るるるるるるる 「るるるるるるる」
「行ってくるね」
「るるるるるるる」
意味不明な母さんの言葉を聞いて、僕は思わず吐きそうになった。駆け足で家を出る。後ろから聞こえる「るるるるるるる!」という声を無視して。
§
「るるるるるるる」
「るるるるるるる」
「るるるるるるる」
「るるるるるるる」
一時間目の授業中。
そんな先生と友達の声を聞き続けて、僕はもう限界だった。
「先生! 体調が悪いので、保健室に行ってきてもいいですかっ」
瞬間、教室中が静寂に包まれた。
みんな、僕の方を黙って見ている。
頭が、頭がおかしくなりそうだった。
「ああああああああああああああ――ッ!!」
発狂しながら、僕は教室を出た。
――なんで、なんで、なんで。
そんな言葉が僕の脳内で繰り返される。
母親と喧嘩をするなんていつものことだったはずだ。なのに、なんで昨日だけ――あの気味の悪い日本人形が現れるんだ。
あいつの『オキマリ、オキマリ、オキマリィィ!!』という声が今でも耳にこびりついて離れない。あの瞬間から、声を聞いた時から、世界がおかしくなったんだ。
「ああああああああああああああああああ!!」
僕は叫んだ。
――本当はわかっている。
おかしくなったのは世界じゃない。
おかしくなったのは、僕の方だ。