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第漆話 「アリドコロ」
俺のマンションの前――そこに『何か』がいる。赤い仮面を被った全身黒もやの奴。
関わってはいけないと思った。でも、なぜか俺は――、
「……こんばんは」
そう言った瞬間、ギロリと無愛想な赤い仮面がこちらを向いた。そして、
ついてきた。俺が歩くのと、同じスピードでついてくる。走っても、同じだ。階段を駆け上っても同じだった。
俺が勢いよく部屋の扉を閉めるも、意味がない。通り抜けて来やがった。
そして――、
それ以降、『そいつ』は四六時中、俺の部屋にいるようになった。