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『追放された野生の天才料理人、騎士団の胃袋を掴む 〜天然すぎて団長様の理性は崩壊寸前〜』  作者: にゃん


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第1話:『辺境の騎士団長は、川辺の「野生児」に胃袋を掴まれる』

この物語は、とにかく「食べることが好きで、ちょっと(?)天然な女の子」が、無自覚に周囲のハイスペックな男たちを振り回していくお話です。


「美味しそうな(不思議そうな)料理」と「ちょっぴりドキドキするハプニング」、そして「不器用な男たちの空回り」を楽しんでいただければ幸いです。 リゼットの野生児っぷりに、ぜひ皆さんも胃袋を掴まれてください!

王国の北端、魔物が跋扈ばっこする「断絶の森」に近い川辺。 王国第一騎士団長、ガイアス・ヴァレンティン・フォン・ベルシュタインは、一週間にわたる魔物討伐の帰路についていた。


「団長……もう限界です。腹が減って、鎧が鉛のように重い……」


副官の泣き言に、ガイアスは沈痛な面持ちで頷いた。 補給部隊が魔物に襲われ、彼らは丸二日、味のしない干し肉すら口にしていない。名門公爵家の当主であるガイアスですら、今は泥水のようなスープでもいいから口にしたい心境だった。


その時だ。


「……ッ!? 全員、構えろ!」


ガイアスの鋭い声に、疲弊していた騎士たちが一斉に剣を抜く。 前方、川の激流の中で、巨大な水飛沫が上がった。 体長2メートルはある獰猛な魔魚、シルバー・パイクが跳ねる。その背中に、**「何か」**がしがみついていた。


「りゃああああああっ!!」


気合の入った叫び声とともに、魔魚が川岸へ放り投げられる。 バシャリ、と水を滴らせて上がってきたのは——怪物ではなく、一人の娘だった。


露出の多い、見たこともない形状の「服」を身に纏っている。 濡れた布地が、彼女の豊かな曲線を露骨に強調していた。


「あー、重い。やっぱりこの胸、潜る時に邪魔よね……」


娘はそうぼやくと、あろうことか騎士たちの前で、自分の胸をわしづかみにしてグイッと位置を直した。


「なっ………………っ!!???」


ガイアスの顔が、一瞬で沸騰したように赤くなった。 名門貴族として育てられ、淑やかな令嬢しか見てこなかった彼にとって、それはあまりに衝撃的な光景だった。


「き、貴殿……! 何という破廉恥な真似を……! というか、その格好は何だ! まるで裸ではないか!?」


ガイアスが声を荒らげると、娘——リゼットは不思議そうに首を傾げた。


「え? これ? 泳ぐための服(水着)ですけど。下着で水に入ったら重くなるじゃないですか。団長さん、頭固いですよ?」


「あ、頭が固いだと……!?」


公爵である自分に向かって、これほど不遜に、かつ無防備に接する女は初めてだった。 ガイアスが動揺のあまり剣を鞘に収めることも忘れていると、リゼットは鼻をクンクンと鳴らした。


「……あー、なんだ。おじさんたち、お腹空いてるんでしょ? ちょうどいいわ。このお魚、一人じゃ食べきれないから、分けてあげる。その代わり、火を熾してくれない?」


「おじ……っ」


ガイアスは二十代後半だ。老け込んでいるつもりはない。 しかし、彼女の屈託のない笑顔と、川から引き揚げられたばかりの新鮮な獲物(魔魚)を前にして、騎士たちの胃袋はすでに降伏を宣言していた。

リゼットは手際が良かった。 腰に下げた無骨なナイフを抜くやいなや、2メートル近い魔魚をあっという間に三枚に下ろしていく。


「団長……本当に食べるのですか? 相手は正体不明の女ですよ」 副官が耳打ちするが、その鼻はすでにリゼットがパチパチと燃え始めた焚き火に放り込んだ、不思議な香りにピクリと反応していた。


「……毒味は私が行う。お前たちは待機だ」 ガイアスは険しい顔で言い張るが、視線はリゼットの手元に釘付けだった。


彼女はどこから取り出したのか、小さな袋から数種類の乾燥した葉と、粗い岩塩を取り出した。 さらに、川べりに生えていた野生のネギのような草をむしり取り、魚の身の間にねじ込んでいく。


「はい、お待たせ! 『シルバー・パイクの野草蒸し焼き・秘伝の香草仕立て』よ!」


リゼットが大きな葉っぱに包んで差し出したのは、黄金色に焼けた魚の身だった。 立ち昇る湯気には、野性味溢れる香草の爽やかな香りと、脂の乗った魚の香ばしさが混じり合い、騎士たちの理性を粉々に砕いた。


ガイアスが意を決し、一口運ぶ。


「…………っ!?」


衝撃が走った。 淡白だと思っていた魔魚の身は、ハーブの香りで臭みが消え、噛むたびにじゅわりと甘い脂が溢れ出す。ネギのシャキシャキとした食感と適度な塩気が、空腹の身体に染み渡っていく。


「う、うまい……。宮廷料理のような繊細さはないが、力が……力が湧いてくるようだ……!」 「団長、自分も我慢できません!」 「おい、こっちもくれ!」


一人、また一人と、屈強な騎士たちがリゼットの料理に群がっていく。 「美味しいでしょ? 骨の周りが一番味が濃いのよ、そこも食べて!」 明るく笑いながら、次々と料理を配るリゼット。


さっきまで「破廉恥だ」「不審者だ」と騒いでいた男たちが、今や子犬のような目で彼女を見つめている。


「……リゼットと言ったな」 ガイアスは、指先についた脂を拭うのも忘れ、真剣な眼差しで彼女を見た。


「はい?」 「お前のような腕を持つ者が、なぜこのような辺境で一人でいる。王都の高級店でも引く手あまただろう」


「あー、それがね。レシピを無視して勝手な材料入れるなって、追い出されちゃったのよ。失礼しちゃうわよね、美味しいのが一番なのに」


リゼットはケラケラと笑いながら、濡れた「水着」の肩紐を無造作に指で弾いた。 そのたびに、豊満な胸元が揺れ、ガイアスの視線は泳ぎまくる。


(これほど無防備な女を、放っておけるはずがない。……いや、これはあくまで『貴重な人材の確保』だ。そう、料理番として保護せねばならん!)


「決めたぞ、リゼット。お前を我ら第一騎士団の専属料理番として雇用する」 「えっ、給料出るの?」 「当然だ。ベルシュタイン公爵の名にかけて、不自由はさせん。……ただし!」


ガイアスは、自分のマントを彼女の肩にバサリと掛け、前をきつく結んだ。


「砦に着くまでは、その……その格好を他人に見せるな! いいな、これは軍令だ!」


「えー、暑いのに」


不満げなリゼットと、耳まで赤くして目を逸らすガイアス。


その様子を横目に、魚を頬張っていた騎士の一人がにっこりと笑った。


「なあ、団長……。あのお嬢さん、俺たちの女神様になりそうですね?」


第1話を読んでいただきありがとうございます! 川から巨大な魚を担いで上がってくるヒロイン……。ガイアス団長の受難はここから始まります(笑)。

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