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第拾陸話 「容認」
「ああ、一人暮らしってこんなにいいもんだったんだなぁ」
親に将来についてとやかく言われることもないし、好きなものを好きなだけ買えて非常に満足している。さらに、今日は金曜日の夜。つまり、
「休みだぁ!」
休み。そう休みなのだ。その事実があるだけで、自然と笑みが溢れてくる。最高!
そんな気持ちでオレは布団から立ち上がり、トイレに向かった。そして、トイレに入ろうとドアノブを――、
「あれ? 開かない……?」
試しに扉をノックしてみると、コンコンと返事が返ってきた。家族の誰かしらが入っているのだろう。
「出たら教えろよな」
そう扉の向こうの相手に言って、オレは寝室へ――、
「え? あっ……お、れはっ」
なにか、何かいま、言ってはいけないことを言ってしまったような気がする。否、オレは取り返しのつかないことを言ってしまったのだ。だって、ここには――このマンションの一室にはオレしかいないはずなのだから。
そう背筋に悪寒が走った瞬間、後ろから扉が軋む音がした。