伝えようとしているように。


最後にニコッと微笑んで、蘭はその場に倒れこんだ。


しかと聞こえる蘭の呼吸と、鼓動。


そして、


「『バカ兄貴、がんばれよ』か・・・?あいつらしいと言えば、あいつらしいか」


しかと聞こえる、大切な妹のメッセージも。










「んがぁッ!!!」


「「・・・・宏助・・ッ!」」


「宏助さん・・・!?」


宏助がお世辞にも優勢とは言えない明さん&オマケどもの加勢に入ってやったのだが、何故か驚かれる。


「何、驚いているんですか・・・・。早くコイツ倒して清明ハンティングに行きましょうよ」


とりあえずコイツ(明の父親、神条総帥。実は滅茶苦茶偉い人。今現在魚が死んだ目をしている)は例の如く


蹴り飛ばしたのでいいと(いいのか?最近有名人ばっかに暴行加えてるぞ)して・・・・・


「妹さん・・・・蘭さんでしたっけ・・はいいんですか・・?」


「ああ、アレ(蘭)なら大丈夫ですよ、ホレ」


明さんが心配そうに聞いてくるんで部屋の隅の方に寝かしておいた蘭を顎で指し示す。


とりあえず明さんは安堵の息を吐くものの。


「「だからってお前が何でここに来るんだ」」


・・・・・今度は非情に面倒くさい二人組み(息ピッタリ)が絡んできやがる。


正直コイツらはどうでもよくて今にも向こう側の部屋まで蹴り飛ばしたにも関わらず起き上がりそうな総帥の方をなんとか


したいのだが・・・・・・。


ほっとくという訳にもいかないので視線を総帥に向けたまま適当に二人に答える。


「いやいや、お前らが劣勢だから助っ人として来たんだろ。明さんやられたら元も子もないし」


「「俺らは大丈夫だ。ちっとも劣勢じゃない」」


「はぁ?優勢の片鱗も覗かせていなかったテメエらがこのまま闘って明さん護れる訳ねぇだろ。


アイツぶっとばしてからでいいだろ、清明は」


マズイ、そろそろ総帥が起き上がりそうだ。こんな無駄話をしている暇もない。


「「おい、宏助。時間が無いんだ。さっさとここを去れ!!!」」


「んなこと分かってるよ・・・・。だからアイツを瞬殺しようって話を・・・・・」


「「テメェまだわかんねぇのか・・・!?」」


「・・・・?」


二人がやはり息ピッタリで今度はかなり真剣に説教してきたので流石に宏助もそちらを向く。


すると、真顔を通り越して恐い顔をした二人がこちらに迫ってきて「うわ何だお前ら」そのまま胸倉でも掴まれるかと


思ったとき・・・


「もういいですよ」


「「・・・・!!!」」


「私から話します。どいててください」


明からの制止、さらに有無を言わすず交代を命じられた二人はすごすごと引き下がり、視線を総帥に戻す。


そして、代わりに宏助には明さんの視線が向けられることになった。


「あの~・・・・話って・・?」


少しいつもより恐いし、オーラを出してる明にやはり宏助もすごすごしていると。


「あなたはここにはいりません」


やはりとんでもない辛口コメントが飛んできた。


「はい・・・?」


耳を疑う。何故なら、ここには絶対に俺が必要だと思っていたからだ。


「あなたはここにはいる必要はないと言ったんです。


あなたは清明のところに行って下さい」


「はい・・・・?」


やはり、首を傾げる宏助。疑問、疑問、疑問。今の状況だって到底優勢と言えるものじゃない。


「ここは大丈夫です。二人が私を護ってくれます」


頷く二人の背中が見える。明の真面目な顔が見える。しかし、宏助には分からない。


「強がらなくていいですよ。今の状況、俺が絶対いた方が・・・・」


「宏助さんがいかないと駄目なんです!」


俺の言葉は明さんの声で遮られる。マズイ。総帥が起き上がり始めた。


「清明本体がおそらくここにいる敵を操っています。


しかも何やら集会場でも怪しい動きをしています。


宏助さんだけなんです。今あそこにいけるのは」


確かに俺以外は全員交戦中で手は離せない。しかし、俺がいなくなれば・・・・。


「宏助さんがいなくなっても清明を叩けば、こちらの敵の動きが鈍くなります。


結果的に状況を覆せます」


「でも・・・・」


「でもじゃないです!やってください!」


明の必死な今にも泣きそうな顔。今の彼女は俺に早く行けと告げている。


でも、きっと本心では(おこがましいかもしれないけど)離れたくない、って思ってるんだろうな。


それが分かっているからこそ、宏助はこう言う。


「分かりましたよ・・・・。人遣い荒いんですから。いきますいきます。いけばいいんでしょ」


明が無言で「うん」と頷く。今にも泣き出しそうだ。


宏助は最後に、


「約束、忘れないで下さいよ」


「お互いにですけどね」


そう告げて、明の答えを確認し、


ダダッ!


次の瞬間、一度も後ろを振り返ることなく走り出した。


その後には水が地面に落ちる音・・・・二つ。










「この裏切り者がぁあああッ!」


零が自分の腕に纏った剣を象った氷で攻撃してくる。それは背後からの攻撃だが真は軽くかわして、


「その台詞はもう聞き飽きたわッ!罵り言葉のレパートリーもうちょい増やせッ!」


「・・・・んぐあッ!」


聖気を纏った肘打ちで軽く吹き飛ばす。


「おらああッ!」


すると今度は先ほどまで対峙していた有馬が風を纏いながら槍を突き出してくるので、


「邪魔ぁッ!」


「!!!・・・嘘だろッ」


聖気を纏った今度は拳で遠慮なく槍を下方向に向かって殴りつける。勿論、拳には傷一つつかない。


「こうだッ!」


そのまま槍を放さなかった為に前かがみになって隙だらけな有馬の腹に一発、重い聖気を纏った蹴りを繰り出す。


「うぐッ!」


しかしそれでもまだ槍を放さず、逆に槍を地面に刺してそのまま勢いを殺しながら吹き飛ばされていったのは少し関心する。


そのまま槍を放させて武器を奪おうとしたのだが、失敗だ。


真はちっ、と悪態をついてから今度はサイドから攻めてきた焔の相手をすることにする。


「らあああッツウウウウウツツ!」


炎を纏った斧を横振りに真にぶつけようとしてくる。そしてその斧はそのまま真の腹に直撃した。


「んぐあああッ!」


「「「よっしゃあ!」」」


死神トリオがそれぞれに歓喜の声を出しているのが分かる。初めての攻撃のヒットだ。


しかし、その異変に最初に気付いたのは何であろう攻撃者本人の焔だ。


「・・・・・・んんん?」


斧が動かない。連続攻撃でも仕掛けようと思ったのだが全く斧が動かない。


「おい何してんだ焔、さっさと止めを刺せよ」


「・・・・・動かない・・・・」


「動かないだってぇ?そんなことあるはずが・・・」


そこで有馬も言葉を止める。顔がみるみる青ざめていく。(元々顔色がいいとは言えないけど)


零も同じような感じだ。(元々顔色が以下略)


そして当人の焔にいたってはブルブル振るえ始めている。


寒いからではない。真が何も無かったような顔でこちらを見てくるからだ。


そう、直撃したのは見せ掛けだけで本当はその斧をがっちりと真は掴んでいた。


呻いたのはその衝撃だ。勿論どこにも傷一つついてないし炎を纏った斧を触っても火傷すらしていない。


「お前ら操り人形じゃ・・・・俺には勝てねぇよ・・」


「焔!さっさと止めを・・・」


「無理だッつてんだろ。無理無理無理無理。俺にゃあ勝てない」


「有馬・・どうやら俺たちでいくしかないみたいだぜ・・・」


「よし、焔!火力最大だ。全員の全力でこの裏切り者を叩き潰す!」


「了解だ・・・・・・最大火炎・・・『地獄焔』!!!」


斧からとてつもない量と温度の火が漏れ始め周囲の壁や床が解け始める。


真がしたのは服を聖気でコーティングすることだけだった。(全裸オチはごめんだ)


「絶対零度ッ!」


「疾風迅雷ッ!」


しかしその間にも有馬は槍をとてつもないスピードで俺に突き出し、零はとてつもなく冷たい冷気を俺にぶつけてくる。


そして、炎、風、氷の三つの攻撃が俺に直撃する寸前・・・


「言っただろ。俺とお前らじゃ・・・・戦う理由も覚悟も違うんだよッ!」


そう告げて全身から聖気を放出した。










「ええッ?真がどっか行ったですって!?」


麗は銃弾を的確に狙いを定めて相手数人に発射する。的中率50%と行った所だ。


外した他の敵は麗以外のSPが対処する。他のSPでは的中率20%、よくて30%と言ったところだ。


ようするに今、麗達は分が悪い。


元々数十人しかいないのに、相手は数百人単位だ。


しかも全員人外と来てる。いくら聖気を込めた弾でも、当たらなければ何の意味もない。


しかし接近戦では勝つことはほぼ不可能でギリギリまで引き付けて短距離で撃つしかない。


それでも麗達の人員は次第に少なくなっていた。


「んぐあッ!」


「うごあッ!」


やられた仲間の名前を叫ぶ暇もなく、ただ仲間の倒れるドサッ、という音。


また二人やられ、いよいよ二十人前後。分析班はほとんどやられたと麗は計算した。


もともと戦闘には慣れていない。よくやったと思う。


手勢が減るのは良い事態では確実にない。人手がなくなることは勿論、相手の士気も上がってしまう。


戦闘班も苦戦し、今は何とか防いでいる状況だ。


だから、真があの死神三人を瞬殺すれば、こちらに真が加わり一気に優勢になると思っていたのだが、


・・・・その頼りの真がたった今さっきいなくなったという連絡が部下から来た。


「・・・もうッ!あの馬鹿ぁッ!」


「ちょ!麗さん!乱射は!」


銃口を滅茶苦茶に振り回してイライラを紛らわす為に乱射。


的中率は60%。意外と高いその結果に少しイライラが解消される。


「・・・で、あの馬鹿がこの超大事で緊迫した場面に勝手に出てったということぁ、よほどの理由があるんでしょうね?


もしなかったら・・・・・」


と麗は後ろに積み重ねて置いたバズーカを肩に担ぐ。


反動がキツイし、一発しか放てないので使うのをためらったのだが仕方ない。


「いや、それがたいしたことは告げずに勝手に


ズガァアアン!!!


・・・・・」


「うらああああああッ!」


バズーカの爆煙で視界を曇らせマシンガンをぶっ放す。一応、これ作戦。


的中率70%と言うところだろうか。少しスッキリした。


「で?勝手に出てったって?ああもうムカつく私のこと何だと思ってんのよ


ズガアアアン!


ドバババッババッババ!


・・・・・で、たいしたことは、ってことは何か言ったのよね」


またもやバズーカとマシンガンのコンボを敵に浴びせながら聞く。


的中率は少し落ちて65%と言ったところだろうか。


「・・・・・え・・・ええ。まぁ、一応は」


「で?何言ったのよ!?早く教えて!」


おっと相手がいよいよキレてこっちに走ってきた。早い。こりゃ少しヤバイ!


「それが・・・・『屋上に行ってくる。こっちが一番ヤバそうだ』って」


「・・・・・意味分かんないわよぉ!!!」


麗が全員の気持ちは代弁しながら叫んで接近中の相手に思いっきりマシンガンの銃弾を雨のように浴びせた。


命中率・・・・100%


「帰ってきたら絶対ぶっ放してやる!」


その意見に本気で皆が戦慄したのは言うまでも無い。

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