Tale.25
「カナちゃん、捕まえてきたよー」
「ありがとーりずむさんー」
満面の笑みを浮かべるカナと、対面するボクとボクを後ろから押さえ込むりずむ。
夜斗はミラさんの拘束魔法で、ミイラの様に全身を光のリボンで覆われている。
あれ、息できるのかな。
まあゲームだから大丈夫か。
自己解決で納得していると、カナが近寄ってきた。
「ではお兄ちゃん、ちょっと失礼」
そう言うと、カナはボクの頭の上に生えている耳を掴んだ。
「うひゃぁっ!?」
なんか頭がこそばゆいっ!?
「やめ、ちょ、くすぐったいぃっ!くすぐったいよ!?」
拘束魔法で動けないけど、これ動けたら絶対床を転がっているくらいだよぉぉ!
「もふもふっ」
「ちょ、尻尾はやめてぇ!」
必死に尻尾を動かして魔の手を避けようとするが、失敗に終わった。
がっしり掴まれた。
「カナちゃん、独り占めはダメですよー」
今度はりずむがボクの耳を引っ張った。
ちょ、痛いって。
「じゃあ先ずはこのチャイナドレスをお願いね! 」
………誰か、この変態共を鈍器か何かで無力化してくれ。
そう祈る様に上を見上げると、光が一筋、見えた。
何かが、凄いスピードで落下してきたのだ。
落下してきた物体はそのまま……
ガンッ
「ぁ――――っ!?」
「ふぎゃっ」
見事にカナの後頭部に直撃。
その反動で跳ねた物体は更にりずむの顔面に。
二人ともゲームのステータス上は無事なのだが、一瞬ひるんだ。
その隙を、夜斗は逃さなかった。
「―――ハッ!!」
「んなっ!?」
夜斗はミラさんの魔法連撃を避けている最中だったが、突然身体をひねってミラさんを抜けた。
「よっと」
先ほど落ちてきた何かを掴み、そのままスピードを落とさず拘束されていたボクを抱え込んだ。
再び夜斗の腕の内に戻り、逃走劇が再開した。
「ふぅ、一時はどうなるかと……」
「ありがとー」
「あ、ああ、いいよ、なんか凄い可哀想だったから」
「ところで、それは?」
「ん?これか」
そうして夜斗が頭の上に乗せたのは、先ほど空から落下してボクの窮地を救ったものだった。
――――茶色の子猫だった。
「……なんで猫が空から?」
「俺に聞かれても」
でも、夜斗が猫を助けた理由はなんとなく分かってる。
リアルでは頻繁に捨て猫や捨て犬を拾ってくるし。
新しい飼い主さんに渡す時は結局架菜に任せて、家でちょっと泣いてたし。
家は母さんが動物アレルギーだからなぁ。
あれ、OTOはペットシステムとかもあったけど、夜斗は何か飼ってるのかな。
そんなどうでもいいことに思考を巡らせていると、突如アナウンスが鳴り響いた。
『えー、OTOのプレイヤーの皆さんー、これより『もふもふイベント』の本命、《もふもふクエスト》が既に開始していることをお知らせしたいと思います』
今度は何を始める気なんだ父さんは。
もふもふもふ。(・・*




