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《ORIGIN TALE ONLINE》  作者: 零零機工斗
序章:誕生日
2/31

Tale.1

今回はちょっと長めです。

藤矢に言われた通り、僕は急いで自分の部屋から台所に向かう。


台所で僕を待っていたのは、メイド服を手に持って立っている妹、苦笑いしている弟、そしてテーブルの上に置いてある大きめのプレゼント箱だった。


「「「改めて、お誕生日おめでとぉぉぉぉ!!」」」


架菜と藤矢の二人の声以外に、もう一つ聞き覚えのある声が後ろ聞こえた。


「へ?...って、うわぁっ!?」


後ろからの声に気づき、振り向こうとした瞬間、何者かに背中を押された

僕は足を滑らせ、足が宙に浮くのを感じた。




世界が反転したかの様に視界がぶれる。


「へぶっ」


後頭部が地面に激突し、脳が揺れる感覚に襲われる。



視界がぼやけながらも戻ってくると、目に見えるのは天井と、僕を楽しそうに見下ろす幼馴染の顔だった。


「へっへ~、驚いた?」


「そりゃあもう......」


本当、朝っぱらから何なんだ...






.........






「ごめんね~。大丈夫?」


「大丈夫だったら痛そうに頭を抱える訳ないでしょうが。」


痛い...まだ脳が揺れてる感じだ...


漫画とかでよくある頭から着地する人って、よく生きてるな。

まあ考えてみれば、漫画でよくある頭からの着地って、高さが凄いから実際にやって生きてる訳ないけど...


「それで?なんでお前がここにいるんだよ。」


「あす君の誕生日だっていうのに、幼馴染の私が居ちゃ駄目?」


「僕の誕生日だっていうのに、僕を押してあんなことになった原因が何を言っている。」


「あれは悪かったってば。まさか裸足で床の上を滑るなんて思わなかったから……!」


あーはいはい、言い訳は聞こえないっと。


椅子に座って自分の罪を弁解しようとしているコイツは『日之宮(ひのみや) 音葉(おとは)

父さんの親友の娘で、幼少時からの幼馴染だ。

黒髪のショートで、美少女の類に入る外見だろう

昔引き篭もろうとした僕をよく外に引きずり出したり、ゲームに誘ったりした張本人だ。


昔から僕を『あす君』と呼ぶ。


それが広まって『アス』というあだ名が付いてしまったことには触れないでおこう。

たったの三文字だから、わざわざ二文字に減らさなくても良いのに...


「お兄ちゃん、頭の痛みが落ち着いた所で、お誕生日おめでとー」


架菜がさっきまで手に持っていたメイド服を渡してくる。


「まずはお前が落ち着け」


迫る架菜をなんとか払いのけ、テーブルの上に置いてあるプレゼント箱を指差す。


「これは?」


「俺、架菜(ねえ)、日之宮先輩の三人から兄さんへの誕生日プレゼントだよ。早速開けてくれ。」


「そうか、皆ありがとう」


緊張しながらも箱を開けてみると、そこにはVRMMOソフト用のケースと、また一つ別の箱があった。

箱の中に入っていたその箱は、側面に『LINK・GEAR』と大きな文字で書いてあった。




《リンクギア》




今世界に出回っている最新の神経(リンク)式VR機で、今ではどの店でも完売していて、再入荷を待たなくてはならないレア物だ。


これが誕生日プレゼントとは...確かに驚くことではある。僕も再入荷を待っていたし。



「...早速分解しよう!」


「ちょっと待てぇぇ!」


藤矢がガシっと僕の肩を片手で掴む。

掴まれている肩がミシミシって鳴って痛い...


「どうしたんだよ急に...」


「いやそれこっちの台詞だから!なんで折角お年玉まで使って皆で買ったプレゼントを分解されなきゃならないんだよ!これ高かったんだぞ!?」


「え?じゃあ何に使うんだ?」


「ゲームだろ!ってかゲーム以外に何か使い道あるのかよ!」


「他の使い道としては、分解してその技術を調べてみたいと思う。」


藤矢は頭を抱えて唸り、架菜はやれやれとでも言う様な仕草でさり気なく僕の手にある箱にメイド服を刷り込もうとする。(勿論僕はそれを払いのける。)

そしてこのやり取りを聞き慣れている音葉は平然と「ズズズ...」と音を立てて味噌汁を飲んでいる。



「はいはい、じゃあ冗談はここまでにするよ。分解はいつかやってみたいもんだけど」


「そ、そうか...じゃあ、早速皆でゲームやろう。」


「ゲームって、これ?」


プレゼント箱に入っているVRMMOソフト用のケースを取り出す。

表紙には『ORIGIN TALE ONLINE』と書かれていた。


《ORIGIN TALE ONLINE》


通称《OTO》。


父さんが作ったゲームで、発売初日で完売したVRMMOだ

自由度がかなり高く、ベータテスト段階で神扱いを受けたゲームだそうだ。

設定としてはあらゆるゲームジャンルの世界観が詰め込まれており、剣での戦いも魔法も巨大ロボットとかも可能だそうだ。


VRゲームは廃人である音葉や架菜に誘われてやったことはあるけど、VRMMOはまだやったことがない。


つまり、僕が生まれて初めてやるVRMMOは神扱いされている物だということになる。

今後のゲームの良し悪しの判断が変にならなければいいけど...


「ああ、《OTO》は兄さんも知ってるだろ?俺らはベータテストもやってたから、兄さんに教えながらやるよ。」


「じゃあ、いつやるんだ?」


「とりあえず朝ご飯食べてからにしよう。日之宮先輩はもう完食してるし。」


「それは音葉の食べるスピードが速いからじゃないか」


「それはどーゆー意味よ!」


「そーゆー意味だよ」


「に、兄さん、日之宮先輩...まあいいか、もう手に負えないし」


「あぅ、お兄ちゃん...このメイド服が私の本命プレゼントなのに...」




賑やかな誕生日だなあ。







◇~◆~◇~◆






音葉は自分で持ってきた《リンクギア》を使うと言って、台所を出た。架菜の部屋に向かったんだろう。


朝ご飯を食べ終えた僕は、藤矢から《OTO》の説明を受ける。


最初は《エンジニア》のスキルがあって、マニュアルモードという現実に限り無く近い方法で機械が作れたり、『魔導機』という魔法と科学技術を組み合わせた機械が作れると聞いたからやろうと思っていたのだが、藤矢の説明を聞いていく内にゲームの内容の方にも興味が沸いた。


ゲームの舞台は中世ヨーロッパや昔の日本っぽい所から現代都市や未来都市までが全て存在する不思議な世界で、ある程度まで進めば海を渡ったり、空を飛んで移動したり、挙句の果てには宇宙にまで行くこともできるんだそうだ。

今までのVRMMO全ての特徴を取り込んでいるので、戦争もしくは宇宙戦争とかもできるとか。



この世界を簡単にいうと、『魔法有り、剣有り、そして科学有り。大昔から遠い未来までが合わさった、自分だけの物語オリジン・テイルを築くためにある世界』。

このゲームのキャッチフレーズになる。


さすが父さん、魔法ばかりじゃなくて科学も重要視してましたか。




《OTO》には色々な種族があり、武器の種類も様々。

職業、レベル制ではなくスキル&ステータス制であり、プレイヤー本人の才能も重要になるそうだ。

ステータスは《OTO》の世界で数値化した自分の運動神経や魔法知能のことであり、HP、MP、SP、STR、DEX、VIT、AGI、INT、MND、LUKの十個が存在する。


HPは体力、

MPは魔力、

SPはスタミナ、

STRは筋力(重い物を持つ力など)、

DEXは器用さ(銃、弓の命中率や生産効率など)、

VITは物理的攻撃に対しての耐久力、

AGIはアバターの敏捷力、

INTは魔法や科学技術などに必要な『知識』、

MNDは魔法などの物理的じゃない攻撃に対しての耐久力、

LUKはドロップ率などを決める運だ。


スキルというのは、この世界で才能・技・能力補正の三つの役割を果たす。


例えば《槍》の才能スキル(何かをするための才能)を装備していれば、槍を使っていく内にスキルのレベルが上がり、槍のアクティブスキル(自分の意思で発動する技や魔法)・パッシブスキル(常時発動している能力補正や特殊能力)を覚えたり、プレイスタイルに合わせてスキルが別のスキルに進化したりする。


そしてこのゲームの最大の注目点が《オリジン・システム》だ。

なんとこのシステム、自分だけの武器・防具・アクティブスキルが作れるそうだ。

武器・防具は《設計》から始まる。

カテゴリ(防具の場合は体の部位)を選び、パーツごとに形をイメージして作り上げ、素材を決める。

すると設計図ができ、それを元に武器・防具を《鍛冶》スキルで作ってやっと自分の理想の武器や防具が作れる。性能は素材によって変わるので初心者がいきなりチート武器を手に入れることはあり得ないけど。


オリジナルのアクティブスキルを作る時、『武器で放つ技』と『魔法』で分かれる。

武器で放つオリジナルの技、オリジンアーツを作る時は、《オリジン・システム》の項目をメインメニューから選び、ステータスが上昇した状態で録画してエフェクトを足すか、エフェクトだけ足すかが決められる。

威力は設定できるMP消費量と硬直時間、ステータスなどで決まる。


オリジナルの魔法、オリジンマジックはオリジンアーツと違い、《オリジン・システム》のウィンドウを開かなくても脳内だけで作れ、放てる。

その場で作れるメリットもあるので、大抵はすでにゲーム内に設定されている魔法の方が威力が高いとのこと

オリジンマジックを作る時は、イメージを具現化して魔力を形にするそうだ。高レベルで凄そうな魔法をイメージしても、INTが足りなければ魔法は作れないけど。

威力とMP消費量はイメージと自分のINTで決まる


《エンジニア》のスキルを持っている場合は《オリジン・システム》で機械の《設計》ができる。

作れる機械は二種類ある。

《ロボット》と《装置》だ。

《ロボット》は乗り込むことはできるし、遠距離操作もできる。そして《装置》はバリアを張る物だったり、レーザーで攻撃する砲台だったり、医療用装置として回復に使ったりすることができる。

機械も純粋な科学技術を使う物以外に、魔力・魔法を使う『魔導機』がある。



少し長い説明だったけど、僕は結局『戦う機械技術者』を目指すことにした。

《エンジニア》として作ったメカを使って戦う。

カッコいいじゃないか。

魔導機とかも興味あるし。



藤矢の説明を聞き終えた僕は、部屋に戻り、ゲームを始める前にアカウント設定をしようと《リンクギア》を開けてパソコンに繋げる。


が、『もうアカウントは作って登録してあるから作らなくていい』と架菜に言われ、作業を中断する。

なんでも、誕生日サービスを付けてあるとか。


まあ、見てからのお楽しみというヤツを壊すつもりは無いので、聞かないでおこう。


僕は《OTO》のゲームデータをダウンロードした後、頭を丸ごと覆い被さる大きさの《リンクギア》を装着し、自分のベッドに横たわる。


「ゲームタイトル、《ORIGIN TALE ONLINE》 神経・接続(リンク コネクト)


ゲーム起動のキーワードを口にする。




LOGGING IN TO《ORIGIN TALE ONLINE》......



INSTALLING《ORIGIN TALE ONLINE》......



LOADING GAME......




――直後、視界が真っ暗になり、意識が途切れる。

2/14:幼馴染の名前変更

2/18:最初の部分を改稿

2/21:色々な部分を改稿・修正


次回は改訂前の過ちから学び、VRMMOらしさを強調させたいと思います。


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