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異界送り  作者: 秋島保
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『おとぎ話の国』

 彼は行ってしまった。棚橋浩二くんっていったっけ? 本当に彼の『世界』はあったんだ...


どうしよう こまっちゃったなぁ


 子供の頃におじいちゃんの原稿を読んで想い描いた『世界』。その『世界』の中で実際に遊んできたんだよって話したら、みんなそれは私の空想だって言ってバカにした。おじいちゃんも夢だといって私の手の中の原稿用紙を棚の奥へとしまい込んでしまった。


 でもそのあとでおじいちゃんはこっそり私の所へ来ると、あの詩はおじいちゃんが実際にみた『夢の世界』なんだと教えてくれた。幼かった私とおじいちゃんだけの秘密。おじいちゃんは最後に「夕樹は夕樹の世界でちゃんと生きていくんだよ」って言って、優しく頭をなでてくれた。


 だから私はおじいちゃんのいう『夢の世界』に誰にもないしょで、いつもひとりで遊びに行っていた。きっと自分は妄想癖のある子どもで、頭の中に造り上げた御伽噺の国で遊んでるようなネクラな女の子。少しイタい子だけれど、それはそれで楽しかったから私はずっとひとりでも満足してた。


 でも私が夢で見た『夢の世界』は私の空想じゃなくて本当にあたんだね。きっとそこは棚橋くんのやってきた『世界』なんだ。


 おじいちゃんも本当はその事をしってたからあの作品を書いたんだと思う。実際に知らなかったら、あんな素敵な世界かけるわけないもの。


 でもこれでおじいちゃんの書いた()()()は御伽噺でないって証明できちゃった。だって棚橋くんの前にはちゃんと扉が現れて 私の目の前で『あっちの世界』へ行ってしまったのだから...


おじいちゃんは詩集の最後の一遍をこうしめくくっていたよね

夢の先にあるうつつ


こまっちゃったなぁ


 ()()()()()じゃなくて私の世界が御伽噺だったなんて。おじいちゃんの「実際にみた『夢の世界』」っていうのが、棚橋くんの消えたあの扉の向こうにきっとあるんだろうな。


 でもそしたらわたしの世界はこの先どうなるんだろう...誰かがあっちの『世界』でパタンって本を閉じたら、わたしの世界はおわっってしまうの?


ねぇ おじいちゃん...



――― 異界送り 終 ―――






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