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『追放された野生の天才料理人、騎士団の胃袋を掴む ~「魔物を煮込むな!」と追い出されたのに、堅物公爵の理性を粉砕しています~』  作者: にゃん
第1章 砦編

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第12話:伝説のスープと、届いた招集状


断絶の砦には、いつもの喧騒――いや、リゼットの爆音調理を除けば――穏やかな日常が戻っていた。


だがその朝、ガイアスの執務室に届けられた一通の封書が、

その日常を静かに揺らし始める。


『王都への帰還命令』


封蝋を割った瞬間、ガイアスの眉がわずかに動いた。


(……国王陛下の体調が、そこまで悪化しているのか)


文面には、王都への帰還とともに、

「魔力料理に長けた料理人を同行させよ」

という密命が添えられていた。


ガイアスは、無意識に厨房の方へ視線を向ける。

(……料理人、か)


その瞬間、厨房から爆音が響いた。


チュドーン!!


「リゼット殿ー!? また鍋が爆発したぞー!!」


「大丈夫大丈夫! これは“旨味が逃げる音”だから!」

(……いや、あれは普通に爆発だろう)


ガイアスは額を押さえた。


その日の午後。

ガイアスが旅支度の確認をしていると、

厨房から異様な匂いが漂ってきた。


「団長さん! ちょっと来てください!」


呼ばれて向かうと、

リゼットが巨大な鍋の前で腕を組んでいた。


「長旅になるから、保存が効いて力がつくスープを作ったの!

魔物の骨を三日三晩煮込んで、野草と香草を合わせて……」


鍋の中は、淡く光っていた。


「……光っているが」

「うん! 魔力が濃すぎて勝手に光るみたい!」


ガイアスは鍋を覗き込み、思わず息を呑んだ。


(……これは……魔術師が作る“魔力回復薬”より濃いのではないか?)


リゼットは無邪気に笑った。


「団長さんも飲んでみて!」


差し出されたスープを一口飲んだ瞬間――

ガイアスの体内に、熱い奔流が駆け抜けた。


「……っ……!」


「どうですか?」


「……すまん。

これは……兵に飲ませたら、三日は寝なくても動けるだろう」


「えっ、そんなに?」

……いや、これはもう“料理”ではない。

広域支援魔術の域だ……)


ガイアスは、密命の文面を思い出した。


(……魔力料理に長けた料理人。

まさに彼女のことだ)


その夜。

ガイアスは執務室で一人、招集状を見つめていた。


(王都は……ここほど自由ではない。

権力争い、派閥、陰謀……

そして、彼女のような無垢な者を食い物にする輩も多い)


リゼットの笑顔が脳裏に浮かぶ。


「美味しいもので、みんなを元気にしたい!」


その純粋な瞳を思い出すたび、

ガイアスの胸に、強い決意が宿った。


(……何があっても、俺が守る。

たとえ公爵家の地位を捨てることになろうとも)


自分でも驚くほど、迷いはなかった。


翌朝。

ガイアスはリゼットを呼び出した。


「リゼット。

王都へ……一緒に来てほしい。私が一生……」



「えっ、王都!? 市場があるところよね!」


「……ああ。市場もある」


「珍しいスパイスも売ってるかしら?

行く行く、絶対行くわ、団長!」


ガイアス「………………」


(……私の覚悟は……また空振りか)


リゼットはスープの鍋を抱えながら、

キラキラした目で言った。


「団長さん! 王都に着いたら、まず市場に行きましょうね!

それから、王都の料理人さんたちと料理勝負してみたいな〜!」


「……勝負はするな。

いや、するなとは言わんが……いや、やはりするな」


「どっちですか!」


ガイアスは頭を抱えた。


(……本当に、王都で無事に過ごせるのか……?)


だが同時に、

彼女の横顔を見て、静かに思う。


(……守る。何があっても)




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