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開幕


「おい、これはドコに運べばいいんだ!?」


「それはホテルの201号室だと言っただろ!もう3回目だぞ!」


「そうか、わるかったな。じゃあ、お詫びに う・け・と・れッ!」ビュッ


「うおおおおおいいい!」グボハッ


「テメェ・・・・荷物を思い切り投げる奴があるかッ!」


「知るかば~か!俺が3回同じこと聞いたくらいでキレやがって!」


「完璧に自分が間違えたことの腹いせじゃねぇか!」


・・・・・神条明保護神条財閥別邸担当SP班は、今、猛烈に忙しかった。


六日の中、四日間を遊び尽くし、目分量で二日で終わると断定していた集会の総準備のせいだ。


以外に、というか普通にやることは半端なく多く、果てが無い。


集会で使うであろう名札に、礼服。挨拶の為の礼状や、袖の下、お土産など様々な準備。


しかも、対死神や、神条財閥の不穏な動きがあるのでそれに対する武器の補充や訓練も怠ってはいけない。


そんな訳で、やる課題は山積み。時間は、少なめ。最悪の事態だ。


麗と明は、集会でのスケジュールや計画を話し合う為に部屋に篭っている。


宏助と真は貴重な労働力ということで、主に力仕事だ。


具体的には、神条家本邸に運び込む、全員の荷物や、武器、食材などを纏め上げ、それを運ぶこと。


しかしこの二人で作業など嫌なことはない。


ほっておいたらものの数秒で険悪なムードというのは、なかなか凄い。


そんな険悪ムードを過ごしながら、SP全員や明、麗から荷物を収集し、確実に纏め上げていく。


そして、ようやくひと段落ついたのは、明に呼ばれた夜の十時だった。


麗が、明の礼服を見て欲しいというので呼ばれたのだ。(勿論真もセットだ)


二人でドアをノックして入ると・・・・


「あら、いらっしゃい」


「あ、宏助さん!どうでしょうか・・・これ?」


「・・・・・・・・・・・」


「宏助さん・・・・?」


「・・・・・・・・・・・」


「・・・・宏助さん・・?(おこ)」


「・・・・・・・」バタッ


「宏助さ~ん!」


「あ・・・アブねえ・・・。意識が一瞬フェードアウトしかけた・・・・」


「一瞬ていうか・・・完璧にフェードアウトしてましたよね」


「完璧に明さんの魅了にK・Oされてましたよね・・・?」


「え・・・?そうなんですか宏助さん?ていうかどうなんですか?実際?」


「いやなんかもう凄くいいというか自分の言葉じゃ表せないくらい凄すぎて意識がなくなっても当然みたいなもうとにかく」


「綺麗だそうです」


「直訳ありがとう、麗」


「・・・・・・・・」


語っていた俺を一瞬で切り捨てた麗。非情にも程がある。


でも実際、明の礼服は凄かった。


ドレス調・・・というかドレスなのだが、ほどよい派手さ、お洒落度で、明さんの控えめな感じに合っている。


床につくかつかないかギリギリまである裾(と呼ぶのはおこがましい)に、包み隠せない大きな二つのARE。


肩やうなじは露出されていて、それがまたほどよい露出で奥ゆかしい。


最近露出が多いものばかりの明さんを見ていたので、たまにこういうお嬢様らしい明さんを見ると、「さすが」と言いたくなる。


髪の毛は団子に結ってあっていかにも高級そうなかんざしがそこに刺さっていた。


「まぁ、何はともあれ・・・・」


とてつもなく似合っていたし、綺麗だった。


そう言えないのは、やはり俺がチキンだからだ。










「・・・・・あらためて思うけど、広いなぁ~」


「お前、ハワイに来てからその台詞何回目だよ・・・・・」


宏助の度重なる同じ台詞に、真も呆れかえっている。


「いや、もうお前・・・それにしたってこれ広すぎるだろ」


宏助の目の前には、正門と、その横に丁寧に彫られた文字・・・「神条」。ここが神条家本邸だ。


正門からしてもう次元が違う本邸は、さすが、といわざるを得ない。


鉄で作られた古風の正門の横にはかなり遠くまで続いてる高いコンクリの壁に、上には鉄線が張ってある。


正門の上に、見張り台が左右にあって、そこにはSPとおぼしき若者二人が今、麗と話している。


しばらくすると正門がー自動式だろうかー音もたてずにスッと開いた。


中に入るとまた思わず感嘆の声をあげてしまう。


「・・・・・はぁ」


最早突っ込みもない真を放置し(放置されているのはこっちか?)、屋敷全体を眺める。


別邸とは比べ物にならないほどの庭。目の前にはかなり幅をとった車道がぐるりと中心にある大きな噴水を囲っている。


噴水も先程の正門と同じ位の高さで、水は見張り台くらいの高さまで上がっている。


ロータリーのようになった車道の傍らには、全面新緑の色をした芝生が広がる。


その芝生をしばらく眺めてゆくと、四方八方に案内板のようなものが下げてあり、


「バラ園」、「果樹園」、「ビニールハウスの南国園」など、様々な木々や、花々のことが書いてある。


つまり、芝生からは最早広大な森。綺麗に刈りきった街路樹のような木がその案内板が示す目的地への道を造っている。


庭はそのまま本邸をぐるりと囲むように広がっており、庭だけでもまさに迷路だ。


問題の本邸だが、これまた凄い。


噴水を抜け、幅の広い車道が続き、駐車場があるのだろう。左右に車道が折れて、屋敷の両側へと続いていく。


その車道がYの字になっている部分からしばらくが広場のように芝生が広がったその先に、やっと本邸の入り口が見える。


正門から伺える古風な感じが漂う造りだが、あの別邸のふたまわり大きいじゃ済まない大きさだ。


ベルサイユ宮殿なみの荘厳な造りに、軽くマンションの六階立分はあるのじゃないかという高さ。


その高さがあるのに、細長いと感じさせないほどの幅の広さ。


更に奥行きもあるのだろう。奥に向かって伸びていくところが見て取れる。


ここから見た限りでは奥に向かって数十メートルは続いているんじゃないか。


外壁と同じ石作りで、所々にアンティークな彫刻がなされている。


まぁ、とにかく半端ないお屋敷という訳だ。


「おい、これ維持費どんだけかかってんだ?」


本邸の豪華さにおののく宏助に真は至極あっさり答える。


「維持費だけじゃない。いたるところに、外観を損なわないように隠しカメラや盗聴器。


侵入者を発見・排除する赤外線レーザーや、地雷、自動射撃を行う警備システムまでついている。


防犯にも相当金を掛けているからな。維持費と合わせて何億じゃ済まない額になる」


「地雷!?地雷が埋まってるのか此処?」


「地雷以外にも俺の知らない仕掛けが沢山埋まっているぞ、多分」


「・・・・・・・」


自分が今まで庭を歩いていたことに戦慄する。


「ま、大丈夫だ。よほど激しい衝撃を受けても、爆発しないようになってるから」


そのままスタスタ歩いていく真や麗、明まで。宏助は遅れていかないように慌ててついて行った。










「「「お待ちしておりました、お嬢様。皆様方も中に入っておくつろぎ下さい」」」


神条家本邸の扉にようやく辿りつくと、五人ほどの侍女が待ち構えていて頭を深く下げて歓迎の言葉を口にする。


それを横目で眺め、宏助たちは本邸の中に足を踏み入れた。


豪華なシャンデリアに、とてつもなく広いバルコニー。


正面から二階に繋がるアンティークな階段や、バルコニーから繋がる幾つもの部屋の入り口。


よくよく見てみると地下へ繋がる階段もあるようだ。


今度も宏助は、


「あらためて思うけど・・・・」


と言いかけるが、既に皆、侍女に案内されていってしまったようで、誰も俺の話を聞きそうに無い。


「さぁて、さっさと追いつかないとな」


屋敷を眺めていた宏助一人を取り残していった非情集団を追いかけようとすると、


「ちょっと待ちたまえ」


こんな非情にムカつく声をかけられ、


「アンタは・・・・!」


聞き覚えのある声だなと思ったらやっぱりムカつく人物で、


「あら、知り合いなの?」


「まぁな。ちょっとだけだ」


「・・・・・これまたお揃いで・・・・」


しかもその横に更に見覚えのある人物が並んでいた俺の絶望感を分かって欲しい。


誰にだ?誰かにだ。


俺の目の前に立つ二人の男女。


明の許婚ー暗と、宏助の妹ー蘭だった。










「あれ・・・?宏助さんがいない・・・・」


明が宏助がいないのに気付いたのは、侍女に荷物置き場(と呼ぶにはあまりに豪華過ぎる場所)に案内されてからだ。


「ああ・・・。あの馬鹿なら屋敷に見取れてたから置いてきましたよ」


「ええッ!ちょっと何やってんですか!?」


「アイツなら今頃襲われていても大丈夫でしょう、それより明様は早く礼服に着替えないと・・・・間に合いませんよ」


明が動揺するのに対し、真が冷静なので、明も静まるしかない。


そもそも、残り三十分程度で一度全員が屋敷の集会場に来ることになっている。


明はこれから礼服に着替えるので今からすぐ着替えないと時間が間に合わない。


(宏助さんなら大丈夫か・・・・)


明は麗を含む数名の女性SPと共に更衣室へ歩いていった。


荷物置き場に残された残りのSPだが・・・・・


ガシャ


ガコンガコン


皆、隠し持ってきた武器のメンテナンスにいそしんでいる。


それもそのはず。敵はいつ仕掛けてくるか分からない。今回懸念されていることはこの二つだ。


・神条家の専属SPが人外


・死神の奇襲と謎の【オールダイ】という言葉


どちらもあくまで懸念のレベルだが、心配しておくにこしたことはない。


(しかし、まんざら冗談でもないかもしれねぇな・・・・)


さっき真は冗談で「宏助は襲われても大丈夫」などといったが実際に起こりうる事態だ。


そもそも、真は聖気を使ってこの屋敷に網を張ろうとしているのに、全く網が張れない。


網がさまざまな『外部の力』によって消されてしまう。


『外部の力』の内容は分からないが、真が聖気を少しでも屋敷に広げようとすると、その『力』に遮られる。


つまり、この屋敷に真の力を感知している人間がいる、ということだ。


(しかしこの感じは・・・・・・)


その力には何か違和感を感じる。死神ではないが、聖気を消すなんて芸当、そうそう簡単に出来るわけでもない。


「・・・・・」


「あれ・・・?真さん?どこに行くんですか?」


真がこの部屋を出ていくのを見て一人のSPが声をかける。


「うん?ちょっと・・・・鬼退治ってとこかな・・・・」


言葉は冗談めいていた裏腹に目は全く笑っていない真に、SPが言葉を継げることはなかった。










「まったく・・・・・面倒くさいなお前ら・・・」


ハワイの行く先々で出会った二人に宏助は軽くため息をつく。


会った時は驚いたものの、もう五年はまともに接していない、妹。


その位置づけは最早、『知り合い』レベルだ。


前のように長い黒髪を後ろでまとめたポニーテールに、大人っぽい魅力持った体を包むブラックスーツ。


それでもクリクリッとした子供っぽい大きな瞳を見ると何故か安心する。


もう片方の男は相変らずキザっぽく、タキシードでビシッと決めていて、顔も妙にキリッとしている。


ピアスや指輪などの装飾品や、ワックスで立てたであろう髪。人を小ばかにしたような笑み。


それらが唯一、こいつを若者らしく見せている。


「・・・・面倒くさいとは失礼だね、僕らは挨拶しにきたんだよ。挨拶しに」


「お兄ちゃんもスーツがサマになってきたわね。なかなかよ」


やっぱり人を馬鹿にしている二人に宏助も軽く返す。


「実の妹にそう言ってもらえるとは光栄だ。アンタもわざわざ挨拶しにきてくれて、どうも・・・・・で、」


ここで宏助は一度言葉を切り、目の前の相手を見つめる・・・・いや、


「で、お前ら何が目的なんだよ?」


・・・・睨む。


「・・・・・・そんな目で見ないでくれよ」


「まぁ、怖い・・・・・」


やはり相手に動揺がないのが少し悔しい。


しかし相手は既に蘭は人外だということは分かっている。用心しなければならない。


「ほら、早く目的を言えよな・・・・・そうしないと・・・・・」


「そうしないと・・・・・どうするんだい・・・・?」


「・・・・!」


背筋全体の毛がゾわりとあわ立つ。一瞬でとてつもない殺気が暗から流れ出す。


「・・・・・・」


となりに立つ「人外」の妹もビックリしたような顔をしている。


(コイツは普通の人間じゃないのか・・・・?)


暗は普通の人間のはずだ。そうでなければ明が気付かないはずがない。


しかし、今出した殺気は人間のものではなかった。


「・・・・・・・」


静かなにらみ合いが続くがそこで・・・・


「やあ、お前ら。そろそろ行かないと集会に遅れるぞ」


「・・・・・・!」


なんと階段から降りてきたのは真だ。顔は笑っているが目は全く笑っていない。


「・・・あら・・・珍しいお客さん・・」


「おう、網を張っていたのは君か・・・」


「・・・・・・」


暗の言葉を聞いて眉をひそめる真だが、暗はそんなことはおかまいなしだ。


「君が来たんだったらココは退こうかな・・・・。集会にも遅れるしね・・・」


「じゃあね、お兄ちゃん!」


「おい待てテメェら!」


声を掛けたときには、もう二人の姿はなかった。


「ほら、俺たちも集会にいくぞ」


「・・・・・・」


あまりに冷静な真に宏助は理不尽さを覚えるが、相手もいなくなったので、むくれながら集会所に向かう。












ーもう闘いは・・・始まっている

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