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『追放された野生の天才料理人、騎士団の胃袋を掴む ~「魔物を煮込むな!」と追い出されたのに、堅物公爵の理性を粉砕しています~』  作者: にゃん
第2章 王都編

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第29話:王宮の献立そして影が動く

王宮の大門がゆっくりと開いた。

白亜の石畳が陽光を反射し、

その奥には重厚な宮殿がそびえ立っている。


リゼットは、

胸元がふわりと揺れる軽装のまま、

緊張した面持ちで立ち尽くした。


「……すごい。

こんな大きなキッチン、初めて見る……!」


ガイアスは、

その無邪気な声に胸を押さえた。

(……頼むから、王宮では少し落ち着いてくれ……

その格好で跳ね回られたら、俺が死ぬ……こういう時こそさらしを巻いてくれ)


カシアンは冷静に言う。

「リゼット。

王宮は魔力の流れが複雑だ。

気を抜くなよ」

「うん! でも、なんだかワクワクするわ!」


シグルドは微笑んだ。

「その調子だ。

君の料理が、王国の命運を左右する」


王様は、深い眠りの中にいた。

魔力の乱れがひどく、

呼吸も浅い。

老医師が、

リゼットを見て言った。


「……君が、例の料理人か」

「はい! リゼットです!」


老医師は、

その明るさに一瞬だけ目を丸くした。


「……本当に、この娘が……?」


シグルドが頷く。

「彼女の料理は、魔術師団も宰相府も救った。陛下にも効くはずだ」

カシアンも言う。

「魔力の調律は、彼女の料理が最も適している」


ガイアスは短く言った。

「……信じている」


老医師は深く息を吐いた。

「……分かった。

リゼット嬢、陛下のための“魔力安定食”を頼む」


リゼットは、

胸に手を当てて頷いた。

「はい。

私、全力で作ります!」


王宮の厨房は、

宮廷料理人たちの視線で満ちていた。


「……あれが噂の娘か」

「さらし姿……?」

「いや、あれは……その……」

「目の毒だ……」


リゼットは、

そんな視線を気にすることなく、

大鍋を前にはりきっていた。


「よーし!

まずは魔力の流れを整えるスープからね!」


カシアンが魔力を供給し、

ガイアスが護衛として背後に立ち、

シグルドが政治的な圧力を抑え込む。


王宮厨房は、

一瞬で“リゼット専用の戦場”になった。


その時――厨房の奥で扉が開く

ギィ……と音を立てて開いた扉から現れたのは、

宮廷料理長バルトロ。


その顔は、

嫉妬と憎悪と“理解できない現実への恐怖”で歪んでいた。

「……貴様……やはり貴様か……リゼット……!」

リゼットは振り返り、

にこっと笑った。


「あ、料理長さん、お久しぶりです!」

その無邪気な笑顔が、

バルトロの神経を逆撫でした。


「黙れ!!

なぜ貴様がここにいる!!

無能の貴様を追放したのは、この私だぞ!!」

厨房の空気が一瞬で凍りつく。


ガイアスが剣に手をかけた。

「……バルトロ。

その言葉、二度と口にするな」


シグルドは冷たく笑う。

「“無能”が王都の行政速度を三割上げ、

魔術師団を復活させたわけだが?」


カシアンも淡々と刺す。

「君の鑑定眼が節穴だっただけだ。

責任転嫁は見苦しい」


バルトロは震えた。

「う、うるさい……!

貴様らがどれほど庇おうと……

この小娘は“無能”だ……!

私が追放したのだ……!

それが……なぜ……王宮に……!」


リゼットは、

首を傾げながら言った。

「えっと……料理長さん。

私、あの時“味見などする必要ない”って言われただけで、

追放された覚えはないんだけど……?」


バルトロの顔が真っ赤になった。

「黙れぇぇぇぇ!!

貴様のせいで……

私の宮廷料理界が……崩れていく……!!」

その叫びは、

嫉妬と恐怖と焦燥が混ざった、

もはや狂気の声だった。

バルトロは懐から小瓶を取り出した。

「見ろ!!

王宮の厨房から“こんなもの”が見つかったぞ!!

リゼット、お前が混入したんだろう!!」


厨房がざわつく。

ガイアスが剣に手をかけた。

「……バルトロ。

それは何だ」


バルトロは勝ち誇ったように叫ぶ。

「“毒”だよ!!

王を殺すためのな!!

これで貴様は終わりだ、リゼット!!」


だがリゼットは、

小瓶を見て首を傾げた。

「……それ、毒じゃないわよ」

バルトロが目を見開く。

「なに……?」

リゼットはさらりと言った。

「それ、“痺れアンコウの肝の下処理に使う酢”よ。

昨日、市場で落としていったでしょ?

料理長さん」


厨房がざわついた。

ガイアス、カシアン、シグルドの三人は同時に思った。

(……この娘、最強か……?)


バルトロは震えた。

「な、なぜ……匂いだけで……」


リゼットはにこっと笑った。

「料理人だからよ?」


バルトロは、

その笑顔で完全に打ちのめされた。


その頃、

王様は薄く目を開いた。

「……良い匂いが……する……」

侍従が驚きの声を上げた。

「陛下……!?」


王宮は、

ついに動き出した。

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