表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/49

◆ ジェシカの軌跡4 刺し餌




 仮の屋敷は登録済み。

 商会用の店舗も用意済み。

 (イスカ)ベネフィカ(ラザフォード)の北区で登録した戸籍は東区へ移動させた。

 東区に新たに出店する店舗の責任者としての登録も済ませた。

 表向き、孫娘の私は只の金魚のフン…と言う事になっている。当然、顔見せ時には変装をする。

 私の通っている学校の学友?共がこんな荒れ果てた東区で彷徨(うろつ)くとは思えないけどね。念には念。


 因みに、架空の父母は帝国に用意した支店に出向中となっている。勿論、書類上だけのこと。

 私の上司であるエレノア司教は帝国の高位貴族出身であり、帝国の(トップ)である王帝陛下(くまおとこ)とも懇意。帝国国内であれば、架空支店の登記も架空戸籍も簡単。

 余程高位の立場に居る者が調べない限り、私の戸籍偽装がバレる事は無い。それに、下手に調べると登記を手伝った枢機卿(イリアス)爺さんを敵に回すことになる。

 藪を突いたら蛇…どころか多頭蛇の魔獣(ヒュドラ)が出てきた!…なんて事になる。怖や怖や…


 問題は、過去の事件のせいで、東区の主要な教会の多くが未だ活動していない事。

 教会は戸籍・法人登記・契約仲介及び、それらの管理・保管を請け負っている。それらのネットワークがズタズタ。更新の並列化が滞っている。

 お陰で、ウチの商会の告示・通達に手間と時間とお金が掛かる……

 そこで救世主登場。オマリー司教補佐(私のとうちゃん)が協力してくれた。


 エレノア様が、これから頻繁に東区の各教会を巡る事になっている。

 本来の目的は、東区の復興に伴い新たに選定される枢機卿、その一候補としての挨拶回り。つまり地固め。

 支援宜しくね〜…という、大人の遣り取り(わいろの受け渡し)

 他に候補者も居ないし、既にほぼ内定状態。とどのつまり、単なるお披露目と運営支援金(そでのした)。現地視察を兼ねての。

 今後、この地区の枢機卿に成る事を考えると、多少の金銭(優しさ)は心の潤滑油なのだとか。清貧だけでは空腹は満たせないからね。当たり前。

 

 その場に、私の父ちゃんも『従士』として随伴する。

 その際、私達関連(ルブラム家)の登記書類を各教会へと届けてくれるそう。


 枢機卿(予定)の従士が届ければ、最優先に登録される筈。

 元々、北方教会区の統括教会で、エレノア様の補佐をしていた事は知られている。なので、同行してても不思議ではないし、書類関連の仕事をしてても違和感は無い。

 エレノア様(彼女)も、オマリー司教補佐(とうちゃん)の『英雄』という肩書を存分に利用するつもりらしいので、この機会に私も便乗させて貰うことにした。


 「『英雄』を従える新進気鋭の()()枢機卿!

 荒廃した東区に舞い降りた救いの女神!

 どう?格好良いでしょ?」

 美人を強調するように!と、エレノア様がほざいていた。

 寝言は寝て言え、行き遅れ…と呟いたら殴られた。

 …直ぐ手が出る。あんな姿(なり)して、実は暴力女なのよ?


 帝国との極太いパイプを持つ彼女が、帝国と向き合う東区を治める事になる。

 それは話題になると同時に、一部の人達には危惧されていた。


 「東区が帝国の支配下に入ると、帝国から中央区まで一直線になる!中央が簡単に攻め落とされるぞ!」…とか何とか。

 聖教国(このくに)の従同盟国である帝国を危険視している人達も、未だ一定数居るのだから、しょうがない。

 是迄も、度々嫌がらせがあった…。


 今回、その緩衝材として選ばれたのが、正教国内で暴れていた凶悪な魔獣を退治(?)した『英雄』であるオマリー(とうちゃん)

 教皇猊下直々に評され、正教国内でも評判の高いオマリー(とうちゃん)が矢面に立てば、反帝国派の連中も声を上げ難い。


 「女神の様な美貌で民衆を照らし、熊の様な英雄が反対派(かれら)と私の橋渡しをする……なにこれ?完璧じゃないの!」

 執務室で高らかに笑ってたなぁ…


 笑うとシワが出来るよ?年齢(とし)考えなー…と呟いたら、いきなり座ってた椅子を蹴られた。椅子が粉々になってたよ…。

 もし躱さなかったら、私の脚が千切れてたじゃないの。やっぱり暴力女(ゴリラ)だったね。

 あれが枢機卿になるなんて、正教国(このくに)未来(さき)が思いやられるわ。



 商店の登録作業と並行して、宣伝広告もばら撒いた。

 扱う品は、東隣の帝国から仕入れた裁縫用魔導具に、西隣の王国から輸入した魔蠱蚕糸(まこさんし)。それを紡いだ銀水生糸や赫灼反。

 装飾用の銀細工や宝石等も一通り。

 平民向けには、手に取りやすい綿花製品。少々値の張る羊毛物も取り揃え。

 糸、布、反物…全方位射撃!抜かり無し!流行り(モード)を創って流れを造る!衣料品は金になる!

 特に、高級反物を使った受注生産品(オーダーメイドドレス)は最安でも金貨が飛び交う。


 私の商会の目的は稼ぐ事ではないけれど、稼げるに越したことはない。お金は大事。

 …キベレ侯爵への残債(ツケ)も早めに精算しないといけないしね。

 なので商売も本気。

 ベネフィカの部下で、手の空いている連中を動員して使い倒す。

 …そうだ。魔導具の貸与業も始めよう!


 裁縫用魔導具の各種基礎部品の性能は正教国の方が上だが、それを組み合わせて出来た製品の質では帝国の方が上。

 無駄な装飾を省き、魔石の省力化を実現し、操作動線を考慮した造り…つまり、とても使い易くて性能が良く、人気がある。しかも帝国の官品。

 一番ハードな現場で使用される一番信頼の置ける製品。

 帝国で知り合った暗部や軍部の連中から横流しして貰った逸品。…帝国の第一王子(軍のトップ)経由なので違法ではないわよ。王室への『貸し』は利用してこそ。


 ふふふ…。思わず笑みが溢れる。

 今現在、この正教国内で、私よりも良い商品を扱える商会なんて無いでしょうね。

 ベネフィカ(奴隷)の持つフリン商会の情報網と、エレノア様(性悪女)の持つ帝国との伝手(コネ)

 そして、英雄オマリー(とうちゃん)の持つ影響力を間接的に利用した教会への威圧。

 これで勝てない勝負は無い!!


 …おっと、商売はあくまでオマケだった。

 本業を忘れない様に気を付けないとね…。


 さて…、大きな商会(さかな)がアンタ達の狙っている漁場を荒らしてるわよ?

 三大組織(あんた達)何処(だれ)も粉をかけてない、まっさらで純真無垢な新興商会(オトメ)が目の前で踊ってるわよ?


 最初に襲って(告白して)くるのは、何処かしら?

 蜘蛛(キビシュ)煤被り(エグダス)霧の隠者(ベスペルト)

 商会(みせ)は人目につくわよね?来るなら屋敷の方かしら?


 心が震える手札で魅せて?

 あなたの告白、待ってます。

 『赤髪の悪魔』より…愛を込めて。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ