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第伍話 「カガミの視点」
私はいつも目を閉じながら、髪を洗っている。だって、シャンプーが目に入ると、とても痛いんだもん。
そして、今この瞬間も私は髪を洗っている。小さい頃は目を閉じるのが怖かったが、今は――やっぱり怖い。
想像力が豊かな私は、どうしてもいろんなことを考えてしまうのだ。例えば、後ろに怖いおばけがいるとか、誰かに覗かれている、とか。
そんなことを考えているうちに私は髪を洗い終わり、シャワーヘッドに手を伸ばす。手慣れた手つきでシャンプーを洗い流すと――、
「誰だっ!」
そう言いながら私は、勢いよく目を開けて後ろを向いた。当然ながら、誰もいない。――私が安心するために、考えついたいつもの日課だ。
そして、体を洗うために私は前を向くと――、鏡に人の顔をした恐ろしい化け物が映っていた。