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三題噺もどき3

面倒面倒

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくななじゅうさん。

 


 喉が渇いたのでリビングに降りてきた。


 今日も今日とて自室にこもりっきりをしていた。

 特に何をするでもなく、だらだらと携帯をいじってみたり。

 パソコンで調べ物をしてみたり、そんな振りをしてみたり。

「……」

 何もしないままでいても、喉は乾くし腹は減る。

 なんとも、人間の体というのは厄介何だなぁ。

 寒いし。頭も痛いし。肩にかけたブランケットは落ちてくるし。

「……」

 イルカ柄のこれももうそろそろ潮時かな……車にでものせておこうかな。もう一枚あるにはあるし。もっと厚手のもこもこしたやつが。それはヒツジ柄。ボタンで留められるタイプで肩掛けには持って来いなもの。ちょっとしたポンチョみたいになるやつ。結構気に入っている。

「……」

 誰も居ないリビングでは、時計の針の音だけが響いている。

 それなりに大きな音で、しっかりと聞こえる音で。

 この点デジタル時計は静かでいいよな。アナログの針が動く音は、何かが急かされているような気がしていい気はしない。仕事辞めてから特に。

「……」

 そうそういえば。

 その、元仕事先からまた連絡が来ていたのだ。

 来年の初めにある仕事の手伝いに来てくれないかと。

 いい加減私に連絡を取るのを辞めて欲しいのだけど。

「……」

 これは言い訳になるだろうけど。

 こうして定期的に連絡がくるから、次に進みようがないとういうのもあると思う。いつ入るのかも分からない、何時間入るのかも分からない、断ろうにも断れない空気を作ってくる。さっさと、次の仕事先でも見つけてしまえばそれで終わるんだろうけど、それだけで終わりそうにない気もしているから、どうにも踏み出しようがない踏ん切りがつかない。

「……」

 まぁ、あそこは、仕事柄、成人式に関わってくるので、その日に出勤してほしいってことなんだろうけど。別に、他のバイトと同じで短時間でもいいならいいが……なぜか私は当然のようにフルタイムで入れられ、その癖給料はバイトと同じなんだから。誰がそんなものに喜んでYESというと思っているんだろう。

「……」

 まぁ、断るのが面倒でYESというのは私なんだけど。

 なんというか、こんなことも言うのは何だが、それなりに客との接点はまだあるのだ。担当したことだってあるし、それの引継ぎは済ませてあるから別段問題はないんだけど。

 なぜだか知らないが、ありがた迷惑なことに老若男女に好かれ、いろんな人に気に入られる。こんなことなんの得にもなっていないが……。

「……」

 なんだろう、これはまぁ、博愛主義とかいうやつとも違うと思うんだけど。

 個人的なスタンスとして、老いも若きもたいして区別をせずに、男も女も区別をせずに、一個人としてその人に対応するのが当たり前だと思っているのがあって。それがいつの間にかそうなっていて、まぁ自分自身が区別されるのが嫌いなのもあるんだけど。

 そのせい……なのか、まぁいろんな人に好かれる。嫌だけど。

「……」

 これもだって、別に。

 区別するのが、めんどくさいと言うのもあったりするので、高尚なものでもなんでもない。大抵私の行動原理の底のには、めんどくさいが一番にあったりする。何もかもがめんどくさい。あれをするのも面倒、これをするのも面倒、だけどこの方がまだまし。みたいな。大抵そんなもんじゃないのか?

「……」

 けれど、めんどくさがりがめんどくさそうに対応するのは、見ていて見苦しいだろう。だから、そう見えないように取り繕う必要があって。それもそれで面倒だが、その見苦しいがゆえに問題が起こる方が面倒だから取り繕うのだ。誰だって適当に対応されてるなと分かったうえで丁寧に対応しようなんて思わんだろう。丁寧にした方がどちらも心地いいだろうと思うからそうする。……まぁ、たまに変な奴もいるけど。

「……」

 あ―それも面倒なんだよなぁ。

 あのめんどくさい客がいる日じゃないのかこれ……だから私を呼ぶ気なんだったら嫌なんだが。かといって、この時期特に予定もないにはないし。断るにも断る方が面倒というかなんというか。

「……」

 はぁ、まぁ。

 とりあえず水でも飲もう。

「……」

 全くほんとに。

 生きるとはめんどくさい。









 お題:博愛主義・イルカ・水

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― 新着の感想 ―
本当は休みを取りたいけど休むことによって生じるあれこれが面倒なので結局休まない、という経験は私にもありますね。 “面倒”を原動力とする主人公の気だるさがじんわりと伝わってくる作品でした。
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