Tale.11
ボク達は【勇者パーティ】の脱落を確認した後、コールを使用してネフィムさんに【勇者パーティ】を倒したことを報告した。
そして、他の部隊の援護をすることとなった。
『援護すべき部隊は【夜斗】の暗殺部隊だ。お前達には、【軍】のギルマスを暗殺するために注意を引きつける囮役を買って欲しい。』
「了解だ」
魚雷火さんがコールを終え、ボク達にネフィムさんからの指示の内容を教えてくれた。
【軍】は銃を基本武器とする百人以上も所属している大人数ギルドで、OTOの中でも人数だけならトップを誇る。
暗殺部隊がそんな大人数を一度に相手できる訳も無いのでボク達が注意を引きつけ、その騒ぎに紛れてギルマスを暗殺する、という作戦だった。
因みに、先程ボク達が蹴散らした雑魚の中には【軍】の下っ端達も紛れていたらしい。
言われてみれば迷彩服と銃を装備していた集団もいた様な気がする。
全員蒸発させたけど
「取り敢えず注目を集めなきゃいけないから、思いっきり派手にやるぞ」
「「「イエッサー!!」」」
魚雷火さんの単純な命令で、部隊の皆は夜斗達の情報を元に【軍】のギルド拠点があるらしい方向へ向かった。
全員物凄い速度で走っている
ボクはと言うと、AGI値が足りないせいで皆の遥か後ろで走っていた
既に肩で息をする程スタミナが減少していたけど、遅れる訳には行かないので必死に走り続けた。
「おい、大丈夫か?」
「はい...なんとか。」
魚雷火さんが後ろに下がり、心配そうに聞いてきた。
心配を掛けるのは嫌なので、ボクは《加速靴》の固有スキル、【迅速加速】を発動してなんとか部隊の皆に追いついた。
【迅速加速】を使用するとMPが凄い勢いで減っていくが、今回は目的地が近いのでなんとか持つハズだ。
「見えてきたぞ!」
走り続けること数分。
場所は噴水が中心にある円形の広場だ
正面には、それぞれが迷彩服と銃を装備した大軍がゾロゾロと歩いているのが見えた。
「よっしゃお前ら!全力で暴れろ!」
「オオオオオオォォォォ!!」
魚雷火さんの掛け声で、部隊の皆はスキルを発動しながら大軍に突っ込んだ。
こちらに気づいていなかった【軍】の人達は、その雄叫びを聞いて驚きの表情を見せていた
が、その中の何人かはすぐに反応し、銃の引き金を引いていた
金属と金属がぶつかり合う音と、様々なタイプの銃の銃声が同時に響き渡り、戦いの幕が下ろされたことを証明している様だった。
魚雷火さんは詠唱中で、彼の周囲には黒いオーラが溢れていた
「【アポカリプス・ディザスター】ァァァァ!!」
詠唱が終わり、魚雷火さんの周囲の黒いオーラが上空の一点に集まり始めた
そして数秒後、小さな点に圧縮された黒いオーラは開放された。
開放された黒いオーラは、あらゆる方向に飛び散り、【軍】の人達に突き刺さった。
オーラが地面に接触すると同時に、爆発音が広場に響き渡る。
人がぐったりとした姿勢で空中を舞っていた光景には少しシュールさを感じたが、人を直接爆破しているボクが言える立場ではないだろう
「アス、再詠唱時間が終わるまで援護を頼む!」
呆然としているボクに魚雷火が援護を頼んできた
他の人達は絶賛交戦中で、魚雷火さんの元に残った人はボクしかいなかったからだ。
「り、了解!」
ボクは魚雷火さんの前に立ち、インベントリからキューブの形状をした物を取り出した。
キューブの側面の真ん中にはボタンがあるのを確認し、それを押した
『機械兵マグナ、起動します』
キューブが光り、形状が変化し始めた
光が除々に失せ、次第にその巨大な実体が見える様になってきた
「アス、お前、それって......」
「ああ、これがボクの最高傑作、機械兵マグナだよ。」
機械兵マグナ。
全長10mの完全武装・二足歩行の人型ロボットだ。
装甲は白と青の二色がベースとなり、腕、足、肩、首、頭などに多少の金色の装甲が重なっていた。
装甲の下は殆ど全て黒だ
武装はビームライフルとプラズマサーベル、そしてミサイルなどのその他類。
自律モードと操縦モードで切り替えが可能だ
ボクは【迅速加速】によって強化されるジャンプ力でマグナの胸部に位置するコックピットに飛び込み、両手で二つの操縦桿を握った。
右足から前進する様に右の操縦桿を前に動かすと、マグナは右足から踏み出した。
敵の何人かはその足に踏み潰され、その他はマグナの登場によって混乱していた。
ボクは味方を踏まない様にとマグナの背中のブースターで空中に浮上した。
が、炎の弾の様なモノが幾つか飛んできたので浮上を中断した。
恐らく特殊弾を使ってきたんだろう
特殊弾は普通の銃弾とは違い、撃つことによって特別な効果を発揮する弾だ。
攻撃魔法を込めて炎の弾を撃ったり、ポーションの込められた回復弾でHPもしくはMPを回復させることができる
「マグナが!銃弾ごときにぃ!負けるかああああ!」
ボクは操縦桿を滅茶苦茶に動かし、マグナの両手を振り回させる。
ガンッ!と鈍い金属音が響き、再び放たれた炎の弾がマグナの腕に弾かれた。
『な、何だアレ!!』
『あんなのに勝てる訳が無ぇ!』
『ひるむな!爆撃すれば何とかなる!』
コックピットのディスプレイに表示されるのは、周囲の人々の話し声だ。
これによって周りの人の作戦などは丸見えだ。
「でも、爆撃って何だろう......」
ボクがマグナで魚雷火さんを防衛しながら、先程見た会話のことを考えていた。
しかし、時は待たずとも訪れた。
殆どの人がその場を離れたと思うと、巨大な筒を担いだ人が数人程、前に出て来たのだ。
そして次の瞬間、その巨大な筒から突然火が噴き、マグナの足元で爆発が起こった。
巨大な筒の正体は、バズーカだった
恐らくあれもゲームでは銃火器に分類される武器なのだろう
このままでは、素早いロケット弾を避けるのは困難だろう
今のだって、地面を踏みつけた衝撃で狙いがズレたからだ。
だからボクには奥の手しか残されていない
「【憑依】」
スキル名を唱えた直後、ボクの視界はおよそ10mの高さにあるマグナのカメラ・アイに移った。
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