見えるものと見えざるもの
そこは少し古びた神社だった‥。
薄っすらと雲のかかる肌寒い秋の日、私は大学生の娘と一緒にそこの地元では有名な神社へと向かった。
半年ぶりに会う娘とのお出かけは嬉しくて、ワクワクしていた。
バスに乗り込み旅行雑誌を取り出し
「ここ、願い事叶うってよ」
と娘に言うと
「じゃあ彼氏欲しいなぁ」
と言うので
「全力で願えばいい事あるわよ」
と他愛もない話をしながら向った。
神社に付きお参りを済ませ帰ろうとしていたとき、ふと道の向かいにあるお社が目に入った。
私は何気なくお参りをしたが
無…
と感じ娘に
「ここ、神さま居ないみたいだからあっちに行こう」
と言い娘の腕を引っ張り元の参道へと戻った。
その参道の向かいにおびただしい数のお地蔵さんが並んでいた。
私はゾクッとするのを感じた。
そんな事とはつゆ知らず娘が
「母さんあっちはお寺さんみたいだから拝んでくる」
と言いズンズン進んでいく。
私は慌てて
「行っちゃだめ!」
と、大きな声を出していた。
娘は振り返り私を見た。
私はそこから一歩も歩けなくなり立ち尽くしていた。
娘は不思議そうに私を見たあと
「行ってくるからね〜」
と言い元気よく歩いていく。
私は娘の後ろ姿を見ながら
無事に帰ってきて
連れて行かないで
その子はまだ、その時ではありません
と呟いていた。
しばらくして娘が青い顔をして戻ってきた。
「お母さん?お母さん?…なんか気持ち悪い」
と言い出すではないか。
するとフッと力が抜け動けるようになった。
私は娘の手を引いて急いでもう一度本宮へと向かう。
はじめとは違いなかなかつかない。
どうしてこんなに遠いのか?
その時、私はちゃんと娘の手を掴んでいるのか?と不安になった。
振り返り娘を見て
「大丈夫よね?」
と声をかけると
不思議そうな顔をして娘が私を見る。
私は何度か確認をしながら進んでいく。
「あ、なんか楽になってきた」
という娘の声。前を見ると最後の一段。
私は、娘の手を必死に掴んだままその一段を上がった。
その時
サー
と木々が揺れ霧雨が降り注ぎあっという間に止んだ。
「浄化されたんだ」
と呟き振り返ると、さっきとは違い頬に赤みのさした娘の顔があった。
「てか、行ったらダメなところは早めに言って」
と娘が言うので私は
「だからダメって叫んだわよ」
と言うと
「何も聞こえなかったよ、母さんボーッと立ってただけだし。
まあ、その後ゾクッとして慌てて引き返したのに、どこにもいなくて探したらすぐ隣りにいるし、本当に驚いたんだから!」
え?
娘の言葉に私は口から心臓が飛び出しそうになった。
いなかった?そんな…
ああ、そうか囚われていたのは私のほうだったのか…
娘と私はもう一度本宮に拝礼しその神社をあとにした。
もし、本宮に戻らなければどうなっていたか…
きっと私は、ここにはいなかったかもしれない。




