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『追放された野生の天才料理人、騎士団の胃袋を掴む ~「魔物を煮込むな!」と追い出されたのに、堅物公爵の理性を粉砕しています~』  作者: にゃん
第2章 王都編

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第27話:王宮のざわめき

王都の中心、白亜の王宮。

普段は静謐な空気が満ちているはずのその場所が、

この日はどこか落ち着かないざわめきに包まれていた。

侍従たちがひそひそと声を交わす。

「……陛下の容態が、また揺らいでいるらしい」

「魔術師団が応急処置をしたと聞いたが……」

「それよりも問題は、“例の料理人”だ」

「例の……?」

「下町で噂になっている娘だよ。

リゼットとかいう……」

侍従たちの声は、

王宮の奥へ奥へと広がっていった。

王様は、深い眠りの中にいた。

魔力の乱れが原因で、

意識が安定しない状態が続いている。

枕元では、

王宮付きの老医師が額の汗を拭っていた。

「……陛下の魔力は、また揺らいでおります。

このままでは……」

そこへ、

魔術師団の治療班が駆け込んできた。

「応急処置は施しました。

ですが、根本的な治療には……」

老医師が眉をひそめる。

「“魔力を整える料理”が必要、というのだな?」

治療班の魔術師は、

小さく頷いた。

「はい。

魔術ではなく、食事によって魔力を安定させる……

そんな料理人が、王都にいると聞きました」

老医師は目を見開いた。

「……その娘の名は?」

「リゼット、と」

その名が、

静かな部屋に落ちた。

王宮の重臣たちが集まっていた。

「陛下の容態が安定しない以上、

“魔力安定食”の研究は急務だ」

「宰相府が動いていると聞いたぞ」

「騎士団長も、例の娘を保護しているらしい」

「魔術師団も、彼女の料理を高く評価しているとか」

「……では、王宮はどう動くべきか?」

重臣たちの視線が、

王宮筆頭侍従へと向けられた。

侍従は、

静かに言った。

「陛下は……

“その娘を連れてこい”と仰せです」

会議室がざわめいた。

「陛下が……?」

「意識が戻られたのか?」

「いや、半ば夢うつつの中で……

しかし、確かに“リゼット”と……」

重臣たちは顔を見合わせた。

「……王宮が動く時が来たか」



騎士団の屋敷・昼下がり

リゼットは、

いつものように台所でスープを作っていた。

胸元がふわりと揺れ、髪が陽光に透ける。

「ふふっ、今日の月光キャベツは甘いわねぇ」

ガイアスは、

その姿を見てまた胸を押さえた。

「……リゼット。

君は……本当に……」

「ん? なぁに?」

「……いや、なんでもない」

(可愛い……そして危なっかしい……

どうして俺はこんなに心臓に悪い思いを……)

ガイアスは、自分の胸の内を押し殺した。

そこへ、カシアンが書類を持って入ってきた。

「ガイアス。

王宮から正式な通達が来た」

ガイアスの表情が固まる。

「……まさか」

カシアンは頷いた。

「“リゼットを王宮へ連れてこい”

――陛下のご命令だ」

リゼットは、

スープをかき混ぜながら言った。

「え? 王宮?

私、騎士団の料理人よ?」

ガイアスは、

深く息を吸った。

「……リゼット。

君の料理が……

王様を救うかもしれない」

リゼットは、

木べらを止めた。

「……そっか。

じゃあ、行かなきゃね」

その笑顔は、

あまりにも無邪気で――

ガイアスの胸を締め付けた。


王は、

薄く目を開いた。

「……リゼット……

その娘を……」

侍従が静かに頷く。

「はい、陛下。

まもなく……お連れいたします」

王宮は、

ついに動き出した。

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