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第弐拾壱話 「徘徊者」
「――よし、帰るか」
俺はそう言い、踵を返した。何せ、今は深夜一時だ。暗いし、寒い。このまま外に出ていても、何一ついいことはないだろう。そう思い――、
「ん、なんだ?」
後ろから、何かが聞こえる。一体、これは――悲鳴だ。人の甲高い悲鳴だ。それを理解した瞬間、俺の感情が恐怖一色に染まる。
なぜ、どうして、なんで。――そんな言葉が脳裏を駆け回る。そして、その間にも躊躇なくその悲鳴は近づいてくる。――否、その悲鳴の『主』が近づいてくるのだ。
逃げようと思った。だが、足が生まれたての小鹿のようにプルプル震えて、動かない。そして――、
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!」
上半身がない人の形をしたモノが、俺の前を素早く横切っていった……。