第13話:ザックからの手紙とさらし事件
ガイアスが王都からの手紙を受け取り数日
騎士団は、ようやく“日常”を取り戻しつつあった。
――ただし、それは“ザックがいない”という意味での平穏であり、
“リゼットがいる”という意味では相変わらず騒がしい。
そんな中、正門から見張りの叫び声が響いた。
「団長ー!! 荷物が届きました!!」
ガイアスが眉をひそめて向かうと、
門の前には大きな木箱がドンと置かれていた。
差出人の札には、見覚えのある名前。
『ザックより リゼへ』
ガイアスの胃が、嫌な予感でキリキリと痛む。
「……また厄介なものを送ってきたな、あの男は」
リゼットは嬉しそうに箱へ駆け寄った。
「ザックから!? なにかしら、食材かしら!」
「待て、リゼット。まずは中身を確認してから――」
ガイアスが制止するより早く、
リゼットはバールを手に箱をこじ開けた。
バンッ!
中から出てきたのは――
白い長布。
見慣れない、東方の国の“さらし”。
リゼットは首を傾げた。
「……布?」
その時、木箱の底に貼られた手紙を見つけた。
リゼットが読み上げる。
『リゼへ
前の水着、破れてただろ。
東方の国の“さらし”ってやつを手に入れた。
丈夫で動きやすい。
好きに使え。
ザックより』
ガイアス「………………」
副官「………………」
騎士団「………………」
リゼット「へぇ〜、さらしって便利そう!
これ、水着の代わりになるかも!」
ガイアス「待て」
だが遅かった。
「団長ー! 今日の昼は“さらし”で作業してますよー!」
リゼットの声が響き、
ガイアスは嫌な予感に駆られて厨房へ向かった。
扉を開けた瞬間――
「どうですか団長さん! 動きやすいですよ!」
リゼットが、
さらしを胸にきゅっと巻き、
上半身はほぼさらし
という姿で振り返った。
ガイアス「………………っ」
騎士団(厨房の手伝い組)
「「「うおおおおおおおおお!!!」」」
副官「団長……鼻血が……!」
ガイアス「出していない!!」
リゼットは無邪気に腕を回しながら言った。
「ほら、胸が揺れないから作業しやすいんですよ!
ザック、いいもの送ってくれたわ〜!」
(……ザック……貴様……)
ガイアスのこめかみがピクピクと震える。
騎士たちは、さらし姿のリゼットを見て完全に固まっていた。
「リ、リゼットさん……それは……」
「動きやすい……確かに……」
「いや、でも……目のやり場が……!」
リゼットは首を傾げた。
「え? これ、そんなに変?」
ガイアスは深呼吸し、震える声で言った。
「……リゼット。
それは……その……
人前で着るものではない 。せめて上に何か着るとかしてだな…」
「えっ? でも東方の国では普通なんですよね?」
「知らん!!」
ガイアスの叫びが厨房に響いた。
その日の夕方。
ガイアスは執務室で、ザックの手紙を握りしめていた。
(……あの男は絶対わざとだ。
私の理性を試しているとしか思えん)
だが同時に、
リゼットが王都でどんな目に遭うかを思うと、
胸が締め付けられるような不安が湧き上がる。
(……守らねば。
さらしどころの話ではない、王都の毒はもっと危険だ)
拳を握りしめたその時、扉がノックされた。
「団長さん、夕飯できましたよー!」
リゼットが顔を出す。
「さらし、すっごく動きやすいんです!
王都でも使おうかな〜!」
ガイアス「………………」
(……ザックを殴りに行くべきかもしれん)
ガイアスの胃痛は、今日も悪化した。




