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第肆話 「ナラズモノ」
「田中! お前、蹴りすぎだよ! 道路にいっちまったじゃねぇか!」
「いや、オレそんな強く蹴ってないって」
「いいから拾ってこいよ。お前がやったんだからさ」
「――っ。わかったよ」
そう公園に言葉を吐き捨て、オレはサッカーボールを取りに行くために走った。すると――、
「おっ、運いいじゃん」
サッカーボールが風で、歩道に戻ってきている。
――今のうちだっ!
そう思い、オレはサッカーボールを手に取って――、
「――えっ」
サッカーボールから手が離れない。いくら手を振り回しても、サッカーボールが手にくっ付いて離れなかった。
刹那、いきなりサッカーボールが道路のほうに向かっていき、抵抗もできないまま体が強い力で引っ張られる。
そして――、
「あっ」
サッカーボールの軽い音が、空気中に響き渡った。